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実は、俺はハル自身についてほとんど知らない。
ハルに声を掛けられて入った葛城プロダクションは、あまり表舞台に力が入っているとは思えない所謂弱小事務所だった。 芸能界で活躍するような煌びやかなタレントやアイドルとして名を挙げられるものはおらず、どちらかといえばテレビに出ることが滅多にないグラビアアイドルやAV女優などに力を入れているように感じた。
男なら大抵お世話になったことがある浅田えみこなど、有名AV女優が所属していると知った時は歓喜の声を上げたし、それだけでここに来れてよかったと本気で思ったが、一方で不安も募っていた。
「なー…俺、ホントにダンス続けられんの?」
社長室に挨拶に行くとハルに連れられて、事務所だという雑居ビルのエレベーターに乗っている時、我慢出来なくなってそう聞いた。
「絶対に大丈夫。俺が全てをかけて保証するよ。」
絶対に大丈夫という言葉に、心の底に光が灯り、ぽかぽかとお日様に当たったような温もりを感じた。
『自分勝手すぎんだよ!本番中に勝手に振り変えやがって!』
『お前のせいで台無しだよ!二度と面見せんな!』
今も膿んだままじゅくじゅくと痛む元親友で相棒の|大翔《ひろと》の言葉に裂かれた切り傷に、初めて優しくガーゼを当てられて処置されるみたいな。
今まで抱えたものとはまた違った優しい痛みを感じた。
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