6 / 36

_

 第二関節まで中に埋めた所で、ふぅっ、と息を吐く。左手で萎えた自分のものを握ってゆるゆると上下に擦ると、徐々に熱と硬さを増しながらそれが反り立つ。 「…っ」  快感を得た身体の、力が抜ける瞬間を狙って穴に埋めた指を動かす。ぐちぐちと音が響いて恥ずかしい。目を閉じて2本目の指を入れる。  遼は自慰で感じたことがない。勿論、本来の男性器での自慰では快感を得られる。つまり、正しくは"後ろを使った自慰では感じたことがない。"だ。 「うぅ〜〜…きもちわるぃ…」  今感じているのは異物感と気持ち悪さ。それならばなぜ、わざわざ快楽の得られない自慰に勤しんでいるかと言うと、これもまた嶺二のためである。  これまでの経験から、明日か明後日の夜には取引の時間が設けられるはずだ。  取引という名の売春行為。  通常の売春行為と違うところは、遼の身体の対価が、嶺二のアイドル人生に不利益になるものの排除であるところだろう。先程の電話で迅さんは"対等な取り引き"と言ったが、遼はそれは違うと思っている。記事をひとつ揉み消すのにどれだけの金が必要か、その額を用意するのがどれだけ大変かを遼は身をもってしっているからだ。  自分の身体にそれほどまで価値があるとは思わない。 それでも、遼が一夜抱かれるだけで不都合なものを全て消してくれると言うのだから乗らない手はないのだ。嶺二のためなら、男に抱かれることも厭わない。 「これくらいでいいかな……」  ぱくぱくと開いたり閉じたりするまでに緩んだのを確認して、苦痛の時間を終える。抱かれる前に自分で解しておこうと決めたのは、初めて嶺二の為に身体を開いた日。あの痛さを回避できるのなら、この気持ち悪さだってどうってことない。

ともだちにシェアしよう!