11 / 16
高校3年 校外学習の続きは
年末に百花 と別れてしばらくは理貴 がワァワァとうるさかったが、春休みを前に受験モードの特進クラスはまた一段ギアが入った雰囲気で、さすがの理貴も大人しくなった。
寛太朗 も進級を期にアルバイトを辞めて勉強時間をさらに増やすことにした。
浪人は絶対にできない。国立大学に奨学金で受からなければ大学は行かない、と決めている。春休みは図書館と施設での勉強に費やすつもりだ。
百花と別れておいて良かったのかもな
そう思いながら暗くなった図書館からの帰り道に明るく光る本屋の前を通り過ぎる。眩しいくらいの店内の明りに国立博物館のポスターが貼ってあるのが目に入った。
春休みの特別展示が開催されており、割引券付きのチラシがおいてある。
小学5年生の校外学習で行く予定だったあの日、美己男 が起こした大事件のせいで行きそびれたままだ。
寛太朗はチラシを手に取ってカバンに入れた。
家に帰ってスーパーで買ってきた焼きそばをすすりながら持って帰ってきたチラシを眺める。
ちゃーちゃんが本物のクジラの骨があるって
と電車の中で嬉しそうに話す美己男の顔を思い出した。
「大人になったら一緒に行こう」という約束したしな、と言い訳のように考えてから、チラシを写真に撮って美己男に送る。
しばらくして
いつ行く?
と返事がきた。
行くの確定かよ、と思いながら
いつでもいいけど
と打ち返す。
来週木曜? バイト遅番 7時から
今もバイトで忙しいのか電報のような文面に笑いながら
OK
と返し、残りの焼きそばを一気に啜った。
木曜日に美己男と朝から駅で待ち合わせる。今週はずっと木曜日が待ち遠しかった。
外に出ると風が思っていたよりも冷たい。それでも太陽の下は暖かく、駅までなんとなく浮かれて日向を選んで歩く。
駅に近づくと美己男がぼんやりと空を見上げながら立っているのが見えた。遠くからでも背が高く赤い髪の美己男はすぐに分かる。
「美己男。」
寛太朗の声に美己男がえくぼを作ってこちらを見た。
「寛ちゃん、おはよ。」
理貴からもらったイガイガのジャケットがスラリとした手足の長い美己男に良く似合っている。
赤い髪にイガイガジャケットを着ているような人間は普通なら避けて通る類だよな、と寛太朗は美己男を改めて見た。
「何?何か変?」
「いや、結構似合ってるな、と思ってさ。」
そうかな、と美己男が嬉しそうに笑う。
寛太朗は量販店の紺のプルオーバーにジーンズ、黒いダウンジャケットといたってシンプルな格好で、二人が並んで歩くと、あまりの世界観の違いに笑ってしまう。
「んじゃ、行くか。」
「うん。」
電車に乗って3駅目で降り、駅を出ると、川沿いの道が見えた。
「あー、懐かしい。」
寛太朗は思わず声に出した。
小学5年生の時はこの先の自然公園まで辿り着くことができなかった。
記憶の中の川よりも壁の高さが随分と低い。ガードレールも記憶の中には無いものだ。
「こんなに低かったっけ?」
寛太朗はガードレールに体を押し付け下を覗き込んだ。
美己男がきょろきょろと見回している。
「んー?こんなところだったっけ?」
「え?何、もしかしてお前、覚えてないの?」
寛太朗は驚いて訊いた。
「えー?校外学習でしょ?こんな道だったけなぁ。」
と首を傾げている。
「嘘だろ、お前、この道で大暴れしたじゃん。」
「うん。それはなんとなく・・。」
「なんとなくなの!?」
寛太朗にとっては忘れがたい面白い思い出の一つだというのに。
「相変わらず、頭悪いな、みー。」
寛太朗はそう言ってスタスタと川沿いの道を歩き始めた。
「あ、待って、寛ちゃん。」
後ろから慌てて美己男がついてくる。
「寛ちゃんの髪、真っすぐでサラサラだね。」
後ろから美己男が話しかける。
「んー、でも髪の量、多くてめんどい。跳ねるし。」
