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第62話※

(やってしまった、、、) もそもそと布団から這い出てサイドテーブルから数枚ティッシュを抜き取る (いや、悪いのは俺じゃないし、手出してこないあっちが悪いんだし) 何度目の反省たるや最早ここで抜くのがスタンダードまであると賢者モードを乗り切ろうとする (ていうかヤるとかヤらないとかはっきりしろよ、悶々としてるこっちが馬鹿みたいじゃん) 悪態をついたって仕方がないのにバイトに行く桜に1人置いていかれた俺はそんな事で気を紛らわすしか出来ない (いつもキス止まり、何で?やっぱり俺じゃ勃たないとか?) 1人じゃ解決しない事も永遠と考えてしまう年頃で近頃の頭の中はこんな性の悩みに埋めつくされていた (あ"ーやばい眠い、、、帰ってくる前に寝落ちしそ、、) 程よい倦怠感が渦巻く身体に耐えきれず目蓋が落ちていく、基本的に起きて帰ってくるのを待ってるにも関わらず今夜はヤケクソとばかりに安心する香りに包まれたベッドで眠りに落ちた 「ただいまぁ〜」 玄関でガタガタと慌ただしい帰宅音とお疲れ気味のハスキーボイスが静かな室内に響く 「あっれ、珍し〜」 パタンッと扉がしまって静かな足音がベッドに近寄ると衣服もそのままに覗き込むようにして頬に手をかける 「寝てる〜かぁわい」 すやすや眠る吐息と布が擦れる音、そこに追加された微かなリップ音は回数を増す度に水音を含ませ上擦った鼻声が聞こえ出す 「んぅ、、?」 「起きた?おはよぉ」 「桜?」 流石の違和感に目を覚ますと啄むようなキスと一緒に馴染みのないフローラルな匂いとアルコールの匂いが鼻についた 「酔っ払い、、んっ」 「ヘヘッ」 「大分飲んだでしょ」 言い訳するように降ってくるキス、お酒に弱い訳ではなく寧ろその逆で飲んでも顔色の変わらない桜がここまで酔っているのも珍しい 「水持ってきてやるから退いてくれない?」 「まほろ冷たぃ」 「重っ、せめて着替えてからっ」 さっきまでヘラヘラ笑っていたのに俺の一言でムスッとして全体重を預けてくる 「やぁだ」 「ちょ、んぅ、ぁ、」 顎を捕えられて普段の優しいキスよりは少し乱暴な口付けに食べられてしまいそうだ 「、、ん?」 布団の隙間から潜り込んだ手が脇腹辺りを撫でた時二人の時間が一瞬止まってお互いの目と目が合う 「1人でシてたぁ?」 驚きに見開いた目が細められてニヤニヤした顔が見下ろしてくる、自分の顔に一気に血液が集まって沸騰しそうになっているのが分かった (やば下履くの忘れて寝てた) クーラーが寒いくらい効いた部屋で温かい羽毛布団という最強の組み合わせにすっきり解放された下半身を放置したまま寝た事を後悔する 「ねぇ〜誰の事オカズにしてたの〜?」 「うるせ、知らん香水引っ付けて帰ってくる奴に言われたくない」 俺が誰を思って1人でしようと物理的に女性との距離が近かった事を示す香りに段々ムカムカしてきて顔をプイッと背けた 「まじか〜、俺そんな臭い?」 「俺には触らな癖に女とはベタベタするんだ」 自分では分からないのか服の匂いをスンスン鼻を鳴らして嗅いでいる、どうしてこうも可愛さの欠片もない嫌味がホイホイ出てしまうのだろう 「まーほっ、こっち向いて」 「いい、もう寝るからやめて」 不貞腐れて布団を頭から被ってもキスの雨は止まなかった 「女としかヤんないのに何で俺と付き合ったの」 「はぁ、、」 布団の中からボソボソとした文句に小さなため息が聞こえてきてついに面倒くさすぎて桜でも呆れたのかと涙がじわっと浮かぶ 「俺これでもまほろの事大切にしてんだよ」 「、、大切になんかしなくていいもん」 「そういう事ばっか言ってるとまじで怒るよ?」 