34 / 36

_

 正直、ヤクザとか組のことはイマイチわからない。迅に育てられていた間は|劉永会《りゅうえいかい》のヤクザと関わる機会もあったけど、ドラマや創作世界の中でよくあるような組同士の派手な殺し合いなどは昔の話であって今はない。    1991年に暴対法が施行されてから、年々|ヤクザ《暴力団》に対する取り締まりは厳しくなった。特定危険指定暴力団に指定されると公安委員会により警戒区域が定められる。その警戒区域内では、面会の強要やメールの送信、住居や事務所付近を歩くことさえも禁止になり、これらに違反すると警察は中止命令なしで即座に逮捕できるようになった。  それ以前までのシノギの主だったみかじめ料は軒並み取り締まられるようになり、現在の表立っての仕事はプログラミングやネットを駆使したものや建設業増えているようだ。  もちろん裏では薬物や銃刀法違反に触れるような取引、詐欺や殺しも行っているようだけれど、遼は別に善人ではないため自分が知らないところで自分の知らない人が不幸になっていようがどうだっていい。 「そういえば耳にしたことがありました、目中さんが暴力団と繋がってるって話はほんとなんですね」  さして興味はないが、《《昔の癖》》で話を広げてしまうと、迅はふっ、と笑って遼の頭を撫でた。 「癖って中々抜けんもんやなー」  迅には嘘や詭弁が通用しない。遼がご機嫌取りのために作る笑顔も話も躱され続けて、今はもう迅の前では笑顔を作るのも興味のない会話を続けるのもやめた。

ともだちにシェアしよう!