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第20話
「スランプだったしな、ちょっと腕が鈍ってたし」
「だから写展で自分の写真と伊織さんの名前をみて、この人なんだと今更気付いて自分を責めました」
少しの距離を詰められ、唇に温かいものが触れた。すぐに離れたが唇の熱は下がらない。瞬きも忘れて航をみつめると、頬が薄らと桜色に染まり甘ったるい空気が二人を包み込む。
「伊織さんが好きです」
「莫迦」
「告白するいい雰囲気だったじゃないですか」
「だけど……」
いきなりのことで処理が追いつかず、伊織はでも、だってと繰り返した。
「もしかして具合悪いですか?」
斜めいく回答に照れてるんだよと内心突っ込んでおく。
「だいぶよくなったけど」
「なら、それ以上のことしても大丈夫ですよね」
「それは……んっ」
さっきのキスを上書きするように唇が重ねられ、閉じる間もなく舌が咥内に入ってくる。
ざらついた舌が歯列を右から左へと撫で、上顎を擽った。舌を捕らえられ軽く吸われる。
「んんっ……あ」
体重がかけられソファの上に押し倒された。
見上げると瞳を濡らした航が扇情的をみつめている。このまま食べられそうな迫力に心臓が跳ねた。
首から下げていたカメラを取られ床に置くと、航は着ていたシャツを乱暴に脱ぎ捨てた。
「伊織さんも脱いで」
「うん」
意図を察してシャツに手をかけるが指に力が入らなくてもたつく。そんな伊織を笑いもせず、航が手を貸すと簡単にシャツは剥ぎ取られた。
航が覆い被さってくると熱い体温が肌に触れ合う。どっどと拍動するリズムが二つに重なって、そこからじんわりと甘さが広がってくる。
腰からゆっくりとあがってきた指は、日常生活で意識してなかった突起に触れられる。
かさついた指の腹が存在を確かめるように突起を何度も往復する。
「くすぐったいですか?」
「なんか変な感じ」
「すぐによくなりますよ」
突起を弄りながら航は伊織の首筋に吸いついた。肉ごと吸われ肌がぴりりとした痛みを覚える。
「んあっ!」
突起を爪で引っ掻かれると鼻にかかった声がでた。突起だけで感じてまるで女みたいだ。
恥ずかしさのあまり手の甲を噛むと「だーめ」と航が制する。
「もっと声聞かせて。伊織さんが感じてるところもっとみたい」
「やあっ……あっ!」
「かわいい」
航の吐息が伊織の鼓膜を震わせる。掠れた声がいつもと違って官能的で、伊織の体温を上げていく。
固く尖った突起を指で転がされたり摘んだりを繰り返すと、赤く充溢していった。
それを舐められると背骨がぐっと伸び、上半身が
反った。
「ひっ、ああ……待って」
「伊織さんの方が待てないでしょ」
突起を舌で転がしながら航の手が伊織の下半身に触れる。すでに屹立は固く張り詰めていて、指で弾かれるとびゅっと体液が漏れた。
「あっ、やっ、んん」
「ここもう濡れちゃってるね」
隙間から差し込んだ航の指が伊織の屹立を触れた。自慰しかしてこなかった部分を航の手のひらに包まれると堪らなかった。
恥ずかしくて嫌なのに、もっと暴いて欲しくなって、淫らな自分を知られるのが怖い。
気持ちが制御できず、上に昇ったり下に落ちたりと落ち着かなかった。
下着ごと乱暴に足で脱がされると、天井を仰ぎ亀頭から体液を零している自身をみて涙が勝手に出てきた。
脳が快楽に犯され細胞一つとっても思い通りにならない。
航の長い指が伊織の屹立を包み、ゆっくりと上下に扱いた。
「んんっ……あっ!」
航の手の動きに合わせ腰が揺れる。
同じ男だからツボを心得ていて、弱いポイントを集中的に攻められる。亀頭から絶えず汁が零れ、茂みを濡らし臀部の方へと伝っていった。
「こんなに感じちゃって。ここ気持ちいい?」
「んっ、うん……いい、いいっ」
「じゃあもっとしてあげる」
航は扱くスピードを上げ、伊織を追い詰める。
「あっ、あ……やあ」
視界が白く明滅すると腰がぐんと重くなり、航の手のひらに精を吐き出した。精と一緒に体力を出し切ってしまって力が入らない。
