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第5話

 医者達は何とか誤魔化すことができた。  それもこれも全て恭介のおかげである。  恭介が医者達に説明をして、納得させてくれたのだ。  紬は病院を出ると、恭介と一緒にタクシーに乗る。  そして辿り着いた家は一人暮らしをするには広いマンションの一部屋。 「空いてる部屋はどこでも使ってもらって大丈夫だよ。」  恭介はにこやかにそう言うが、紬は少し不安を感じていた。  まだ出会ってそれほど経っていない。  この人のことをよく知らない。  だから自分とお腹の中の子供の命が握られている気がして緊張が解けない。 「あの……何で助けてくれるんですか」 「え、困ってたから……」 「……俺みたいな人がいたら、誰でも助ける……?」 「俺が助けられる範囲なら」  恭介は紬をソファーに座らせると、キッチンから飲み物を持って紬のそばに寄り、チラチラと視線を感じながら口を開ける。 「俺は親になったことは無いけれど、子供と離れ離れになるのは考えられないくらい辛いと思う。もしそんな事が自分に起きたらと思うと……君を助けられずにはいられないだろ。」 「……」 「警戒されるのは仕方ないとは思う。でももしも君が許してくれるなら、少しだけでいいから信用してほしい。君がしっかりと食事をして、眠れるように」  兎に角、紬の体調が良くなって子供が無事に生まれるように、食事と睡眠だけはしっかり取らせたかった。  そんな恭介の気持ちを理解して、紬は差し出された飲み物に手を伸ばしコクコク飲んだ。  恭介はそれを見て安心し、嬉しそうに微笑む。 「好きな食べ物、教えてくれる?」 「あ……なんでも好きです」 「そう? じゃあ今日は俺の好きな物作っていい?」 「ぉ、おねがいします……」 「はーい。じゃあゆっくりしててね。寝転んでもらって大丈夫だから、楽な体勢でね」  ニコニコ笑顔のまま紬のもとを離れる。  紬はというと、『こんなに良くしてもらっていいのか……!?』と混乱しつつも、やはり少し体がしんどくて、ソファーに寝転がらせてもらうことにした。  空調がきいている空間は気持ちいい。  疲れていたようでだんだんと眠たくなってくる。  ふわふわ欠伸をこぼしたあと、ぼんやり宙を眺めているといつの間にか眠りに落ちていた。

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