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高校1年 施しか友情か

「寛、また新しい彼女と別れたの?」    理貴の部屋で参考書を選んでいると、スコーンを食べながら理貴が聞いてきた。 「あー、他に好きな人ができたっつって、振られた。」    初めて理貴の家に来て以来、度々、参考書を借りに来る。  今日は期末勉強のために必要な参考書を物色しにきた。  理貴の部屋はどこの図書館よりも充実していて寛太朗はありがたく利用させてもらって いる。 「ええー?お前でも振られるんだ。」 「んー、まあ、付き合うって言っても、学校でちょっとしゃべったりするぐらいで。 俺、放課後は勉強だし、週末はバイトだし。 そういうのは付き合ってるって言わないらしい。」    寛太朗も床に座ってスコーンを手に取る。    今日もたっぷりの白いクリームが乗っている。  添えてあるリンゴのコンフィチュールというやつも手作りらしい。  クリームとコンフィチュールを山盛り乗せて口に入れる。  サクサクとしたスコーンにもったりとしたクリーム、甘酸っぱいリンゴが香る。 「うまいなー、お母さまの手作りお菓子。」 「お母さま、言うのヤメろっ。」  笑いながら理貴がテーブルの下で蹴飛ばしてくる。  理貴の母親が寛太朗のことを気の毒がり、来るたびに何かしら手作りのお菓子を振舞って くれた。 「でも、エッチはしたんだろ?」 「んー、何回か。」 「あんまり?」 「あんまり。」  ふーん、と理貴が鼻を鳴らす。  美己男とセックスした時にはできた射精が、またできなくなった。    途中で萎えるわけではないので、出るまでしつこく責め続けてしまう。  行為の最中、汗がしたたり落ちるほどなのに体はどんどん冷えていってしまうのだ。  他に好きな人ができたと言われて別れたがまあ仕方がないよな、と思う。 「俺があげた服、着てんの?」  理貴が飽きもせずクローゼットをかき回し始めた。 「ああ、たまに。」  美己男の迷彩柄スウェットを着て帰った姿を思い出して笑った。 「今日も持ってけよ。」 「もういいよ、理貴。そんな施してくんなんくて。」 「そんなつもり。」  理貴が思いのほか傷ついた表情で寛太朗を見た。 「え?あ、お前の服、ちょっとでかくて。なんか派手だし。んじゃあ、自分で選んでいい?」 「もちろん。」  寛太朗は立ち上がって理貴の隣でクローゼットを覗き込んだ。  どうせなら美己男に似合いそうなのを選ぼうと色々引っ張り出す。  出しても出してもどんどん奥から溢れてきた。 「お前、どんだけ服持ってんだよ。」    寛太朗は呆れて言った。 「だからさ、もらってくれるとありがたい。」  大きな青い袋を出して渡してくる。 「んじゃ、遠慮なく。」  どれもなんとなく寛太朗の好みではないチャラリとした服が山ほど出て来る。  キラキラしたドクロのタンクトップやら、やたら首元の広い紫色のカットソーやら、 イガイガのついたジャケットやら。 「なんだよ、これ。」    イガイガのついたジャケットを羽織り、あまりの似合わなさに二人で腹を抱えて笑った。 「ちょっとこれは、ないわ。」    美己男には少し似合いそうだな、と思うが手放す。  結局大きな袋いっぱいになるまで詰め込んだ。 「ほんとにいいのか?こんなにもらっちゃって。」 「いいの、いいの。俺も助かる。せっかくだからこれも持って行けば?」    イガイガのジャケットを放って寄こす。  んじゃあ、と言って寛太朗はジャケットを最後に詰め込んだ。 「じゃ、そろそろ帰るな。参考書もいつもありがと。」  ずっしりと重くなった袋を肩にかける。 「おお、いつでも。」 「お母さまによろしく。」 「お母さま、言うな。」  玄関まで送ってくれる理貴に言う。    ドアに手をかけた時 「寛。」 と呼びかけられた。 「ん?」  振り返る。 「施しとかじゃねえから。寛は友達だから、何かしたかっただけ。」  理貴の耳が赤い。 「何、お前、俺の優れた技に思いっきり引っかかってんじゃん。チョロすぎ。」  寛太朗はニヤッと笑ってドアを開けた。 「じゃな、サンキュ。」  ポカンとする理貴を残して外に出ると階段を駆け下りた。 「寛っ!殺すっ!」  ドアが開いて理貴の声が追いかけてきた。  寛太朗は声を出して笑った。 「また明日なー。」 と振り向いて手を挙げた。 「おー。」  理貴も手を挙げ返すのが見えた。    肩の袋を揺すりあげながらアパートに戻る。  アパートの下で 「寛ちゃん。」  