寛太朗はバサバサと掻きむしった。
「いいじゃん。俺、寛ちゃんの髪好き。俺の髪、細くて癖あって嫌いだ。」
美己男がぼやいた。
「そうか?その赤い髪、どこにいてもすぐ見つけられて便利じゃん。」
寛太朗は立ち止って川を覗き込みながら言うと
「え?ほんと?」
と美己男が顔を覗き込んできた。
寛太朗は乗り出してきた美己男の肩を掴み川に向かってグッと押し出した。
「わぁっ。」
しがみついてくる美己男の肩を寛太朗は笑って引き戻した。
「寛ちゃんっ。」
美己男が叫んだ。
「はは、お前、こうやって女の子、川底に突き落としたの忘れた?」
ガードレールに片手をつき川底を指さした。
「ちょうどこの辺だと思うんだけど。」
美己男がうーん、と首を傾げる。
「それはなんとなくしか覚えてないんだよね。寛ちゃんが鼻血出して怖かったことは覚えてる。」
「ええ?そっち?お前の頭、ほんとどうなってんの。」
「寛ちゃんが女の子の悪口言って笑ったのとその後、横尾川でお弁当食べたのも楽しくて覚えてる。」
「なんかすげえな、お前。今も昔も。お前といると世界が平和で安心するわ。」
何それー、と口を開けて美己男が笑う。
また歩き始めてすぐに川の先に大きな芝生の広場が広がっているのが見えてきた。
小さく緩やかなカーブを描いてあちこちに緑色の丘が盛り上がっている。
「おおー、広っ!」
想像していたよりはるかに広々とした公園だ。寒空の下でもキッチンカーなどが並んでおり、大勢の人で賑わっていた。
敷地の中に博物館や体育館、グラウンドなどが設置されている広大な自然公園だ。
博物館の標識に従って歩いて行くと、大きなグレーの建物に着いた。
「わ、すごっ。こんなに大きかったんだね、博物館。」
美己男が見上げて言う。
「んー、俺も初めて来た。入ろうぜ。」
下に降りる長いエレベーターに乗り、地階に降りて行く。
博物館の中は、家族連れも多くザワザワと騒がしい。小さな子供が駆け回り、ベビーカーを押している家族も多い。少し大きめの子供を引き連れた見学ツアーが目の前をズラズラと横切ったりして、なかなか真っすぐ前に進めないが、誰も不思議な組み合わせの寛太朗たちを気にも留めない。
子供の頃の気分に戻ってあちらこちらと探検気分で二人で見て回った。
「んで、クジラの骨、どこ。」
「えー?どこかな。ってか、ここどこ?」
背の高い美己男が小さい地図を見ながら首を傾げている姿が笑える。
暗い部屋で寝転んで星が動いていくのを見たり、長い寄生虫の標本に美己男が逃げ出したり、子供たちに混じって動物との背比べをしたり、と意外と楽しい。
気が付くと入館してから2時間以上たっていた。
暗く細い通路をグネグネと通り大きなホールに出る。
「あ。」
寛太朗は思わず声を上げた。
ホールの天井から大きなクジラの骨が、まるで宙を泳いでいるかのように吊り下げられていた。
「わぁー。」
美己男も見上げて声を上げる。
「クジラの骨だ。」
「でっか。」
二人で骨の下に立って見上げた。光の下に、縞々の影を作って骨が浮かんでいる。
「クジラってこんなにでかいの?」
「ほんとすげーでかい。」
「海の中で出会ったら怖いな、これ。」
あはは、と笑いながら美己男がクジラの腹を撫でるように手を伸ばした。
「いつか本物、見てみたいなぁ。」
そう言う美己男に寛太朗は少し驚いた。
「みー、動物とか好きだったっけ?」
どちらかというと怖がっていた記憶がある。
「んー?動物はあんまり好きじゃないけど、クジラは好き。」
「へぇ。」
「小さい頃、よくあの人がクジラの話をしてたから。」
「知愛子 さんが?」
「うん、クジラを見に行って俺の父親と恋に落ちたって話。」
「へぇ、ロマンチックな話だな。」
初めて聞く話だ。
