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高校1年 夏の終わり
夏休みが明け2学期が始まると学校全体が学園祭に向け浮かれた空気になっていくのだが、寛太朗 がいる特進クラスは例外で、学園祭よりもその後の中間試験のほうに意識を集中している生徒が多い。
寛太朗も学園祭にはあまり興味がなく、施設で大学生ボランティアに勉強を教えてもらうことを最優先にしている。
今日も勉強を終え、施設を出るといつの間にか雨が降っていた。半袖を少し肌寒く感じながら早足で帰り着いたアパートの前で
「寛ちゃん?」
と泣きそうな声が聞こえた。
「えあ?みー?」
「寛ちゃん」
美己男 が暗がりから明るい電灯の下に出てきて姿を見せた。どのくらい待っていたのかわからないが髪も制服もびしょ濡れだ。
おまけにドロドロで顔にあちこち擦り傷があり、久々に会ったと思ったらこの有様で寛太朗は思わず笑った。
「相変わらず、頭悪いな、みー」
「ごめんなさい」
「じゃなくて、施設に連絡してくれば俺、いたのに。待ったろ?」
階段を上がり鍵を開けて家に入れる。
「寛ちゃんに会いたくなったから」
「いいけど。ヤバいんだったらもっと早く逃げて来いよ。思いっきりやられた後じゃん。シャワー浴びな」
バスタオルを受け取る美己男の手が冷たい。
「うん、ありがと。なんか着るもの貸して」
「おー、お前、でかくなったからな。もうサイズが合わないかも」
なるべく大きいものを探して引き出しを引っ掻き回すと、見慣れぬ迷彩柄の上下のスウェットが目に留まった。
理貴 が無理矢理押し付けてきたものの1つで1度だけ来てみたがサイズもさることながら、あまりにも似合わないので引き出しに入れっぱなしになっていたものだ。
理貴と今の美己男は同じくらいの身長だろう。
「お、いいのがあったわ」
迷彩柄を底から引っ張り出して渡した。
「おばさんは?」
「今日は夜勤だから朝まで帰ってこない。泊まっていくか?」
うん、とホッした顔で美己男が笑う。
「寛ちゃん、これどうしたの?」
シャワーから出て来た美己男に訊かれ振り向いた寛太朗は笑った。
「これ、ブランドものじゃん」
「そうなの?それ、もらいもん」
赤い髪にピアスだらけの美己男に迷彩柄がかなりマッチしていて笑える。
「サイズぴったりだな。やるよ、それ」
「え?いいの?これ多分すごい高いやつだよ」
「いいよ、俺、絶対着ないし。お前のほうが似合ってるから」
美己男に薬箱を渡して寛太朗はキッチンで夕食の準備を始めた。
「カレーでいい?母さんが作ってくれたやつだけど」
「うん。おばさんのカレー久しぶり」
洗面所で手当てをしてから美己男がキッチンに来て嬉しそうに2人分の皿を出してくる。子供の頃も美己男はいそいそと準備をしていたことを思い出した。
「コーンスープか、みそ汁か」
「スープ。寛ちゃんは?」
「俺も」
「寛ちゃんと一緒にご飯食べるの久しぶりだね」
隣に立った美己男を寛太朗は見上げる。
「ああ、小学校ぶりか。まさか、みーに身長抜かされるとはな」
寛太朗はカレーをかき回しながらぼやいた。
「えへへ、俺、中学ですげー背、伸びたんだよね」
「伸びすぎだろ。髪も伸びてるし」
食堂で会った時はまだ少ししか伸びていなかった髪が、今は目も耳も隠れるくらいに長く伸びていて全部を真っ赤に染めている。
美己男と向かい合わせて座るとテーブルがいつもより小さく感じ、大したメニューでもないのに少し豪華に見えるのが不思議だ。
「うまい」
「まだあるからおかわりすれば」
「寛ちゃんは?」
「俺はいいや」
やった、と小鼻を膨らませる。嬉しい時の美己男のその癖がまだそのままで寛太朗はまた笑った。
「みー、お前ちゃんと晩飯食ってんの?」
美己男が手についたカレーをペロリと舐めると、舌に嵌めたシルバーの丸いピアスがチラリと覗いて引っ込んだ。
「うん、今、賄いつきの所でバイトしてて、そこで食ってる」
「そっか。知愛子 さん、相変わらず料理しないんだ」
「うん、あの人は料理、ってか生活全般、全然だめだから」
「ふーん」
あの人、という呼び方に距離ができていることが伺える。ちゃーちゃん、ちゃーちゃんとまとわりついていた頃とはずいぶん変わったようだ。
