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第4話

僕が幸の部屋に通うようになってから、幸は随分と心を許してくれるようになった。 初めて幸の部屋に入った時、ゴミだらけだったけどその中に割れた写真立てがあったことに気づいた。 目を凝らしてよく見ると、血がついてあまり見えなかったけど幸と両親が写っていた。 幸をこんな風にした元凶の父親、幸を捨てて自分だけ逃げた母親、なにもしていないのに不幸になってしまった幸。 僕はその写真をみて酷く嬉しくなったのを覚えてる。 あの父親が居たから幸が不幸になった、あの母親が幸を捨てたから幸は不幸になった。 そんな不幸な幸を僕が幸せに出来る。そんな嬉しいことがあるんだ。 幸の両親には感謝しなくちゃ。 「糞みたいな両親でありがとう。」てね。 今日も幸は僕とのキスで気持ち良くなってくれたみたいで、顔をトロンとさせていた。 キスの最中、死んじゃうと思っているのか涙を溜めて必死に僕に抱きつく幸が暴力的に可愛い。 もっとグチャグチャになった幸を見たい。 もっと幸を気持ちいいことにしたい。 もっと可愛く鳴いた幸の声を聞きたい。 もっと、 もっと、、 もっと、、、 でも時間はすぐに過ぎてしまう。 名残惜しいけど今は離れなきゃいけない、今は我満だ。そう考えながら僕がそっと離れると、子犬のようにしょぼんと落ち込んだ幸が僕を見上げていた。 けど、幸は体力がないからこの後すぐに寝るだろう。 ベランダから仕切り板の間を潜って戻る。 僕が通った形跡も残さないように元通りにしておかないと、母さんに勘ぐられてしまう。 自分の部屋に戻ると、丁度母さんが帰ってきたみたいだ。 今日はあまり機嫌は良くないみたいで、「ただいま」と一言だけ言って黙り込んでいる。 「…おかえりなさい、お母さん。」 「あら、秀人ただいま。今日の宿題は終わったかしら?」 今日の母さんは笑顔がない、真顔で僕に話しかけてきた。 母さんの機嫌を損ねないように慎重に言葉を選んで話す。 「もう、全部終わったよ。お母さんも、いつも仕事お疲れさま。」 「いつも偉いわね、秀人は。お母さんの為に良い子で居てくれて、お母さんは嬉しいわ。」 ニコリと笑う母さんの顔を見て背筋が凍った。 「ずっと私の為に良い子でいてね」そう言われているのが嫌でもわかる。 それでも、僕は笑顔を絶やさない。幸の為に、良い子になっていなければ。 「お風呂、入っても良いかな?」 「良いわよ、いってらっしゃい。」 そそくさと着替えを持って脱衣所に向かう。 シャワーを浴びても、僕の身体はまるで冷えきったように震えが止まらなかった。

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