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「嶺二、もう少しで着くよー…嶺二?」 「んん…?」 「おはよう…?朝早いから仕方ないよね…大丈夫?」  焦点の合わないぼんやりとした視界とはっきりしない頭が現状の把握のためにフル稼働する。 「なんか、夢、みてた」 「夢?」  寝起き特有の掠れた声でゆったりと話す嶺二の言葉に、遼が怪訝な顔をしたのがバックミラー越しに見えた。 「そう…はるが俺の肩鷲掴みにして、一等星にする!とか叫んでたやつ」 「うわ、ちょっと!思い出させないで!恥ずかしい…」 「ふ、懐かしいな〜」  あれがきっと、嶺二の人生最大の分岐点だった。  ハンドルを両手で握って、前のめりになり赤面した遼の華奢な肩や細く繊細な身体のラインが映えたシャドーストライプのスーツ姿を見て、あの時の力はどこから出たのかと不思議に思う。それほどまでに強い力で嶺二の運命を光へと導いてくれた遼に、嶺二は感謝してもしきれない。  ただ、その全てを伝える術を持たないのはやはり、嶺二の精神的な部分が未熟であるからだろう。 「分かってると思うけど、ハローモーニングは生放送だから《《絶対に》》不必要なことは発言しないこと!いつも以上に気を付けて」 「オーケーオーケー、俺はいつでも必要なことしか言わない」 「前回朝っぱらからえげつないピー用語ぶち込んだくせに何言ってるんだよ…今回呼んでもらえただけで泣いて喜ぶレベルだよ」 「でも御手洗のオッサンが助けてくれたしなんもなかったじゃん」 「御手洗《《さん》》!大御所をオッサン呼ばわりしないで…」  嶺二がひらりひらりと遼の警告を躱すので、遼はだんだん涙目になってきた。…ちょっとやりすぎたらしい。 「わかってる、ちゃんとやってくるよ。はるのためにも俺がテッペンとってやる」  バックミラー越しに遼と視線を交わらせてそうフォローすると、遼は微かに目を見開き、瞬間、花が咲いたようにふわりと微笑んだ。  滅多に見られないその笑顔に、嶺二は目をそらす事が出来なかった。

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