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第6話
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恭介は料理を作っている途中、紬が暇をしていないか覗きにいった。
するとどうだ、紬はソファーで寝転がりスヤスヤ眠っていて。
その寝顔は少し幼く見える
体調が悪いことと、病院でのことで疲れていたのだろう。
薄手のブランケットを持ってきて体にそっと掛けてあげる。
モゾっと動いた紬はブランケットをキュッと掴むと、夢を見ているのか切なげに眉を寄せる。
そして小さな声で男性の名前を呟いた。
きっと元番の事だろうと思い、胸がツキンと痛む。
もしも。
もしも彼に、元番より先に自分が出会えていたなら、きっとこんな風に辛い思いはさせなかった。
まだ出会ってそれほど時間は経っていない。
けれど恭介は紬が悪い人ではないと確信していた。
こんなにも子供を大切にしている。
それに人の気持ちを考えて行動してくれる。
病院で取り乱した時、紬は自身の状況よりも、声を荒らげたことに対して恭介に謝っていた。
しっかりと周りを見ている人、気遣いのできる人だ。
恭介はそんな紬を悪い人だなんて思えなくて。
紬と元番との間に何があったのかは知らない。
別れた理由を彼は『自分が面倒くさくなったみたい』と言っていた。
もし紬にそんな一面があったとしても、番を解消するのではなくて話し合えばいいだけの事。
恭介はどうして紬が辛い思いをする結果になってしまったんだと、深い溜息を吐く。
「酷い奴のことなんて早く忘れてしまえればいいのにね……」
そう思うけれど、きっと悲しい出来事より、楽しい思い出の方が多いのだろう。
だから彼は今も眠りながら苦しんでいる。
さっさと嫌いになれたらいいのに、幸せだった日々が邪魔をする。
「辛いね」
そっと丸こい頭を撫でる。
紬がまた、元番であろう男性の名前を呼んだ。
それに少し寂しさを感じて、その場から離れキッチンに戻り料理を再開した。
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