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彼らにそれぞれアドバイスや実践で手本を見せてやると、幼い大きな瞳がキラキラと光を宿す。
「嶺二、人としては最低だけどやっぱり天才だ!」
「やりちんだけどかっけえ!」
「前半余計だな」
「嶺二!曲流すからおどれ!」
「それ、人にもの頼む態度か…?」
「え!嶺二踊ってくれるの!これ!この曲がいい!」
「おれはこれ!これどう!?」
「おれこれがいーなー」
途切れることのない声変わり前の幼さを含む言葉が好き放題に散らばる。
「あー、フリースタイルはもうやらねえって」
胸が少し、ほんの少しだけもや、と水を含ませた筆で墨に触れたような滲みを帯びて痛みを訴えた。
「え!なんで!」
「前も見せてくんなかったじゃん!」
なんでだよー、やってくれよーと眉を八の字にした彼らに服を捕まれ上目遣いで強請られ、本心でない脆い決意は直ぐにぐずぐずになる。
「え〜〜だってそう決めたし〜…」
「嶺二が決めたつって続いたとこおれ見た事ない」
「女に刺されて腹に包丁掠ったとき女とはもうヤらねえって言ってたよ」
「3日後に女と歩いてるのおれ見た!」
なんてことだ。己の意思の弱さを恨む。
「俺だってやりたくねー訳じゃないんだけどさあ」
腕を揺すられて、ぶーぶーと非難轟々の彼らの顔に折れる。
「1回くらいいいじゃん!」
「とりあえず1回だけ!今だけ!」
「え〜今だけ?」
「しっ!いいんだよ、一回やったらどうせすぐきめたのやーめた!て言うもん!」
本人を目の前にした失礼な作戦会議にも突っ込む余裕が無いほど心が沸き立つ。
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