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高校2年 夏休み
夏休みに入ると寛太朗 は早速、施設での手伝いとスーパーのアルバイトのシフトを詰め込んだ。
夏祭りやら、花火大会やら、か
中学生の時は、然 やクラスメイトと遊びに行った記憶はあるが、あまり楽しかった思い出はない。ゲームセンターなどをうろつくくらいで、お金のない寛太朗は誰かがプレイするのを横で見ていることが多かったから自然とあまり行かなくなった。
去年はアルバイトと勉強で忙しく、イベントと言えば施設で子供たち相手にやるものばかりで終わった。
今年も大して変わりなさそうだな
百花 とは面倒くさくて連絡してまで会う気にはなれず放置している。
今までも付き合っていると言っても学校で休み時間にたまに話すか、放課後、図書館で一緒に勉強して過ごすくらいだ。
それらしい事と言えばたまに百花が作ってくる弁当を学校で一緒に食べるか、図書館から帰る時に手を繋いで帰る程度でそれ以上のことは何もしていない。それでも百花は満足なようで不満は言ってこないし、一緒にいる時は楽しそうにしている。
こんなので楽しいのか、と寛太朗は不思議に思うが深くは追及しなかった。
「あっつ」
容赦ない夏の日差しにうんざりしながら、来週、施設で行う恒例の花火大会の買い出しに朝から歩き回っていた。深く被ったキャップのツバの下から見えるユラユラとしたアスファルトの熱気が歩いている足の裏までもを焼いて熱い。
あまりの暑さに堪らなくなって、コンビニに寄ってアイスを買った。コンビニの前の手すりに腰かけてなんとなく道行く人を眺めながらアイスを齧る。
その時チラチラと赤い髪が道路の向こう側を歩いて行くのが見えた。
「みー?」
寛太朗は立ち上がり、アイスを咥えながら慌てて荷物を持つ。
今年の花火は誘おうと思っていたから丁度良かった、と道路のこちら側を美己男 が歩いて行くのと同じ方向に早足で歩き出した。
見覚えのあるキラキラしたドクロのタンクトップ姿を確認して、道を渡ろうと美己男を追い越した位置にある横断歩道の前で立ち止ったその時、美己男が隣にいる小柄な女の子に向かって笑いかけながら話すのが見えた。女の子が美己男を見上げて頷いている。
あれ?
そのまま美己男と女の子は通り過ぎて行く。
彼女?か?
寛太朗はポカンとして2人を見送った。
♪パッポウ パッポウ
という横断歩道の音にハッとして慌てて渡り、 人込みに紛れて行く2人の後ろを追いかける。
女の子のものであろう可愛らしいチャームのついたスポーツバッグをかけている美己男の白い肩が眩しい。声が聞こえにくいのか、背の高い美己男がかがんで女の子のほうに耳を寄せると、女の子が笑顔を美己男に向けた。
みーが?嘘だろ?
今、振り向けば美己男は寛太朗の姿が見えるはずだ。それなのに美己男が振り返る気配はない。ひどく腹立たしい気持ちで2人が角を曲がり姿を消すのを見送る。
それはそうだ。あの顔であの身長、手足も長くスラリとしている。人懐っこくて、笑うとえくぼができて・・。
もてないわけがない
今までそんなこと考えたこともなかったが、よく考えれば当然だ。女に興味ないと勝手に思っていたがはっきりと聞いたわけでもない。
『寛ちゃん大好き』
いつもそう言ってくるからてっきり・・。
てっきり何だ?