ごちそうさまでした、と言いながら美己男が立ち上がった。
「後片づけ俺やるから、寛ちゃん風呂入んなよ」
「ん、サンキュ」
シャワーを浴びた後、しばらく授業の復習をしてからベッドに行くともう美己男が先に寝ころんでいた。ベッドが小さすぎて2人とも肩を縮めてくっつかないと溢れてしまいそうだ。
「その傷、どうした。まだ暴れてんのか?」
寛太朗は美己男の横に寝転んであちこち擦り傷ができた顔を見ながら訊くと、しばらくしてううん、という声が返ってくる。
「中学の時、クラスで一緒だった奴らに殴られた」
「はぁ?なんで」
美己男が言い渋るのを無理矢理に訊き出し、話しがあちこちに飛んで分かりづらくはあったがどうにか事情を把握した。
美己男が行っていた中学校は全寮制の男子校で、問題児が多く入れられている半ば矯正施設のような規律の厳しいことで有名な学校だ。美己男は入学当時は周りの生徒に比べて小さくて、しかも目立って綺麗な顔をしていたからすぐに標的にされたらしい。入学してすぐに先輩に乱暴されそうになって逃げているところを技術指導の教諭に助けられた。
少し冷たい感じで不愛想だが本当は面倒見の良い、カッコいい先生で、危なくなるとよく技術室に匿ってくれた。どうやら美己男はすぐにその教諭に夢中になってしまったようなのがその口ぶりで分かる。
3年生になって美己男は教諭に思いを打ち明け拒まれていたが、卒業式の日にようやく受け入れてもらえたらしい。
それを寮にいた生徒に目撃されており、そのことをネタに卒業してから度々、脅されて金を渡しているのだと言う。
今日は言われた分の金を持って行けなくて殴られ体で払えと言われ逃げてきた、と美己男は話した。
「お前、黙っていつも払ってんの?」
「だってぇ、払わないと・・」
「動画とか取られてたんだ」
「うん」
「はっきり映ってた?お前の顔と先生の顔」
「わかんない。ちゃんと見たことない」
「は?ちゃんと見たことない?見たの?見てないの?」
「見たよっ。見たけど、遠くからでよくわかんなかった」
寛太朗は呆れた。
「お前、それ、フェイクかなんかじゃないの?」
「でも、寮の俺の部屋だったのは確かだよ」
「そんなもん後でいくらでも似たようなん撮れんだろ。お前と先生の動画なんかじゃねーよ、多分。ふかしてるだけだって。バカだな」
美己男が黙り込む。
「そんでこのこと、その教師に言ったの?まだつき合ってんのか?」
美己男は首を横に振る。
「もう会ってない。先生に迷惑かけたくないし、言えない」
「はぁ?迷惑ってなんだよ。脅してるやつらも最悪だけど、その教師もマジでクソだな」
そう言うと美己男はガバと起き上がって
「馨 さ、先生は悪くない」
と言い出した。
「ふーん、馨さんって呼んでんだ」
寛太朗は薄笑いを浮かべる。
「そんなん、教師が悪いに決まってんじゃん。生徒に手ぇ出すとかありえないし。バレたら学校辞めるどころじゃすまないよ。犯罪者。それ、お前わかってる?」
「違うよ、先生はずっと助けてくれて。俺が好きになって、して欲しいって頼んだんだよ。それに、俺が卒業した後のことだし、先生も学校辞めたもん。先生は何にも悪くない」
涙目で言う。
はー、とため息をついて寛太朗も起き上がった。
「ほんと頭悪いな、みー。お前が好きかどうかなんて関係ないんだよ。中学生に手ぇ出す教師なんて終わってんだろって言ってんの。だいたいお前の母親だってクソだろ。もとはといえばお前の母親が原因でそんなとこ・・。」
美己男がいきなり寛太朗の胸倉を掴んだ。
ドンッと背中を壁に強く打ち付けて、うっ、と息を詰める。ずるずると壁に沿って倒れると美己男が跨って上から胸倉を掴んだまま馬乗りになった。
美己男の体の重さにもがく。
「みー、苦しっ」
いまや体格も力の強さも美己男の方が上だ。
「ちゃーちゃんも先生も悪くないっ」
キレっぷりは子供の時と変わんないな
寛太朗の加虐的な一面が久しぶりに顔を出し、胸倉を掴んでいる美己男の手首を握るとうっすらと笑った。
「なんだよ。笑うなよっ」
美己男の美しい顔が歪むのを見ると泣かしたい衝動が溢れて止められなくなる。美己男を泣かせるのは自分だけが許された遊びだったはずだ。
「もう、やめとけば?そんなクソみたいな教師に夢中になってんなよ」