寛太朗も美己男も自分の父親の記憶はほとんどなく二人とも母親を通してしか父親を知る術はない。
寛太朗の父親に対してのイメージはあまり良くないが、美己男はこの思い出を今も大事にしているのかもれない。
「まぁ、今となってはほんとかどうか怪しいけど。なんかできすぎた話だったから、全部あの人の作り話かも。でも子供の頃は、けっこう信じてたなー。」
「ふーん。」
頭から尻尾まで骨の下を歩きながら美己男の大きくて長い指がクジラを撫でていく。
「寛ちゃん、いつか一緒に見に行こうよ。」
寛太朗と美己男の指が一瞬触れて離れる。
「お前と?嫌だよ。どこに見に行くんだよ。」
「ハワイとか。」
ユラユラと揺れる指が触れては離れる。
「ベタな新婚旅行みたいで絶対嫌だ。」
「えー、じゃあ南極。」
「遠っ。和歌山でよくね?」
「え?和歌山で見れるの?」
「見れるよ、多分。」
「んじゃあ、次は本物、一緒に見に行くの約束ね。」
話しながら博物館を出た。
外の冷たい空気に晒されながら指が触れ合う距離で歩き続ける。触れた部分が温かい。
「寛?」
突然名前を呼ばれて寛太朗はビクリと振り向いた。
反射的に手を引っ込める。
「あ?然?」
「おお、何してんの?こんなとこで。」
太陽の光の中で眩しそうに然がこちらを見ていた。
「然こそ、こんなとこで何してんの・・?」
美己男の体から緊張が伝わってくる。
「うん?俺は、そこの体育館で今度、柔道の大会があるからそれで。」
「ああ・・そか。俺らは今、博物館、見てきたとこ。・・施設ん時からの友達で工業科の美己男。」
然を見ながら答えた。
「ああ、一年の時、食堂で会った、よな?」
然が美己男に向かって頷く。
「特進で一緒の然。然は中学ん時からの友達。」
強張った顔の美己男を見る。
「あ、こんにちは。」
美己男が少し後ずさりしながら頭を下げた。
「美己男?そんな怯えなくても。」
寛太朗は笑った。百花に目撃された時のことを思い出して警戒しているのだろう。
「あ、悪い、邪魔しちゃったかな。」
然の気遣う言葉に
「そんな、別にっ。」
と美己男がムキになる。
「美己男、大丈夫だよ、然は。」
寛太朗は美己男をなだめた。
「あれ、そんなに印象悪かったかな、俺。」
然が頭を掻く。
「あ、ごめんなさい、そういうわけじゃ・・。」
美己男がうつむく。
「あはは、大丈夫。それより、博物館、どう?面白かった?さっき割引のチラシもらったんだよな。」
「おお、意外と面白かったぞ。然も時間があれば行ってみろよ。広いから結構時間かかるけど。な?」
と美己男に問いかけると、ようやく美己男も笑顔を見せて うん、と頷いた。
「へえ、行ってこようかな。入口、どこ?」
「ここの反対側。エレベーターで地下に降りたとこ。」
「そっか。行ってみる。んじゃあ、また学校で。」
「おう、またな。」
然が歩き出した。
「然。」
寛太朗はその背中に呼びかけた。
「ん?」
「あの、このこと理貴にはまだ話さないで欲しい。」
寛太朗は言った。
「うん、わかってる。じゃ、また学校で。」
然は手を挙げて再び歩き出した。
寛太朗はホッと息を吐いた。
然で良かった
いつの間にかまた美己男の指が触れている。
「どうする?昼飯、食べに行く?」
寛太朗は美己男にそう訊きながら自分でも嫌になるくらい、欲情が全身を駆け巡るのを感じた。
あー、これ、理貴の言ってたヤリたい感じ、今、俺バンバン出てる
「今日、おばさんは・・?」
美己男も火照 った顔で訊いてきた。美己男からも同じものを感じ取る。
「6時まで仕事。」
「じゃあ、寛ちゃんち行きたい。寛ちゃんちで、しよ。」
美己男の白い喉がゴクリと動き、寛太朗の心臓も飛び跳ねる。
「バカッ。そんなこと外で言うなよ。」
寛太朗は早足で歩き出した。
ほとんど無言で電車に乗る。
早く抱き合いたくて仕方がない。
