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第6話
玄関の鍵を開けて中に入ってもまだ誰もいない事を確認したら、まっすぐベランダへ向かう。
お母さんのガーデニングの棚をどかして板を外す。
隣のベランダに移ると、石鹸のいい匂いがした。
きっと幸がお風呂に入っているんだろう。
見てみたい。
幸の身体を隅から隅まで知り尽くしたい。
幸の裸、僕だけが見て良い幸の身体。
でも、今はまだその時じゃない。
まだ、幸は完全に僕に心を許した訳じゃない。
まだ開き欠けている途中、言わば、今が一番大事な時期だ。
幸には僕に依存して貰わなきゃいけない。
幸には僕しかいないことを知って貰わないと…。
高鳴る心臓と駆られる衝動をなんとか押さえて幸の今まで居たであろう布団の中に潜り込む。
まだ少しだけ暖かくて、幸の匂いが濃く残っている。
「あぁ~いい匂い…、幸せだなぁ…。」
「お前、…一回耳鼻科いったら?鼻可笑しいんじゃねぇの?」
「そんなこと無いよ。幸の匂いはすっごくいい匂い。」
お風呂から出て髪の毛を拭いている幸は僕を気味悪がるように見てくるけど、その眼差しをくれるのも今だけ。
しっかり堪能しなくちゃ。
それにしても、髪が濡れている幸も可愛いなぁ。
寝癖が直って少しだけ残っている髪のうねりがうなじを色っぽく見せている。
布団から出て両手を広げる。
「幸、僕が乾かしてあげる!」
「はぁ?いいよお前変なことしてきそうだし。」
「例えばどんなこと?」
「それ、は…。」
僕の質問にみるみる顔が赤くなる。
幸は本当に可愛い。
「もう、大丈夫だから。はいっ!こっち座って~。」
「わっ…!」
強引に座らせてタオルで優しく拭いてあげると、シャンプーと幸の匂いが混ざった香りがする。
今すぐ鼻を押し付けて嗅ぎたいけど、それをすると怒られちゃうから、我慢我慢。
ドライヤーは無いからしっかり乾かしてあげると、幸は少し恥ずかしそうに小さい声で言った。
「あ、ありがと…。」
「ん、どういたしまして!じゃあお礼はギューね。ギュー。」
後ろから抱き締めると少しだけ身体を強ばらせるけど、直ぐに緊張が解れる。
耳の後ろに鼻を擦るとくすぐったそうに身じろぐ。
あぁ、かわいい。
このまま押し倒してやりたい。
それでも、今は我慢して僕は宿題をはじめる。
いつも幸の脚の間に入って幸の体温を感じながらする宿題は捗る。
宿題が終わったら、もう既に六時を回ろうとしていた。
今日は動画を見る時間はない。
ランドセルを背負って幸にキスをする。
最近、自分でも上手くなってきていると思う。
幸の唇は最初は直ぐに開いてくれない、だから耳を少しだけ触って緩んだ口の中に下を滑り込ませる。
甘くて美味しい幸の口の中を舌先でたっぷり味わう。
歯、口蓋、舌先、舌の裏。
お互いの涎でトロトロになったら幸はかわいい声をあげる。
「んっ、んふっぁ…む…。」
幸は僕にしがみついてくる。
僕が抱き締め返すと嬉しいのかもっとしがみついてくるのがかわいい。
口を離すと、息が上がって涙目の幸。
あぁかわいい、かわいい、かわいい…。
でも、
「今日はこれでおしまいね、また明日。」
僕がベランダに行くと名残惜しそうに見つめてくる。
僕はニコッと笑顔で手を振って自分の家のベランダに戻った。
お母さんのガーデニングの棚も1ミリもズレの無いように戻す。
僕は自分の部屋に戻って幸ノートに今日の事を書いた。
お母さんが帰ってくるまで、僕は幸との幸せについて考えて過ごしていた。
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