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第40話 我慢

 いつの間にか寝落ちていた紬は寒さに凍えるようにして目を開けた。  ベッドの中で丸くなり、傍にいる恭介に擦り寄る。  どうやらもう真夜中らしい。  部屋の電気は消えて、彼もスースー眠っていたのだが。  恭介は異変を感じたのか目を開けて、紬が大きく震えているのを見てすぐに体を起こす。 「寒い?暖房つけるね待ってね。」 「ぅ、うぅ~……」 「毛布も持ってくるからね。」  恭介は起きたばかりだというのに俊敏に動いた。  紬はガクガク震えて恭介を待ち、戻ってきた彼に抱きついた。 「ごめんね、もう少しで暖かくなるから」 「っ、お、俺こそ、ごめんね」 「謝ることないよ。大丈夫だからね」  恭介も紬を抱きしめてやり、体を摩ってあげた。  暫くそうしていると紬の震えが止まり、顔を覗きこめば再び眠りに落ちていて、恭介はホッとして息を吐く。  明日はこの調子の紬に子供二人を任せるなんてできないな、と在宅勤務をすることに決めて、恭介も眠った。  朝。  恭介が起きると既に隣に紬は居なくて、慌ててリビングに出るとキッチンから物音がして。  キッチンに顔を出せば紬が朝食を作っていた。 「おはよう。体調はどう?」 「おはよう。大丈夫だよ。ありがとう」  そういう紬の顔はまだ少し曇っているように見える。  恭介はすぐさま紬の額に手を置き、まだ熱いことに気付いて手を止めさせた。 「今日は一日寝てなさい」 「でも、」 「ん?子供達は俺に任せて。頼むから休んで。」 「……」  紬は真剣な顔でそう言う恭介に、これ以上何も言えなくて頷いた。  恭介は満足そうに微笑み、紬を連れて寝室に戻る。 「後でご飯持ってくるからね。」 「……ありがとう」 「寝れそう?眠れるまで隣にいようか?」 「ん、ふふ、子供じゃないよ」  紬はそう言ったのだが、恭介はまだ部屋から出ていくつもりは無いらしい。 「いつも頑張ってくれてるから、体が疲れちゃったんだね。気づくの遅れてごめんね」 「え……そんな、大丈夫だから謝らないで」 「じゃあ、君も。体調が悪い時は一人で頑張らなくていいからね」  そういえば、前にこんな会話をしたなと恭介は思い出して笑った。あの時は立場が全く逆だったのに、と。  フワフワ欠伸をこぼした紬に、恭介は微笑む。 「おやすみ」 「ん……おやすみなさい……」  そうして眠った紬は昼頃になると熱も下がり、夜には全快していた。  子供達に伝染るようなことも無く、その日の夜は全員で食卓を囲んだ。

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