22 / 36
第22話
「っあ、ダメ……っ!」
「!」
咄嗟に恭介の胸を押し返し、体を丸める。
あの時のことが鮮明に頭に浮かんで、途端に怖くなった。
恭介は驚きつつも、何となく紬が何を思っているのかが分かり、噛まれないと安心できれば少しは落ち着けるのではと、落ちていた掛け布団をそっと被せて抱きしめる。
「大丈夫、大丈夫だよ。噛まないよ。」
「ぁ、ご、ごめんなさい、ごめん……っ」
「ううん。大丈夫だから落ち着いて」
紬が落ち着くまでこうしていよう。
番に解消された過去を持つ人だから、番になること自体がトラウマになってしまうのは仕方がない。
恭介は紬が布団の中から顔を出すようになるまで待っていた。
■
ひょこっと顔を出した紬は、番になることを拒否して恭介が怒っていないかが心配だった。
けれど顔を見て見たら、怒るどころか「大丈夫?」と優しく声を掛けてくれる。
「……ごめんなさい、あの……番を解消された時のこと、思い出しちゃって……」
「いいんだよ。それだけ辛いことだったんだから。俺の方こそごめんね、何も考えずに噛もうとして」
紬は慌てて「ちがう」と言うより先に、手で恭介の口を塞いでいた。
「わ、悪くないから、謝らないで」
「ん」
「つ、番になりたくないんじゃ、なくて、急に思い出して怖くなっちゃっただけ……。」
「……」
「貴方はそんなこと、しないって分かってる。」
手を離して、恭介にすり寄る。
厚い胸板に手を置いて、ドキドキしながら鎖骨辺りにカプっと噛み付いた。
「!」
「もう、大丈夫……」
恭介はギンッとやる気が溢れるのを感じた。
紬はというと、最中に止めてしまったので萎えちゃったかな……と恭介の性器に手を伸ばす。
「え……っ!」
恭介は急に自身の性器に触れられて、恥ずかしさと驚きで顔を赤くするが、それは紬も同じだった。
萎えてしまったのではないかと思っていたそれが、しっかり主張していたので。
「あ、あの……えっと……」
「……もう一回、抱いていい……?」
「……ウン」
恥ずかしくて目は合わせられなかった。
ともだちにシェアしよう!