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第6話

■  恭介は料理を作っている途中、紬が暇をしていないか覗きにいった。  するとどうだ、紬はソファーで寝転がりスヤスヤ眠っていて。  その寝顔は少し幼く見える  体調が悪いことと、病院でのことで疲れていたのだろう。  薄手のブランケットを持ってきて体にそっと掛けてあげる。  モゾっと動いた紬はブランケットをキュッと掴むと、夢を見ているのか切なげに眉を寄せる。  そして小さな声で男性の名前を呟いた。  きっと元番の事だろうと思い、胸がツキンと痛む。  もしも。  もしも彼に、元番より先に自分が出会えていたなら、きっとこんな風に辛い思いはさせなかった。  まだ出会ってそれほど時間は経っていない。  けれど恭介は紬が悪い人ではないと確信していた。  こんなにも子供を大切にしている。  それに人の気持ちを考えて行動してくれる。  病院で取り乱した時、紬は自身の状況よりも、声を荒らげたことに対して恭介に謝っていた。  しっかりと周りを見ている人、気遣いのできる人だ。  恭介はそんな紬を悪い人だなんて思えなくて。  紬と元番との間に何があったのかは知らない。  別れた理由を彼は『自分が面倒くさくなったみたい』と言っていた。  もし紬にそんな一面があったとしても、番を解消するのではなくて話し合えばいいだけの事。  恭介はどうして紬が辛い思いをする結果になってしまったんだと、深い溜息を吐く。 「酷い奴のことなんて早く忘れてしまえればいいのにね……」  そう思うけれど、きっと悲しい出来事より、楽しい思い出の方が多いのだろう。  だから彼は今も眠りながら苦しんでいる。  さっさと嫌いになれたらいいのに、幸せだった日々が邪魔をする。 「辛いね」  そっと丸こい頭を撫でる。  紬がまた、元番であろう男性の名前を呼んだ。  それに少し寂しさを感じて、その場から離れキッチンに戻り料理を再開した。

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