ぼんやりと航の顔を見上げていると、ダイヤモ
ンドみたいな汗が額にびっしりと張り付いていた。
「大丈夫?」
「うん」
「まだ終わりじゃないからね」
精液を受け止めた手が伊織の一番奥に触れる。誰にも、きっと親にすら見せたことない箇所。
身を固くさせ閉じようとすると、航は伊織の両足を開いて肩に乗せた。
「やだっ……この格好」
「でもこれが一番楽だと思いますよ。それとも四つん這いになりますか?」
どちらにしろ尻を晒す格好を強いられるらしい。
一瞬、四つん這いの方にしようかと迷ったが、伊織はこのままの体勢を選んだ。
「このままでいいんですか?」
「その方が航の顔が見れるし」
「あなたは俺を煽るのが上手いですね」
「えっ、ちょ……あっ、あ……」
航の指が伊織の中に入ってきて、爪の先が肉壁をゆっくりと解していく。
肉壁を押し広げていきながら、奥へと侵入してくる。
精液のお陰か航の指の動きは滑らかだ。痛みよりも違和感の方が勝っていたが、時間が経つにつれて中が柔らかくなっていくのがわかった。
「痛い?」
「へーき……んんっ、あ!」
ある一点を指が掠めると腰がぐんと重くなり、力をなくした屹立が再び天を仰いだ。
「あっ、あ……なに」
「伊織さんのイイトコロですよ」
航は指の腹でそこを何度も擦り、二本、三本と指を増やしていった。中を掻き混ぜられると伊織の頭の中も回されているような感覚になった。
快楽という渦に巻き込まれ、航の指に翻弄されている。
「は、あっ……あ、あ」
「挿れるね」
航は指を抜いて屹立を蕾に押し当てた。腰を進めると、入り口付近は柔らかい抵抗をしていたものの、ゆっくりと奥へ誘っていく。
「あっ、あっ……んん」
「痛い?」
首を振ると航は汗で張り付いた伊織の前髪を払った。視界が航でいっぱいになり、頭の中でパシャっとシャッターを切った。
蕩けるような航の表情はきっと撮られたことないだろう。頬を伝う汗も隆起する胸板も、航のすべてが官能的に塗り替えられていく。
伊織しか知らない表情を頭のフォルダに保存した。
「航……好きっ、すき」
「伊織さん!」
律動が始まり伊織の身体は動きに合わせて揺れ動く。肉がぶつかりあう音が響き、航の熱情が伊織の中に入ってくる。
「こっち向いて」
「なに?あっ」
顔を上げると航は床に置いたはずのカメラを構えており、すぐに真っ白な光に包まれ時間が止まる。
航は腰を揺すりながらディスプレイで写真を確認した。
「伊織さん可愛い」
「やだ!それやめっ」
取り返そうと腕を伸ばしても航は軽くあしらい、こちらにディスプレイを向けた。
「ほら、こんな可愛い顔してる」
そこには顔を赤く染め、涙と汗でぐちゃぐちゃになった自分の姿があった。足を大きく広げ、淫猥な結合部分がよくみえる。
「なにしてんだ!」
「伊織さんのかわいい顔を残しておこうと思って」
「やあっ……あっ、あ……」
伊織の抵抗をもろともせず、航は器用にカメラを片手に腰を揺すった。
快楽に溺れている伊織を逃さないようにシャッターを切り続けた。
「やめっ、だめ」
「その顔やばいです。でもちょっと動きにくいな」
伊織の腰を片手で押さえながら、後ろに倒れ航を跨ぐ体位を取らされる。
交合が指の届かない深い箇所まで暴き、びりっとした電流が身体に流れた。
「あっ……ああ」
「これなら撮りやすいです」
不安定な体勢でソファの背もたれに上半身を預けると、突き上げられた腰が最奥を蹂躙した。
「やだっ、あっ、ああ……」
嫌がる伊織を余所に航はシャッターを切り続けている。パシャパシャという音に合わせて腰を揺さぶる。
「変態!」
「俺も自分がこんな奴だとは思いませんでした。だから責任とってください」
律動が速まり、また屹立から体液が溢れてきた。中の雄がぐっと硬度を増し、お互いの限界が近かった。
「イく、やっ、ああ」
「伊織さんっ!」
熱を放出する瞬間も白い光に包まれ、伊織は目を瞑った。
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