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第25話

冬の澄んだ空と爽やかな陽光 雲一つない晴天に肌を刺す風が吹いて電球を巻き付けた裸の並木が枝を揺らす 「で、何買うの?」 珍しく太陽の下で昼間からショッピングモールを見て回る俺の横には桜がいる 「まぁまぁ〜」 勿体ぶって話さないまま4階に上がった俺らは目的が決まってるらしい桜の後ろを付いて歩く 「電気屋?」 迷わず入っていったのは某家電量販店で向かった先はカメラコーナーだった 「桜カメラでも買うの?」 「違うよ〜これ」 指差した先にあったのは本のように並んだアルバムの背表紙 「アルバム?何で?」 「まほろの撮った写真入れるんだよ〜」 思いもよらなかった考えに驚いて一瞬思考が止まる 「どれがいい〜?」 「いらないよそんなの」 しゃがんで1冊づつ確認する桜が顔を上げて確認を取ってくるがそもそも俺にそんな気はないので折角来て申し訳ないが断る 「じゃぁ〜これにしよ〜」 否定の言葉は届かないのか何を言っても手に持った1冊のアルバムをそのままレジに持って行ってしまった 「お前なぁ」 「折角きたし上から見て回ろ〜」 断固として聞く気が無いのか買ったばかりの袋を揺らしながら軽い足取りでエスカレーターに向かっていく後ろ姿を追い掛ける 「なんかあるかなぁ〜」 服屋から雑貨屋まで桜と見て周るとあのキャラクターは好きかとかこの服のブランドは中々いい感じだとか話は尽きなくて案外楽しいものだ 「あ、これアカだ」 ウッディーなお店の通路に面した場所に置かれたテーブルの上に並んだ雑貨達 その中から目を惹くマグカップを手に取った 「ほんとだ良いね」 横から覗き込んだ桜がニコッと俺を見て言う 深い朱色に黒猫が毛糸で遊んでいる、こんな配色運命を感じずにはいられない (でも俺ん家じゃないし) コップをテーブルに戻してチラッと桜を窺うとその手にはグレーがかった青色のマグカップが持ち上げられていた 「ちょっ」 徐にレジに向かって歩き出した桜に慌てる 「それ、持ってきてまほろ」 俺の手元にあるマグカップを指差して悪戯っ子の表情をするので一度手放したコップをもう一度拾い上げると駆け足でレジへと向かった 「良かったの?コップなんか買って」 「んー寒くなるしやっぱマグカップ欲しいじゃん〜?家コップ少ないし〜」 俺の手元で紙袋がカサカサ音を立てる ちなみに青い方のコップには尻尾を立てて歩く黒猫が印刷されていた 「あ、ちょっとまってて」 エスカレーターを降りて少しした所で何かを思い出したように制止の声が掛る 「うん」 大人しく傍にあった椅子に腰掛けると桜が何処かに駆け出して行ってしまった (トイレか?) 紙袋を大切に膝に乗せて今から使う事を楽しみに笑みが溢れる 暫くして帰ってきた桜とショッピングモールを出た 「う"っ寒ー」 日没の早い冬は既に辺りを薄暗くして風が吹く度その身を縮こませる 「まじこの時期のバイクって地獄だよなぁ〜」 移動手段がそれしかない俺達は数分で到着するにしても風を切って走るこの乗り物は中々の苦行である 「早く車ほし〜」 「俺まだ目の前に盾あるからマシかも」 今までの人生で寒いのが大の苦手でそれに伴って冬も大嫌いだった筈なのに寒いのを理由にお腹に回せる腕がそう悪くない 「うっわ〜ずり〜」 「でも寒いのまじ苦手、俺」 前傾姿勢で身体を抱きしめながら足踏みをして少しでも暖かくならないかと試みていると頭上からフワッと首周りを柔らかいものが包んだ 「へ?」 目を丸めてビックリしていると目の前で驚かせた張本人がケラケラ笑っている 「まほろ俺の服ばっか着てっから首元寒そ〜でさぁ、それあげる〜」 確かにビックシルエットのものばかり選ぶ桜の服は大して身長も変わらないのに撫で肩の俺には肩がずり落ちて首元がよく空いてしまう 「あったかい!ありがと」 申し訳なさよりも寒さを凌げる喜びが勝って柄にもなくテンションが上がってしまった 「はいはいまた風邪引かないようにねぇ、そんじゃ帰りますか〜」 ぽんぽんっと軽く撫でた手が去っていく 両手で深い赤色のマフラーを鼻まで引き上げて新品の香りを肺一杯に吸い込んだ 「それこっちじゃない?」 1ページに6枚入る中々デカくて分厚いアルバムにあーだこーだと言いながら写真を入れていく 「こうやって並べると圧巻だねぇ〜」 楽しそうにアルバムを埋める桜と遊んで欲しくて邪魔するアカ 俺はそれを新しいマグカップに口付けて眺める カシャッ 「は?」 まさかそのカメラが自分に向くとは思っていなかったのでリアクションが遅れる 「可愛い〜これもアルバムに入れよ」 いつの間にか使いかたを熟知した桜が慣れた手つきで写真を確認して笑っている 「後で消す」 「残念っ!もうスマホに転送済みですぅ〜」 そんな事まで出来るようになったのかと空いた口が塞がらない 「おっまえー返せ!そして消せ!今すぐ!」 マグカップをテーブルに置いて飛びかかるとやだね〜と言いながらひょいひょい左右にスマホを移動する 「ミーッミーッ」 遊んでると勘違いしたアカが混ぜて混ぜてと参戦してきて暫く2人と1匹で揉みくちゃなってじゃれていた 「ハァハァ、もういいよ」 「まほたん拗ねないの〜」 上がった呼吸を落ち着けてプイッと顔を背けるとうりうりと人差し指が頬に刺さって桜のご機嫌取りが始まる 「今日何食べたい?」 「、、、オムライス」 フハッと顔をくしゃくしゃにして笑って俺の頭を掻き回すと卵あったかなぁ〜と顎に手を当て考える一挙一動が俺の心を揺さぶって心臓が苦しかった

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