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 車から出てエントランスを通り、エレベーターで15階まで上がる。カードキーで部屋のロックを解除して、真っ暗な玄関の壁から手探りで電気のスイッチを入れると、そのまま靴をぽいぽいっと脱いでスーツも脱ぎ捨ててシャツのままソファに勢い良く座ると、はぁーっと今日一番のため息が出た。ネクタイを緩めて眼鏡を外す。伊達なので視野の差異はない。  何分かそのままの姿勢で黄昏た後、風呂を沸かして入る。湯船に浸かると、体中の緊張と疲労がお湯に溶け出ているような気がした。 「つかれた…」  ぽつりと溢れた弱音が風呂内に反響する。  疲れた、疲れたなあ。身体的には前職の方がしんどかったけど、今は精神面がきつすぎる。  嶺二のために働くのは幸せだ。嶺二のことを一番に考えて、彼が望む仕事を手に入れるためならなんでも出来る。ほんとうになんでも。けれど。 「これだけはほんとに無意味なんだよ〜…」  彼に不満があるとすれば、そのお遊びの奔放さだけであるが、それが全てと言ってもいいほど負担が大きすぎる。  今日何度目か分からないため息をつくと、ぽかぽかと温まった身体を湯船から出す。  バスチェアに座り壁にもたれると、緩く足を開く。その状態で右腕を壁に掛けられた収納ラックに並べられたシャンプーやリンスと共に並んだ透明のボトルに伸ばし、ボトルに圧をくわえる。どろり、と粘度の高いローションを指が浸るくらいに出すと、それを手に馴染ませるように開いたり閉じたりしながらボトルを元の位置に戻した。ローションまみれの中指を、双丘の間にあるきゅっ、と閉じた蕾に塗りつける。そのまま指に力を入れて、閉じた蕾に押し入れると、異物感で息が詰まる。 「…ぅ、」  思わず声がもれる。

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