と声がした。 「みー?」  美己男が白い息を吐きながら電灯の下に出てきた。  耳も鼻も寒さで赤くなっている。 「なんだよ、待たずに連絡しろって。」  言いながら階段をあがる。 「ううん、さっき来たとこだから。」  手に提げたコンビニ袋を持ち上げた。 「一緒に食べようと思って。」 「何?」    焼き鳥が山ほど入っている。まだほんのり温かい。  来たばかり、というのは嘘ではなさそうだ。 「おー、うまそう、サンキュ。」 「お店のサーバー壊れちゃって。急に今日はバイト休みになっちゃった。」 「へえ、そっか。」     部屋に入ってドサリと服の入った袋をおろした。 「何それ。」 「おー、友達が服くれた。お前に似合いそうなの選んできたから持って帰って。」  ダウンジャケットを脱いで壁にかけながら言う。 「え?俺に?」  美己男が袋をガサガサと漁る。 「すごい、ブランド物ばっかじゃん。いいの?」 「うん、俺はそういうの着ないし。」 「ありがと寛ちゃん。」  美己男が飛びついてきてムニュと唇を押し付けてくる。  寛太朗は笑いながら美己男を受け止め下唇を噛んだ。 「ん。」   舌が絡んでくる。 「おばさんは?」 「多分、10時頃帰ってくる。」  寛太朗はしたくてたまらなくなり、美己男の頭を抱えて舌を吸った。 「しよ、寛ちゃん。」  ベッドにもつれ合うようにして倒れ込んだ。 「舌出して。」  美己男が出した舌を吸いながら丸いピアスを舌先で撫でる。 「んん・・。」  美己男の顔が蕩けてくる。 「エロい顔。」  上から押さえつけてシャツをめくり下腹を撫でる。  美己男の肌がヒクリと動いて身を捩る。  ゴムを指に嵌めて中を探った。  美己男も寛太朗も張りつめ切っている。 「寛ちゃんっ、もういいっ。入れてっ。」  美己男が涙声で懇願する。 「ん。待って。」  ゴムを被せてゆっくりと差し込んだ。 「ああ・・。」  美己男の中に飲み込まれていく様を見つめる。     もっとしたい   もっと奥に入れたい  欲望が寛太朗の頭をグルグルと駆け巡った。 「寛ちゃん?」  寛太朗は美己男の膝の裏をグッと持ち上げ、腰を浮かせた。 「めちゃくちゃに突いていい?」  感情が高ぶる。 「ん、いい。痛くしてもいいよ。」  腰を引き上げ思い切り突く。 「んん、寛ちゃんっ。」  美己男の顔が歪む。  根元までズッポリと咥えこまれ寛太朗の腰が蕩ける。 「あっ、みー。ヤバい。」  ゴツゴツと美己男の頭がヘッドボードに当たるのも構わず突き上げた。  体が熱くなり全身から汗が吹き出す。 「寛ちゃん、待って、なんか、タオルッ。」  手に触れた床に散らばっている服を引き寄せ体の下に詰め込む。 「イクッ。」 「寛ちゃん、チューしてっ。」  ガバッと美己男に覆いかぶさり思い切り唇を吸いながら放出した。  ビクビクと美己男の中で流れ出す体液が熱い。  美己男もヒクヒクと痙攣しながら白い液を飛ばしている。 「んん・・。」  汗だくの額を擦りあわせ何度もキスをする。 「また出た。」 「ん?何?」 「いや、何でもない。」  寛太朗は美己男の体から引き抜いた。  白い液がゴムの中に溜まっている。  ゴムを引き抜いて捨てるとドサリとベッドに倒れ込んだ。 「いって。」  寛太朗は何か固いものが体に突き刺さって声を上げた。  寝たままズルズルと引き抜く。 「何それ。」    美己男が笑い出す。  イガイガのついたジャケットが出てきた。 「あー、しまった。もらった服、下に敷いたみたい。」 「あーあ、ブランド物なのに。サイテー。」 「ひでーな、最悪。」  二人で爆笑する。 「今、何時?」  ベッドサイドの時計を見る。 「やべ、9時半。急いでシャワー浴びて来い。母さんが帰って来る。」  大慌てで交互にシャワーを浴び部屋を片付ける。  何とか荒した部屋を片付けたところで母親が帰ってきた。 「こんばんは、おばさん。お邪魔してます。」  持ってきた焼き鳥を取り出しながら美己男がニコ、と迎える。 「みー君、来てたの。いらっしゃい。」 「美己男が焼き鳥持ってきてくれたから、晩飯、それでいいよね。」 「え?ほんと、嬉しい。ありがとねー。みー君。」 「いえ、一人じゃ食べきれないほどもらったんで。 ね、寛ちゃん、これさ、焼き鳥丼にしようよ。」   母親が着替えに行った隙に美己男がムニュと寛太朗の肩にキスをした。 「いいね、それ。」  寛太朗は肩のこそばゆさに笑った。

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