被っていた布団を少し下にずらし耳元にキスするように囁く声にゾワッと背筋を粟立つ 「人から触られるの苦手な癖にぃ」 「そんな事ない」 「あるのぉ」 確かにどれだけ人との接触が増えようと自分から触れる以外はビクついてしまう自覚があるがそれとこれとは別だと思った 「桜なら大丈夫だもん」 「何それ〜これ以上俺の事どうしたいわけ〜この小悪魔め」 「ぅんっ、、」 俺だって桜に触れたいし桜にも俺に触れたいと思って欲しい、離れていた反動のように引き寄せられてくっついて離れなくなればいい 「ひぁっ、、桜っ」 「ん〜?後ろとろっとろ、まほろのえっちぃ」 布団の下で間探っていた手が腰から割れ目をなぞって先程まで1人遊びしていた場所に潜り込む (桜の指がっ、、) 細くて長い指、日常生活で俺の頭を優しく撫でてペンを持ったりコップを持つあの指が自分の体内に入れられていると思うと恥ずかしさと快感でどうにかなりそうだった 「ぅあっ」 「かわい、ここきもちい?」 「そこ、だっ、、やめ、、」 中の固くなった前立腺と呼ばれる場所を巧みに弄ばれ口から甘い声が出てしまう 「好きだよ眞秀、そんなに不安?」 「んっ、、だって」 「今、中キュンってした」 額にキスが落ちてきてコテンッと小首を傾げながら愛の言葉何か吐かれて再び元気を取り戻した下半身がジワッと濡れるのが分かった 「桜ぁ、桜っ、、」 「どしたぁ?」 「んっ、ぁ、挿れてくれないの、、」 「あ"ー、まじでさぁ、、」 1人で存分に弄っていたのだから後ろはそれなりに柔らかくなっていて自分の感情も相まれば流されるままに目の前の男を求めてしまう 「指じゃだめ?」 「ぅッ、、、なんで、なんで挿れてくれないの?俺の事きらぃ?」 そういう雰囲気で恋人同士ならこのまま求め合うのがセオリーな気がするが桜は困ったように顔を顰めて拒絶の言葉を口にした 「泣かないで、まほろ嫌いなわけないでしょ」 「っ、俺が、、面倒くさいからぁ、、?やっぱり、、女の子がいー?」 俗にいう面倒臭い恋人を圧倒的に網羅している自負とやはり男が求めるふわふわした身体とはかけ離れた自身にネガティブな思考回路が一気に沸き起こって涙が溢れた (泣いてたらもっと面倒くさいって思われる) 性欲処理以外に俺に出来ることはあるのだろうか何てどうしても傍に置いてほしい俺は止まらない涙を布団で隠す 「女の子女の子ってさぁ、俺そんなに信用ない?」 「だって、、枕したって、聞いた」 「はぁー?そんなんデタラメに決まってんじゃん」 先程までの慰める声違って冷たい声が降ってくる、こんな問い詰めるような真似お互いの仕事は理解しているのだからしてはいけないと分かっていても確かめるように口をついて出る 「なっ、、に?」 「ね?」 「勃って無い、、やっぱり、、」 「違うってば、前はキスだけで勃ってたでしょ」 バサッと布団が退けられ手を取ると向かった先は桜の下半身で緩めのズボンから触れた場所には何も変化がない 「何か寝すぎたせいか俺の息子が使いものにならなくなっちったんだよねぇ〜」 「は?」 「あ〜、折角身体元に戻ったのにほんと役立たず〜、だから女の子なんて抱けないのぉ、分かったぁ?」 突然のカミングアウトに脳がフリーズする、確かに家に戻ってからしばしば一緒に寝る事も増えたが押し付けてくる彼の下半身が固くなっている事はなかった 「まぁ使えても女なんて抱く気起きないけど、まほろの方が数億倍えっちでかわいいもん〜」 吹っ切れたように畳み掛けてくる弁明を聞けば聞くほど性欲に塗れた自分が恥ずかしくなってくる (これじゃ俺が桜の身体目当てみたいじゃん) この性欲というものに振り回されて十分痛い目にあってきたというのに好きという気持ちはどうしてこうも純粋にそばに居るだけでは満足出来なくなるのだろう

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