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錬成

 城の中のところどころに、カラカルの兵士が在中している。  アルワーンを見ると、目だけで挨拶する。  城の人間でないアルワーンでさえ、物々しさを感じるのだ。  城の者たちは、視線を落として足早に兵士たちの前を通り過ぎ、各自の持ち場へ移動していた。  城の東側は、関係者以外立ち入り禁止にしてある。  関係者、すなわちアルワーンと、その侍従者のみだ。  入り口には、錬金術で仕掛けもしてある。  その厳重な扉を開けたアルワーンの耳に微かな喘ぎ声と、体のぶつかるリズム音、そして荒い息遣いが聞こえてくる。  部屋へと続く扉を開けると、それは途端に大きくなった。 「……あっ、あっ」  粘りつく濡れた音が、波の音のようにアルワーンの耳をつく。 「やぁ、シラ王子。調子はどうかな?」  アルワーンは、シラの汗ばんだ頬を撫でた。  へばりつく、ウェーブのかかる髪をかき分ける。  汗で濡れたそれは、まるで海藻のように、シラの頬や首筋に張り付いていた。  虚な目は、アルワーンを認識しているかどうかも怪しい。 「こんなに汗をかいて……」 「ああっ」  胸を這ったアルワーンの指が、濡れて尖った乳首をわざと掠める。 「さんざん弄られたのかな?」  ぷくりと立つそれは、真っ赤になっている。 「この短い間に、こんなにイヤラシイ体になって……」  大きく開かれたシラの脚の間にいたのは、やたら体格の良い、大きな男だ。  あのヨタカやオブシディアンにでさえ、体の大きさでは勝っている。  剥き出しのシラの白い脚を抱え、男が腰を大きくグラインドさせる。 「っっ……あっ、ああッ」  シラの性器から、絶頂の証が放たれた。 「いいね。どんどん敏感になる」  放たれた白乳色の液体を見て、アルワーンの瞳が輝く。  粘ついた白いそれが、透明な壁にぶち当たる。  壁に張り付いたまま、それは下へ向け垂れていく。  しかし液は下へは落ちず、まるで逆回転するかのように、垂れた方へと戻っていった。 「……溜まったな。そろそろ一度錬成してみるか。……ウミガラス、抜け」  呼ばれた男は、シラの奥深くに突っ込んでいた自身を抜いた。  血管の浮き出たそれは、抜いてもなお、腹につくほどそり返ったままだ。  体も大きいが、男のそれも、平均的なひとの倍はある。 「ぁ……っ」  シラの中から、ウミガラスの放った白濁の液体が溢れ出た。  アルワーンが作業しやすいよう、ウミガラスが勃ち上がったシラの性器を指で支える。  アルワーンは、その性器に被せていた、透明なガラスのようなものを取った。  よく見なければ、そんなものが被さっているとは気づかないほど、よくできたガラスだ。透明度が高い。  実は高価なもので、特注品だった。これひとつで、家が数軒買えてしまう。 「どれどれ…………。ああ、いい感じだ。錬成しよう」  アルワーンの腰から取り出した瓶には例によって、この世の色とは思えないような、鈍く光る粉が入っている。  それをシラの精液が入ったガラスにかけた。  すぐに煙が上がり、次の瞬間には、ガラスの中にカラカラと、音を立てて丸いものが転がった。 「美しい……。さすがはアル・カワールの王子の精液……と、いったところか」  一見、それは、白真珠(ホワイトパール)のように見えた。  大きさも同じほどで、ガラスの底でカラカラと転がる様子も同じだった。 「このガラスには、錬成術で特殊な加工をしてあるんだ。中に入ったものは、逆さにして振ったところで、絶対に溢れない。まさに君の精液を集めるのに、絶好のフラスコだ」  アルワーンはシラに話しかけたのだが、シラは話を聞けるような状態ではない。 「薬が強すぎたか?