掴んだ手首を持ち上げ美己男を膝の上に乗せるようにして上半身を起こす。
美己男の手首を自分の首の後ろに回して首を抱かせると、寛太朗は美己男の腰をグッと引き寄せた。
「寛ちゃん?」
『寛ちゃん、大好き』
そう言っていつも自分の背中を追いかけてきていたくせに会えなくなったらすぐに違う背中を追いかけていたのか、と思うと胸がチリチリとして、自分の知らない間の美己男を汚したくなった。
「どうせお前、またすぐ置いていかれんじゃないの?」
意地悪く言う。
「何でそんなこと言うんだよっ」
美己男は今にも泣きそうだ。
「先生に言えるわけないってさ、先生が悪くないんならちゃんと相談できるはずだろ?」
「そっ、それはっ」
言い返せずにうー、とついに美己男が泣き出し、寛太朗は興奮が抑えられなくなった。
「俺が昔みたいに擦ってやるから、な?そんな教師、もう忘れろ。そんでもう金も払うな。ほっとけよ、そんな奴ら。どうせ何もできやしないって」
そういうと寛太朗は美己男の薄い唇を舐めた。
「あ・・」
ブルッと体を震わせる美己男の下唇を挟んで吸う。
「寛ちゃん」
美己男が首に縋りつき、ガバッと寛太朗の唇に吸い付いてきた。
「ん、みー。ちょ、待て」
グイグイと押してくる美己男の勢いに押されて寛太朗は壁にもたれた。
美己男の歯の間から舌を差し込んで口の中を舐めまわす。
「んー」
「舌出してみな」
美己男が出してきた舌を寛太朗は唇で挟んで吸い舌に嵌めたピアスを舐めた。
「こんなとこにもピアスして、エロいなぁ」
会わない間にこんなことまでして、と呟き、美己男のスウェットを脱がせて乳首を舌先でチロリと舐める。
「あっ、あっ、寛ちゃん」
そのまま、チュウ、と乳首を吸うと美己男の腰がビクリと反応し、ユサユサと揺らし始めた。
「待てって、みー。今、出してやるから」
「んー、寛ちゃん、早くっ」
待ちきれず、自分で出そうとする美己男の手首を掴む。
「ダメだよ。みーは触っちゃ」
寛太朗は意地悪い笑みを浮かべ、スウェットの上からはっきりと立ち上がったモノの形を撫でた。
「あー。無理、寛ちゃん、無理ぃ」
グリグリと頭を肩に押し付けてくる。
「何が無理?」
「出ちゃうっ」
「バカ、まだ擦ってもないじゃん。出すなよ」
「んんー」
熱い息を漏らし、美己男が首にしがみついた。先端あたりを撫でると、じんわりと濡れてくるのがスウェットの上からでもわかる。スウェットと下着を一緒に指でひっかけ下におろすと、美己男のパンパンに勃起したモノが飛び出してきた。
「あー、先走り、すご」
寛太朗は笑った。
根元をキュッと握ると待ちきれないように上から美己男が手を重ねてしごき始める。
「みー、そんな慌てるなよ。お前は触っちゃダメって言ったろ?」
「んー、寛ちゃん、擦ってぇ」
うー、とまた泣き出す。
寛太朗はゆっくりとしごき始めた。
「何、みー、そんなに先生のこと、好きだったの?」
「あっ、あっ。好きだったけどっ」
「なんだよ、何したのか言ってみな?」
「普通に、キスしてエッチしただけ」
寛太朗は自分の固くなったモノを出して美己男にこすりつけた。
「こんなことは?」
「してないよぅ」
「でもセックスはしたんだ?」
「うー、した、した」
「ふーん、じゃあ、もう後ろ、入れるの平気?」
「わか、わかんらい」
美己男はもう興奮して、呂律が怪しい。
「後ろ、見せてみな」
「え?」
蕩けた顔の美己男が訊く。
寛太朗はグッと体を傾け、美己男を膝の上からベッドにうつぶせに転がした。肩を押さえつけて、腰を持ち上げると、スウェットを引きずり下ろす。白い滑らかな尻がむき出しになった。
「あっ、寛ちゃんっ、だめぇ」
美己男が悲鳴のような声を上げる。
「なんだよ、先生には見せて俺には嫌?」
「恥ずかしいよぅ」
「はぁ?何言ってんだよ。子供の頃、お前、俺に散々しごかせたくせに。今更、恥ずかしいとかなしでしょ」
そう言って、コンドームを指に嵌め、スリスリと後ろを指で撫でた。
「あんっ」
美己男がビクリと腰を揺らす。
「何回してもらったの?先生に」
「1回だけっ」
ゆっくりと中指を入れた。
「あー」
ヒクヒクとしながら指を受け入れる。
「1回?嘘つくな、そんなわけないよな?」
「ん、わかんないよぅ。やだっ、寛ちゃん」
ゾクゾクとした快感が沸き上がってきた。