キスしてあの白い肩を思い切り掴んで中に押し入り、射精しまくった。そんなことを当然のように美己男にしているのに百花ともつきあっていて、その彼女はほったらかしておきながら、自分の知らない美己男の姿に腹を立てている。
「嬉しそうにしやがって」
照り付ける日差しの下、こめかみから流れ落ちる汗を手の甲で拭いショウウィンドウに写った自分を見た。見つめ返してくる自分の黒い眸 にプイと目を逸らす。
なんでも受け入れてんじゃねーよ
寛太朗は深くキャップを被り直して踵を返すと施設に戻った。
「寛ちゃん」
「ああ、みー」
先週、買い出しに行ってきた色とりどりの花火が並べられているリビングでガリガリと子供たちにかき氷を作っていた寛太朗は振り向いた。
「来たのか」
「うん、バイト先に時々食べに来てくれる職員さんが誘ってくれて」
「あー、そっか」
結局美己男を誘いそびれ、なんとなく沈んでいた気分が急にソワソワとし始める。
「すごいね花火。いっぱい」
「あ、美己男君、来てくれたんだ」
「こんにちはー。お言葉に甘えて遊びに来ちゃいました」
「2人が揃ってるところ見るの、久しぶりだな。すごく懐かしい」
次々と子供たちがかき氷を手にして庭に駆け出して行く。
「寛ちゃん、かき氷、ちょうだーい」
遅れて小柄な子供がやってくると寛太朗の腰にしがみついた。
「ん、待ってな」
寛太朗はガリガリと氷を削って渡した。
「もっとぉ」
「ダメだよ、お前、すぐ腹壊すから。もうすぐカレー食うんだし、これで我慢しときな。早く行かないと、また置いて行かれんぞ」
そう言われて子供は慌てて外へ駆け出して行く。
「小さいね、あの子」
「うん。昔のお前に似てて笑える。すげーノロいんだよ、あいつ」
「ひどい、寛ちゃん」
寛太朗と会話を聞いていた職員が笑う。
「君らも食べてきたら?」
職員がそう声をかけてくれて自分たちのかき氷をゴリゴリと削ると、2人で庭の石段に並んで座った。
「いかにもな夏休みだね、なんかウケる」
「うん、平和」
美己男があはは、と笑う。
「寛ちゃんって、なんだかんだ言って面倒見良いよね」
「別に。夏休みはちょっとだけどバイト代もらえるからその分、労働してるだけ。みーは?毎日バイト?」
「うん、稼ぎ時だから。寛ちゃんも?」
「うん、スーパーとここと」
「そか。寛ちゃんも忙しいんだ。彼女とどっか行ったりしないの?」
美己男が訊いた。
「彼女・・」
「うん、体育館の横で一緒にお弁当食べてるの見た。彼女かなー、って。ちっさくて髪の毛巻いた可愛い子」
「ああ、うん。でも夏休みは全然。忙しいから」
寛太朗は気の無い返事をする。
「お前は?」
「え?」
美己男がキョトンとした顔で寛太朗を見た。
「彼女。先週、一緒に歩いているとこ見た」
美己男が一瞬考えてから笑い出す。
「ああ、あれは彼女じゃないよ」
「そうなの?ずいぶん、仲良さそうに見えたけど」
寛太朗は納得いかずに食い下がった。
「あれは、妹、っていうか、妹になるかもしれない子で」
「妹?お前、妹なんかいたの?」
「いないよ。あの人の彼氏の子供。結婚する、とか言っててさ。んで、最近、時々4人でご飯食べたりしてんだ。先週も食べに行く日で駅まで迎えに行ってた時じゃないかな。なんだ、見かけたんなら声かけてくれたら良かったのに」
呑気に美己男が言った。
「ふーん、そうなんだ」
なんだ、彼女じゃないのか
「そっか、何か楽しそうだったから」
「うん、まだ中学生ですごい良い子なんだー。妹ができたらこんなかな、って思ってちょっと楽しい」
「ふーん」
カバンを持ってやったり、駅まで迎えにいったりして甲斐甲斐しいな、と少し拗ねた気持ちになる。
「寛ちゃん?どしたの?」
「え?いや、みーが兄貴なんて、笑えると思って」
「何でだよー」
「どう考えてもお前の方が頼りないだろ」
「そんなことないよっ。まぁ、寛ちゃんみたいに勉強は教えらんないけど」
美己男の言葉に寛太朗は笑って立ち上がった。
「そっか。ほら、早めにカレー食いに行こ。その後、花火の準備な」
「ん、待って」
美己男が慌ててかき氷を流し込み、後を追ってくるのを待ち切れない気持ちで眺めた。
日が暮れるのを待って、子供たちが次々に花火に火を点け始めた。火薬の匂いの煙が上がり、キャーキャーと花火を手に走り回る。
「みー君、火ぃつけてぇ」
ねだる子供に美己男が火を点けてやっている。
「みー君、打ち上げ花火にも火、点けてこい」
寛太朗はライターを放った。
「ヤダッ、寛ちゃん絶対押すもん」
「しないよ、んなこと。小学生じゃないんだから」
嫌がる美己男をグイグイと押して打ち上げ花火に火をつけさせ、逃げようとする美己男の腕を掴む。
「離せよっ。寛ちゃんっ」
首に手を回して花火の筒に近づけようとした瞬間にポン、と火が飛び出して
「うわ、あっつ」
と美己男が寛太朗にしがみついた。
「こらっ、お兄ちゃん達っ、バカなことしないっ!」
職員に怒られ子供たちが笑う頭上に色とりどりの火花が飛び散る。