もどかしい思いで家に帰ると狭い玄関に二人で押し合いながら入る。
足を踏み合うようにして靴を脱いで、部屋に足を踏み入れた瞬間、美己男がぶつかるようにしてキスをしてきた。
「寛ちゃん、俺、シャワー浴びなくちゃ。今日、まだ準備してない。」
「ん、俺も。」
「寛ちゃん先に浴びて。」
寛太朗はプルオーバーとシャツを一緒に脱ぎ捨てて浴室へ向かった。熱いシャワーを浴びるとバスタオルを腰に巻いただけで出る。入れ替わりで美己男がシャワーを浴びている間にベッドを整える。
全裸で戻ってきて跨 った美己男を思い切り抱きしめると、ようやく安心した。
「然って人と仲いいの?」
「ん?あー、然?いいよ。」
寛太朗は腰のバスタオルを外して、美己男の熱く勃った先端を撫でる。
「んっ、中学の時から仲良いの?」
美己男が上気した顔で訊く。
「うん、そう。」
「どのくらい?」
「え?どのくらい?学校で普通にいつも一緒にいるくらい?」
美己男が眉を寄せながら腰を揺らす。
「チューするくらい?」
美己男の足が腰に絡みつく。
「え?しないよ。」
寛太朗はギュと根元を握った。
「んんっ、あっ、寛ちゃん。してない?あの人と?」
美己男の先から透明の液が溢れ、寛太朗の手が濡れた。
「みー、カウパー漏れてる。気持ちい?」
「あっ、寛ちゃんっ。いいっ。ね、してない?」
寛太朗は美己男の下唇を噛み、唇のピアスをチュクチュクと舐める。
「んー?何を?」
「寛ちゃんっ、意地悪っ。」
美己男が寛太朗の手を上から握りしめた。
寛太朗は美己男の乳首を舌の先をチロリと舐めた。
「ん?然と?こういうこと、してると思った?」
美己男の体がビクリと震える。
「やだっ。」
美己男がうー、と泣き出した。
「いや?したくない?」
寛太朗は顔を離した。
「違うっ、したいっ、寛ちゃんっ。」
美己男が寛太朗の頭を抱え込む。
寛太朗は乳首を甘噛みする。
「んんっ 、寛ちゃん、あの人としたらやだっ。しないでぇ。」
泣き声を上げる美己男をベッドに押し倒した。
「しないよ。みーは?他に誰かとしてんのか?」
ヌルヌルと濡れた美己男のモノと自分のモノを擦り合わせる。
「してないぃ。寛ちゃんとだけっ。お願い。早く。」
寛太朗は中指を口に含んで湿らせた。
「ナカ、触ってやろうか?」
寛太朗は美己男の膝を開き、指で入り口を撫でた。ヒクヒクと美己男の後ろが期待に震えているのがわかる。
ツプ、と指先を入れた。
「んっ、寛ちゃん・・。」
美己男が声を漏らす。
グズグズと中をかき回すと腰が浮いて震えた。
「待て、みー。今、いいとこ探してやるから。」
寛太朗は美己男の中を指で探っていく。
「わかんねぇ、どこだ?」
焦れてグイと指を中で立てた瞬間
「ダメッ!」
美己男が大きく叫んでいきなり白い液を飛ばした。
「うわ。」
「あっ、ああっ。あんっ。ヤダ、ヤダァ。」
指でコリコリと探り当てたしこりを触るたびに美己男がビクビクと腹を震わせて精液を飛ばし続ける。
「そこっ、ダメッ。」
美己男の伸ばした手を握る。
「すげぇいい反応じゃん。気持ちいいんだ。」
寛太朗は指を引き抜いてヒタと美己男の下に当てるとググと力を入れた。
「ああ。」
ギュムと抵抗を突き抜け、中に入った。
入る瞬間の制圧感にゾクゾクとする。
「あー、みー、きもちい。」
中を擦るとビクビクと美己男の体が反応する。
寛太朗の肌から汗が吹き出し始め、止めたくても腰が動いてしまって自分でも止められない。
「あー、すぐイキそう。」
美己男の中にいるとあっという間に高まってしまう。
「ん、寛ちゃん、イって。イって。俺、もうダメぇ。」
美己男の痙攣が止まらない。
「んっ・・・。」
寛太朗も決壊する。
「あー、みーの中だとすぐ出る。」
ぐったりと美己男の上に倒れ込みながら寛太朗は呟いた。
ともだちにシェアしよう!