「やなんだ?俺のは」
指を抜こうとすると
「ちが、ちがうぅ。寛ちゃん、だめ、抜かないでっ」
と美己男が腰をガクガクと揺らす。
「なんで?どうしたいの、みー」
興奮して蕩ける美己男に、寛太朗は無性に自分との記憶で上書きしたくなった。
「もっと、奥っ、奥がいいっ」
美己男の先からポタポタと透明な液が垂れる。
「みー、どうした?どのへん?」
そう言いながらズボッと目いっぱい奥まで指を突っ込むと
「あー、あー、寛ちゃん」
と声を漏らして美己男の腰が崩れそうになった。
「おいっ、みー。なんだよ、まだこれからだろうがっ。ん?先生とはわかんないぐらいやったんだろ?ふざけたこと言ってんじゃねーよ」
慌てて寛太朗は自分にゴムを被せると、美己男の腰を引き上げる。
「挿れるぞ」
そう言うと後ろにぴたりと当て、ググッと先端を押し込んだ。抵抗感を感じるが構わずギュムと抵抗を押し破って中に挿入 った。
「うあ、挿入った」
初めての狭さと熱さに興奮して血が滾 る。
そのまま、美己男の中に少しずつ挿入っていった。
「あっ、かんちゃ、ん・・」
すぐに腰が砕けそうになる美己男を必死で支える。
「クソッ、みー、もうちょい、がんばれ」
「あ、無理、無理ぃ」
寛太朗はあっと言う間に高まり焦る。
美己男の肩を掴んで前を擦りながら思い切り突っ込んだ。
「だめだ、イきそう」
「あー、イく、イく、出るぅ」
美己男が叫んで白濁した液をベッドの上に盛大に飛ばした。
寛太朗も誘発されたように美己男の中でドクドクと体液を吐き出す。
「やべ、止まんね」
心臓がバクバクして息が上がり、額から汗が滴り落ちた。美己男が力尽きたように自分の出した精液の上にべったりと寝そべってしまう。
「すげー出るっ」
ビクビクと美己男の中で震えるのを感じながら美己男の背中に倒れ込むと思わずそう呟いた。
その後、裸のままで2人ともぐったりと寝落ちてしまい、次の日の朝ひどい状態で目覚めた。
体のあちこちに精液がついて乾いている。
「うわ、固まってバリバリだ。最悪」
「俺も」
お互いの体を見て笑う。
「みー、早くシャワー浴びろ。母さん帰ってきちゃう」
狭いベッドで押し合いながら美己男が顔を寄せキスをしてきた。
「大好き。本当はね寛ちゃんとずっとしたかった」
久しぶりに聞く『大好き』に引き寄せられるように寛太朗は美己男の唇を追いかけ捉える。
「いいから早くシャワー行ってこい」
裸のまま浴室に向かう背中を見ながら寛太朗は美己男の中で射精したことに衝撃を感じていた。ついいじめたくなって始めた遊びのはずが、今までにない強烈な快感を伴ったセックスに至ったのだ。さらには射精障害ではなかったという証明までされた。
そして今、さっきの美己男とのキスで反応して勃起までしている。
「寛ちゃん、お先に」
美己男が部屋に戻ってきて勃起している寛太朗を見た。
「あれ?朝勃ち?」
「わかんね。さっき勃った」
「口でしてあげようか?」
美己男が寛太朗の前に跪く。
「え?いや、そんな時間ねーって」
「大丈夫、すぐだから。どうせシャワーで出すんでしょ?」
そういうと美己男がツルリと咥えた。
「ん・・」
美己男の舌のピアスがコロコロと滑っていく。
「あ、みー、それ、ヤバいって」
チュプチュプと音を立てて舐めあげられて根元から吸われ腰が痺れて背筋に快感が這い上る。
「あっ、離せ、出る」
「いいよ、出して」
美己男の舌にあっという間に絡め取られ、絞り取られた。
「あー、悪ぃ。みー」
ハァハァと肩で息をしなから赤い髪を撫でる。
美己男がゴクリと喉を鳴らして飲み込んだ。
「うわ、お前、飲んだの?嘘だろ」
「ん。早くシャワー浴びてきなよ」
美己男が見上げてえくぼをへこませる。
「あ、うん」
寛太朗は慌てて浴室に向かった。
シャワーから出ると美己男が迷彩柄のスウェットを着て汚れたシーツを剥がしていた。
「寛ちゃん、これ、うちで洗っとくね。おばさんに見られたらマズいでしょ?」
「あ、悪ぃ。サンキュ」
あたふたと制服を着る。
「みー、今日、学校は?」
「1回家に帰って遅刻して行くから大丈夫ー。じゃあね」
美己男はバイバイ、と笑うとドアを開け、出て行った。
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