「こんなんでもまぁまぁの打ち上げ花火だよな」
寛太朗は空を見上げて言った。
「うん。楽しい。初めて施設に来た夏、寛ちゃんと花火したのもすげー楽しかったの覚えてる」
「何言ってんだよ、お前、ねずみ花火に怖がって最後泣いてたくせに」
次の打ち上げ花火に火を点けながらあはは、と美己男が笑った。
「でも寛ちゃんとなら怖いことも全部楽しいよ」
そう言う美己男の言葉になぜだか欲情してしまう。
「よし、じゃあ、メインイベントいくか」
最後に取っておいたねずみ花火に火を点け、寛太朗はあちこちに放り投げた。子供達がキャーキャーと興奮して逃げ惑う。
「寛ちゃんっ、やりすぎっ」
くるくると回るねずみ花火の中で恐怖に固まっている小柄な子供を抱え上げ、ピョンピョンと跳ねる美己男を見て寛太朗は大笑いした。
「お疲れ様でした」
「お休みなさい」
職員やボランティア達に挨拶をして美己男と寛太朗は施設を出た。2人並んで蒸し暑い夜道をブラブラと歩く。
「あー、めちゃくちゃ面白かった」
「俺も。なんか久しぶりにはしゃいだわ」
寛太朗は高揚した気分で笑った。
「ね、寛ちゃん」
グイと腕を引っ張られよろけて美己男の胸に倒れ込んだ。背の高い美己男が上から唇を押し付けてくる。
「んっ」
寛太朗は美己男を押し返した。
「みー、外っ」
美己男の瞳に電灯の明かりが映って揺れる。
それを見た瞬間さっき押さえ込んだはずの欲情がぶり返し、体中の血が沸騰した。電灯の影になった壁に美己男を押し付け唇をピアスごと吸う。
「ん・・」
興奮して下唇を噛むと、美己男が声を漏らしTシャツを掴んで強く引き寄せた。お互いの唇を貪るように吸いながら、ドクドクと鼓動をぶつけ合う。
「みーの家、知愛子 さんいる?」
「うん、うち、ダメ・・」
「俺んちも、すぐ母さん帰ってくる」
息が上がり、舌が絡まる。
遠くから人の声が聞こえて来てハッと寛太朗は上気した顔を離し、スタスタと歩き始めた。
「あ、寛ちゃん?」
蕩 けた顔の美己男が数歩離れて後をついてくる。
歩いて5分ほどの所で寛太朗は鳥居をくぐり、神社へ続く石段を駆け上がった。
「待って、寛ちゃん」
美己男も走って追いかけて来る。
石段を上がり切り神社の境内に着くと寛太朗は小さなお社の裏手に回り込んだ。
追いかけて来た美己男を抱きとめる。
「ん、寛ちゃん」
柱にもたれて激しくキスをした。
「会いたかったっ、寛ちゃん」
「俺もっ」
美己男のズボンのチャックを降ろすとすでに熱くなっているモノを握る。
美己男も寛太朗のズボンに手の伸ばし下着の中に手を入れた。
「んんっ、ああ、寛ちゃん熱くなってる」
「みー、一緒に擦ってやるから、もっと、こっち」
美己男の腰を引き寄せる。
「んー、擦って、寛ちゃん、ああっ」
グリグリと押し付けて来るモノを寛太朗は自分のものと握り合わせ強くしごいた。
「あ、すげ、みー、トロトロ」
美己男の先端から透明の液がトポトポと溢れ出る。
「あー、きもちっ。どうしよっ」
美己男が強くシャツを掴んで肩に頭を押し付け、汗の匂いと服についた火薬の匂いが混じり合う。息が荒くなり、美己男の頭を強く抱えた。
「寛ちゃん、舐めていい?」
「ん。いいよ、舐めて」
美己男が跪いた。ジュルリと温かい美己男の口に咥えられ、寛太朗の腰がビクリと跳ねる。
「あっ、みー。んっ」
美己男の髪を掴んでなんとか耐えた。
「待って、みー、強すぎ」
「ん、ごめん」
ニュルリと舌が柔らかくなり、ねっとりと絡みついてくるとピアスがツルツルと滑っていく感触が伝わってくる。
「あー、みー、ヤバい。んっ、気持ちいっ」
寛太朗の腰が蕩けて痺れる。
美己男の髪を撫でながら何度も快感で鳥肌が立った。
隅々まで探られ撫でられて、張りつめていたモノがさらに膨張する。
「ん・・、寛ちゃん固い・・」
喉の奥まで入れられて寛太朗は限界まで昇りつめた。
「みー、も、ダメ。離せっ、出るっ」
美己男の髪を掴んで引き離そうとするより一瞬早く、美己男が強く吸った。
「あっ」
腰が跳ね、ビクビクと勢い良く放出する。
「んんっ」
美己男も咥えたまま寛太朗の腰にしがみついた。
甘い倦怠感が体中に広がり座り込みそうになって柱にぐったりと凭れ掛かる。
ゴクリと美己男が喉を鳴らした。
「あ、みー、また飲んだのか?」
寛太朗は美己男の顎を掴んで上を向かせた。
「バカ。その辺に吐き出せよ」
赤く火照った美己男の頬を撫でる。
地面に美己男の精液が飛び散って青い匂いが微かに漂い、美己男はペロリと唇を舐めた。
「吐き出すなんてヤダ」
「ちょっと待ってな」
寛太朗はズボンを上げると境内にある自販機で水を買って来た。
「ほら、これで口、洗って」
「ありがと」
美己男は水を口に含んでごくりと飲んだ。
「だから、ゆすいで吐き出せって」
寛太朗は美己男の頬をギュッと挟む。
「んふっ、やだってば」
美己男は嬉しそうに笑いながら体をのけ反らせた。
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