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第29話

次の日、土曜日だったこともあり顔馴染みの三人は喫茶店にて顔を会わせた。 「翠~おかえり~。京都どうだった?」 「あぁ、楽しかった。これ雀用、あとマスターにも。」 「お!俺にもか、ありがとな。」 「いえ。ほら、お前の分。」 そう言って翠は袋ごと鷹生に渡す。 鷹生は驚いて聞き返す。 「これ、全部俺用ですか?!」 「か、勘違いするな!お前のご家族には色々とお世話になってるからそれも含めてだ!」 顔を真っ赤にしながら説明する翠の目の前で袋の中を確認する。 中にキラリと光るキーホルダーを見つけた鷹生は取りだし歓喜する。 「おぉ!このキーホルダーめっちゃきれいですね!」 「ま、まぁな。」 「お、もしかしてお揃いで買っちゃった~?」 「んな!」 いつの間にか翠のスマホが雀の手元にありキーホルダーをヒラヒラさせていた。 翠が奪い返すと「ニシシ」と雀は笑っていた。 罰が悪そうにしている翠を鷹生は感動した顔で見ていた。 「先輩…俺とお揃いを買ってくれたんですか?」 「…~~っ!そうだよ!気持ち悪かったら捨てろ!」 「なに言ってるんですか!捨てるわけ無いでしょう!」 鷹生は嬉しそうに自分の携帯に付けた。 それを見て顔を真っ赤にする翠。 その様子をみてほっこりしているマスターと雀。 なんとも異様な光景だ。 夕方になりバイトの時間になった。 今日の鷹生は一段と嬉しそうにピアノを弾く。 バイト終わり公園の東屋で二人でサンドウィッチを食べる。 いつもの日常に戻ったのが嬉しいのか鷹生は終始笑顔を絶やさなかった。 サンドウィッチを食べ終わった鷹生が口を開く。 「やっぱり、先輩がいた方がピアノは楽しいし先輩と食べるサンドは旨いです!」 「そうか?」 「え?!先輩はあんまり変わらないですか…?」 「…さぁ?どうだろうな。」 いたずらに笑う翠を見て鷹生は胸を高鳴らせる。 鷹生は「あぁ、やっぱり自分は翠の事が好きなのだ」と自覚した。 帰り道、スマホにぶら下がったキーホルダーを見つめ、鷹生はなにかを決意したように前を向いた。

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