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第28話
修学旅行最終日、翠は帰る荷造りをしていた。
「お土産はこの鞄に入れるか。家用とバイト先用、雀用と…あれ、鷹生用…なんか多くないか?」
キーホルダーにマグカップ、お菓子など異様に多く感じた。
しかし全て買った覚えのあるものばかりで翠は動揺する。
しかも翠本人用のお土産にお揃いのキーホルダーがあった。
翠は自分が思っている以上に鷹生の事を考えていたのだ。
(こんなお揃い買ってどうする?アイツは喜ぶかもしれないが…何て言って渡せば良い?!)
「まぁもう買ってしまったんだし、それとなく渡そう。そうだ、そうしよう。」
そう言って翠は荷造りを終えた。
その夜、鷹生は翠にメッセージを送った。
『先輩、まだ起きてますか?』
『起きてる、なんだ?』
『ちょっと寝れなくて…、電話かけてもいいですか?』
『ん、ちょっとならいいぞ。丁度、部屋には誰も居ないからな。』
まさかの返事に動揺する鷹生だが、息を整えて通話ボタンをタップする。
二回ほどのコール音が鳴り響き、電話口の向こうから声が聞こえる。
「もしもし。」
「あ、もしもし!テスト期間以来ですね、こうやって話すの。」
鷹生は嬉しそうに話しかけるが、翠はいたって冷静だった。
「修学旅行どうですか?ご飯とか何食べました?」
「夕飯はすき焼きだったな、写真撮ったから送る。」
ピコンと通知音がなると、一枚の写真が送られてきた。
そこには美味しそうなすき焼きが写っていた。
「わぁ、うまそうっすね!いいなぁ、俺も食べたい…。」
「来年食べれるぞ。」
「そうじゃなくて、先輩と食べたいんです!」
鷹生の一言に翠は動揺し、焦ったように話を変える。
「そ、そういえば、バイトはちゃんと出来たか?僕が居なくても安心して弾けただろ?」
「はい!先輩が見えなくても、俺の事見てくれてるって気がしてちゃんと弾けました!でも、まだ緊張して手が少し震えたりしますけどね。」
「…、そうか。」
少しの沈黙の後、鷹生は話を続けた。
「ここ数日だけでも先輩と会えなくて、俺めっちゃ寂しかったんです。お昼ごはんも、バイト終わりも…。」
「…。」
「だから、メッセージ送ったんですよ!なんか、先輩の声聞いたら安心しました。」
「そうか、なら良かった。」
その後も二人はポツポツと話をしたのだった。
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