快感にしか反応しなくなった……はぁ……。これではつまらない。ウミガラスに出し入れされながら、君がさんざん罵声を浴びせていた頃が、懐かしくなってくるよ」  使った媚薬のせいで、彼の意識は混濁している。  体を弄られ、貫かれる快感にしか反応できない。  同じ量を使ったウミガラスといえば、いつも通り飄々とした顔で、アルワーンの命令をただ待っている。  その、凶器のような性器を、反り立たせたままで。 「さて……。今回の王子の味は、どんなだろう」  ガラスの中身の真珠を、アルワーンは何の躊躇いもなく口に入れた。  口内でしばらく転がした後、彼の喉が上下する。 「味付けをまた、考慮すべきだなこれは……。残念。あまり美味しくなかったよ。君のもの。味は及第点として、これで何の副作用もなければ、イスラ王へ献上しよう」  空になったガラスを、再びシラの性器へ被せる。 「竜の力を抽出するには、精液から取り出すのが一番いい。分かった時は久しぶりに、歓喜で勃ちかけた。まぁ結局……、勃たなかったんだけど」  快楽の限りを尽くしてきた影響で、アルワーンのものが勃たなくなってもう数年に及ぶ。  彼のそこは、腹筋の浮き出たシラの、滑らかな裸体を見ても何も反応せず、ウミガラスの、青筋を浮かべてそそり立つそれを見ても反応しない。  アルワーンの快楽の中枢は、イスラの北の山脈のように動かない。困ったものだ。  こんな後遺症に悩むことになるとは、あの頃は思ってもみなかった。  ガラスを元の位置に被せるとすぐに、ウミガラスがシラに自身を挿入した。  いくらウミガラスが無表情の倒木のようでも、射精したい欲求には抗えなかったと見える。 「アッ……ひっ……や……いや……もうやめ……」  譫言のように繰り返すシラの頬に、ウミガラスが手を伸ばす。  武骨な指の腹が、シラから溢れた涙を拭う。  ウミガラスは身を倒して、シラの唇を吸った。開いたそこに舌を絡ませている。  その様子を見ていたアルワーンは、呆気に取られた。  ウミガラスは元々奴隷だった。  その彼を買い、侍従として側に置いて、だいぶ経つ。  その間ただの一度として、彼のこんな表情を見たことはない。 「……ぅう……んっ、んっ」  重なる唇から、繋がる結合部から、卑猥な水音がアルワーンの聴覚を刺激する。  長時間鳴きっぱなしの、シラの喘ぎ声は掠れていた。  何度目かの精を放った後、彼の意識は飛んでしまった。  力のなくなった肢体に、ウミガラスが眉根を寄せる。 「また出したのか……」  目的は王子の精を集めることにある。  わざわざウミガラスが射精しなくてもいいのだが、王子を気持ちよくさせるために、ウミガラスにも媚薬を使っているためこれも仕方がない。 「これだけ大量にあると、何かに使えそうだな……」  アルワーンが、シラのそこを覗き込む。  長時間入れっぱなしなそこはヒクヒクとし、ウミガラスの精液を中から溢れさせている。  アルワーンの作った媚薬は本土でも評判がよく、その収益だけで、アルワーンが三人いても一生暮らせるほどだ。  効き目が強く、長持ちする。  その媚薬に更に改良を重ね、王子と侍従者に与えた。実験とも言える。  ウミガラスが王子の中から太い棒を引き抜く。  シラの内腿が小さく痙攣する。  中からは大量の、ウミガラスの出したものが、一気に外に溢れた。  様子を見ていたアルワーンは、自身の異変に気づいた。 「……見ろ。ウミガラス。硬くなった」  アルワーンの中心が半勃ちになっていた。 「お前たちのやってるところに、混ざるのもいいかもな」  鼻歌でも歌いそうなアルワーンの声が、ただ場違いに、部屋に響いた。

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