42 / 65

第42話side桜※

俺は今絶望の縁に立たされている 何でかと言われると今目の前で行われようとしている情事をただ見ている事しか出来ないからだ 「ッん、、、」 「可愛い」 ピクピク震える小さな身体をよく知らない男が無遠慮にベタベタと触れていく 「あれ、下着」 「だってすぐ汚したら意味無いかと思って」 まほろのズボンに手を掛けた男はその下に何も身に付けていないと分かると強引に脚を開かせて秘部に手を伸ばした 「ほんとだヌルヌル」 「すぐ突っ込めるでしょ」 何時どこでそんな殺し文句を覚えてきたのか教えて欲しい、こうやって傍にいるようになってからまほろの不安定さを身に染みて分かっていた、つい最近もクラブからお持ち帰りされて その時は未遂で終わったものの変な遊びを覚えるんじゃないかとヒヤヒヤ見守っていた 「まだちょっとだけ触らせて」 男はそう言って服の裾から上半身に手を滑らせる 「いっ、、、」 「フフッ、ビクビクして気持ちいい?」 乳首を乱暴に摘んだのか苦痛に顔を歪めたまほろを見て触れられないと分かっていても少しでも安らぐように頭を撫でる 「立ってきた、これはどう?」 「やめっ、、、」 「可愛い、逃げちゃダメだよ?」 シーツを皺になるまで掴んで上に逃げようと藻掻く薄い身体を両方の親指で乳首を潰すようにして定位置に戻した 「いゃっ、、んぅ、、」 (このおっさん童貞かよ) 引き戻された事により服が擦り上がりペロンと捲れて真っ赤に染まった胸が顕になる 相変わらずまほろは嫌々と首を左右に振っているけれど関係ないとばかりにそこに口付けた 「ヒッ、、ふぁっ、、ん」 散々乱暴に扱われた乳首は緩い刺激に弱いのか甘い声が混ざり出す、その声に耳を塞ぎたくなったが幽霊にそんな機能はついてないので諦めてその顔を観察する (まぁた唇噛んでる) 上気した頬は目元を潤ませ何とも扇情的ではあるが放って置くと血が出るまで噛み締めてしまうので不安になってその唇を擦る (肋骨浮いてる) 反り返った背中に肋骨が浮き出てこんな時でも食の細さがやっぱり気になりそれと同時に自分とまほろの情事を思い出していた (背中熱いのかな) 今じゃ触れない身体に昔触れた熱が蘇るみたいだった、まほろは気持ちいいと背中が熱くなって汗ばむから分かりやすいんだよなと思いながら視線を落とす 「ひあっ、、やだっぁいたい〜」 打って変わって本気で痛い痛いと嫌がり出して何をしているのかと凝視すると白い歯が柔い粒を磨り潰してるようだった 「も、だめ」 下品なリップ音を立てて男が口を離した隙に自分の両手で胸を覆い隠すとチラッと見えた乳首はプックリと赤く腫れ上がっており俺からは痛々しく見えるがその恥じらうようなリアクションにも気を良くしたみたいで更なる注文をする 「ね、まほろくん咥えてくれる?」 何を言い出すんだこのじじぃは、と言ってやりたいが声が届く筈もないので大人しく冷めた目で睨み付けるに留まる 「んぐっ、、ん"ぅ」 頭を抱えてガンガンと喉奥に突き刺す動きに もう辞めてくれという声が喉元まで出かかった (セックス覚えたての中学生かよ、、) 明らかな加虐的な性癖に行き場の無い思いだけが募っていく 「はぁ、はぁ、、」 「そろそろ挿れていい?」 イラマチオ終了後には息も絶え絶えのまほろをベッドに転がし脚を広げる 「後ろ、、じゃないとだめ」 「うっわぁそんな言い方されると前からしたくなっちゃうけど初めてだし後ろからするよ」 俺は別に寝盗られ趣味なんかは無いし覗き見する趣味もないが、この子が本当はこういった行為そのものがトラウマになっている事を知っている 「んぅ、、、」 「締まり良いね、もっと遊んでるのかと思った」 俺が大切に大切にしていた宝物はこうしてまた勝手に誰かの手によって傷付けられて新しいトラウマを増やしていくんだ 「それ苦しくない?」 何故持っているのかは分からない俺の上着をまほろが冬の間よく着ているのを知っていた そして今もこうしてベッドの上で俺の上着に縋ってる (ねぇ、、まほろ、俺の事呼んでるの?) 苦しそうで不安定な呼吸はいつ過呼吸を起こしても可笑しくない危うさを含んでいて赤く染った肩が後ろからの振動とは別に震えている 「んっ、、んぁっ、、」 突かれる度に上がる嬌声、俺だったらと考えてしまうのは間違いだろうか 「まほろくん、、かわいい、好き」 今更後悔しても遅いのに君の耳元で愛を囁くのが俺じゃない事に苛立ちを覚えている 「ひっぅ、、ぁっ」 俺はまほろが髪の毛を染めた理由も煙草を変えた理由も聞けないけど、もしそれがまだ俺が傍に居てもいい証拠ならもう無責任な事はしないからもう一度だけ 「まほろっ、、まほろ」 白い背中に落ちるキス、目の前で起きてる事が事実なのに俺はこの期に及んでまださよならが言えない 『好きだよ、眞秀、、』 聞こえない言葉を口に出して濡れているはずのこめかみにキスを落とす 「はぁっ、、はっ、、」 握り締めて白くなった手を透けた手で覆うとまほろが顔上げて口を微かにパクパクと動かした気がした 「はぁ、出そうっ、、イくね」 早くなった腰の動きは欲望を吐き出そうと必死に身体を打ち付ける、ラストスパートと言わんばかりに最奥に擦り付けるような動きをして脱力した身体はそのまま前に倒れ込んだ (こいつ中に出しやがった) 一方的なセックス、最早オナニーと言った方が正しいのかそんなドロドロした他人の欲がまほろを汚していると思うと腸が煮えくり返りそうに熱くなる (オナホみてぇな扱いしやがって生きてたら絶対殺す、てかやり方知らないけど呪う) 馬鹿の一つ覚えのように呪うってこんな感じか?と怨念を送り続けてみるがなんの変化もないのでやっぱり幽霊なんて無意味な存在だ 「まほろくん身体大丈夫?」 「うん、風呂」 上から男が退くとまほろはムクっと起き上がってベッドから這い出ると一瞬ピシッと固まってからヨタヨタと壁伝いに浴室に消えて行った 「ふぅー」 残った男は電子タバコを手取り本体に種をさす (おいおい、ヤッたら満足かよクズが) 明らかに疲れて調子の悪そうなまほろ1人に事後処理をさせてそのいっそ清々する程の男っぷりに実体験を持って分かっていても同性として呆れてしまう 「、、圭介さん寝てるのか」 風呂場から出て来たまほろは何処かアンニュイな雰囲気を身に纏っていて2人には悪いがその姿を見てるのが俺だけな事に優越感を感じた 「もしもし藍?」 付けた煙草の煙を燻らせながらスマホを耳に当て電話を掛けたみたいだ 「あのさー送った場所あるじゃん?今から迎え来れる?」 この雰囲気のまほろを外に出すのは憚られるがこの場に1晩置いておくのも癪に障るので迎えに来るのが藍だと分かっているのならいい判断だと思った 「うん、ありがとう」 短く終わった電話に流石幼馴染セコムだなと関心しながら藍が来るまでの間、部屋の隅で蹲る小さな身体をずっと抱き締めていた

ともだちにシェアしよう!