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第21話side藍

明らかに体調の悪そうな幼馴染を放っておけず今日は逐一様子を窺いながら過ごしていた (ほんと何も言わねぇんだから) 我慢強いんだか頑固なんだか案の定昼休みにふざけてじゃれ合う同級生が突進してきてパニック状態、トイレでぶっ倒れた所を保健室に連れてきた 「や"め、、っろ、、」 ベッドの上で苦しそうに藻掻くまほろは呼吸も満足に出来ていないようで眉間に皺を寄せて忙しなく寝返りを打っている (お前は何と戦ってんだよ、、) 「ぅ"、、ん"ん」 見守る事しか出来ない自分の無力さをヒシヒシと痛感する 小さく折り畳んだ体で行き場の無い手が自分の手首を白くなる程強く握り締めてブレスレットを鷲掴むように爪を立てる 「大事なもんなんだろ、、、」 血が滲みそうな勢いに仲介に入って目尻の水滴を拭ってやる 今迄もちょくちょく可笑しな怪我をしてくる事はあったがこんな風になる所は初めてみた 最近のまほろを思い返すと何だか更に細くなったように感じる身体に上の空で唯一楽しそうに話してくれるのは夏の思い出 (まっ、本人は自覚ないんだろうけど) 隠しても分かるルンルンと弾んだ楽しそうな口調、まほろが感情的になる事は滅多になくていつも何処かつまんなそうな顔をしているのを知ってる俺は相当楽しかったんだろうなと微笑ましく聞いていた (あーあ、俺の方が長く一緒にいんのにな) 冷たい手を温めるように重ねた指先で手の甲をなぞる (お前変にプライド高いんだよ) 兄弟みたいな関係に上も下も無いがやっぱり不安定なこいつを見てると心配が勝って求めていないと分かっていても余計な世話を焼きたくなる (あっ、そーだ) あいつから貰ったブレスレットを愛おしげな目で大切そうに撫でているのも、こうやって縋り付くのもそれには理由があるからで分かりたくない事実だ 俺はあいつにはなれないしあいつも俺にはなれない適材適所とは正にこの事、それならそーと請け負ったその役目をしっかり果たしてもらおうじゃないかと思いついた悪巧みに俺の口角がクイッと上がるのを感じる (お前の仏頂面崩れるかな) これは俺に心配ばかり掛けさせるまほろへの嫌がらせだ、後で呆けた顔を見て笑ってやるからなと決めた俺は静かに保健室を後にした 〜♪ 「おっはー元気ー?」 数回の呼び出し音ののち静かになった画面に話し掛ける 『おっはーじゃないよ、今授業中なんだけど』 何拍か遅れて帰ってきた素っ気ない返事に乾いた笑いが溢れる 「そんな事言いながら出てくれるんだからエルって実は優しいよねー」 『お前がゴマすりとかきもいからやめて』 冷徹な一刀両断にポケットから取り出した煙草を咥えて火を付ける 「ちょっと良い事思い付いちってさー」 『頼み事?』 「さっすが頭の切れるイケメンは違うねぇ」 ふざけた調子で茶化しても乗ってくる事が無い相手は先を促すように相槌を打つ 「お宅の赤くんに用あるんだけど代わってもらう事ってかのー?」 『は?桜?』 電話口で聞いた事もない素っ頓狂な声を出すものだからどんな顔をしてるのか想像して惜しい事をしたなと思う 『、、、渕咲くんだろ』 「ご名答ー」 『何で、関わらせないとか言ってたじゃん』 向こうでも煙草に火をつけたのかライターを付ける音が聞こえた 「そぉ俺も家の可愛い娘を悪魔に渡すのは気が引けるんだけど状況が状況なもんでしてねー」 『ちょっと何言ってるか分かんないっすね』 煙草の火種が着々と葉を燃やしてフィルターを燃やそうと差し掛かる頃スピーカーから扉を開ける音とザワザワした喧騒が聞こえてきた 『やばっなになに、おーい柊流石に授業中だぞー、桜電話』 コイツまさか授業中の教室に乗り込んだんじゃないだろうなとゾッとするがきっとその予想は正解である 『、、、で誰〜』 暫く続いた静寂も独特に間延びしたハスキーボイスによって打ち砕かれる 「あんたんとこの後輩どんな教育してんだよ」 『頼んだ人が悪かったねぇ極度の面倒くさがりだからこの人〜』 きっと隣に居るのであろう人物に赤が緩い口調で流石に煙草は消してこいよ〜と言っているのが聞こえる 「突然で申し訳ないないんだけど赤くんに頼みたい事あんだ、、」 『むりぃ〜』 最後まで言い切る前に否定されてピキッときたが息を吐いて聞き返す 「なんで?」 『だって何となく察せるしぃ〜何で恵崎がわざわざ俺に連絡してくんの?』 誰か分かってんじゃねーかという気持ちとやけに刺々しい物言いにエルが横から止める声が聞こえてくる 「、、、お前さ、まほろがどーゆー性格か知ってんじゃねーの」 『だから何?恵崎が傍にいれば問題ねぇじゃん、今までだってそうだったんだから』 そう言われてしまう不甲斐なさに拳を強く握り締める 「、、、中途半端に優しくして囲ってだせぇ事してんなよ」 『は?突然授業中に電話してきて何かと思えば喧嘩でもうってんの?』 思わず出た本音にとんでもなく低い苛立った声が返ってきたが俺の口も止まらない 「ひよってねぇなら今すぐ来いよ」 しまった、と思ったが時すでに遅し、返ってこない返事に仕方が無いと諦めモードに入って新しい煙草に火を付けた (やっちったなぁー) 煙を吐き出しながら1人反省会を開く 『、、、、ごめんごめん最近あいつ荒れてんだよ、にしてもあそこまで怒るのは珍しいけど』 数十秒か数分か沈黙を破ってヒートアップした熱も冷める呆気らかんとした口調が飛んでくる 「いやー俺も熱くなっちゃってごめんなー」 『あいつもやってる事ガキだからいいんだよ、それにあの二人は出会ったが最後みたいな所あるし?』 「うわぁー神様仏様エル様だわ、今度デートしよ」 はいはいと軽い返事と共にそー言えばと思い返したように爆弾を投下してくる 『多分桜そっち行ったよ』 「は?まじ?」 『まじ』 時が止まった思考回路は灰が手に落ちてきた事により解消された 「え、やば俺殺される?」 『だいじょぶっしょ』 「そんな軽く、、、俺赤くんの連絡先知らないから一応保健室にいるって送っといてくんね」 『りょーかーい』 通話口の向こうで何だかワクワクと言葉を弾ませるエルに俺は冷や汗をダラダラと流して肩を落とし、一言二言続いた会話の後通話を切ると保健室に舞い戻った 「うぅー、、」 先程よりは楽に呼吸をしているが苦しそうに歪められている表情と上気した顔は額に粒状の汗を沢山かいて熱が上がったままだと示している 「もう少しでくるって、、まほろ」 額に貼った冷却シートを剥がして濡れタオルで汗を拭うと新しい冷えた物に張り替えてあげた (早くお前の元気な顔が見たいよ、、) 撫でるように上がった前髪を梳いて少しでも楽になればいいのにとそればかり願っていた

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