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高校2年 秋の終わり
学園祭が終わると一気に中間試験モードになり、寛太朗 も時間を惜しんで勉強する毎日だ。
百花 との気まずい半年記念の後、別れ話になるかと思ったがなぜか百花は前よりも親密な空気を出すようになった。先輩寂しそう、に可哀想、が追加されたのだな、と感じたが寛太朗は相変わらず深くは追及しなかった。
昼休みに食堂で作って来てくれた弁当を一緒に食べ、外に出る。百花がなにやら話しながら腕に回してくる手に、寛太朗は身を固くしながら歩いた。
ふいに赤いつなぎ姿の美己男 が他の生徒たちと一緒に笑いながら体育館から出て来るのが見えた。階段を降りて、美己男だけが背を向けて歩き出し、他の生徒たちはこちらに向かって来る。
美己男は作業用ゴーグルをブラブラと手にさげ、遠ざかっていった。
ああ、作業棟に行くのか
寛太朗は美己男の友達たちとすれ違う寸前で百花の手をほどいた。
「先輩?」
百花が寛太朗を見る。
「あ、ごめん。俺、次の授業の準備当番だった。悪いけど先に行くわ」
そう言って百花の顔を見ずに駆け出した。
赤いつなぎの背中が迫ってきて、そのまま美己男を追い越した。
その瞬間、手の甲が触れる。ビクリと美己男が反応する気配がしたが構わず走り抜け旧校舎に飛び込んだ。階段を駆け上がると下から追ってくる足音が聞こえてくる。
3階で待ち受けて、美己男のつなぎの胸元を掴むと壁に押し付け激しく唇を吸った。
「んんっ」
1番奥の教室に美己男のつなぎの胸元を握りしめたままなだれ込み鍵をかける。
「寛ちゃん?どうしたの?」
美己男の髪を掴んで口の中を舐めまわした。
自分でもどうしようもないほど熱く欲望が渦巻いていて止められない。
触れたい
早く挿れたい
寛太朗は張りつめすぎて痛むモノを下着から掴んで出した。
「あー、勃ち過ぎて痛い」
美己男の肩にもたれて寛太朗は呻いた。
「待ってて」
美己男がバタバタとロッカーを開け、コンドームの袋を口に咥え、開けながら戻ってきた。
つなぎを脱ぎ捨てる。
「何でそんなとこに」
寛太朗は自分で握りながら切なく眉を寄せる。
「ここ、みんなヤリ部屋で使ってるでしょ。クラスの子が前にここに隠してるって言ってて。
嵌めたげる。座って」
誰が持ち込んだのかエアベッドが置いてあり、寛太朗はその上に座った。
「寛ちゃん、すごい固くなってる」
「ん・・。ヤベぇ・・」
美己男がゴムをツルツルと嵌めると寛太朗に跨った。
「あ、待て、みー。まだお前・・」
「いいよ、平気。寛ちゃんのほうが辛そう」
美己男がそう言いながら腰を沈めた。
「っつ」
美己男の眉が苦しそうに寄る。
「痛い?」
だがもうすでに半ばまで入ってしまった。
「大丈夫っ。もっときていいよ」
寛太朗は美己男の唇を吸いながら一気に奥まで突いた。
「んんんっ」
強くお互いにしがみつく。
「みー、きついっ」
寛太朗は必死に決壊するのを耐える。
「寛ちゃんっ、俺、ダメっ」
美己男はあっという間に白い液を飛ばした。
寛太朗は繋がったまま美己男を抱えてグルリとベッドに押し倒した。
「ごめん、みー。痛いだろ?」
「大丈夫。寛ちゃんの好きにして」
美己男が寛太朗の眸 を見つめる。
「まだイケる?」
「うん。チューして」
寛太朗はチュク、と美己男がつきだしてきた舌を吸いながら腰を揺すり中を擦った。
「あー、寛ちゃんが擦るの、好きぃ」
美己男が腰を浮かせ身を捩らせる様に寛太朗の全身の血が沸騰する。
「みー、俺もイきたい」
んっ、んっ、と美己男が喉を鳴らす。
「いいよ。寛ちゃんっ、きてっ」
思い切り奥まで突き上げ、美己男としか分かち合えなくなってしまった快感に身体を震わせると寛太朗は奥深くで熱い体液を吐き出した。
「あー、みーの中、やっぱ出る。すげぇ出てる。止まんねぇ」
「ん、全部出して、寛ちゃんっ」
美己男も体を震わせ寛太朗の頭を胸に抱きかかえる。
こんなにも抑えのきかない自分に動揺すると同時に、それも全て受け止める美己男がいることに寛太朗はひどく安心してドクドクと体液を吐き尽くした。
「もうすぐ予鈴だ。行かないと」
このまま眠ってしまいたいぐらいだるい体をノロノロと起こす。
「みー、平気?起きれるか?悪い、乱暴にして」
「ううん、大丈夫。寛ちゃん先に行って。俺、遅刻しても平気だから」
美己男が寝転んだままえくぼをへこませた。
「ん、じゃあ、先行くな」
「大好きだよ、寛ちゃん」
甘えた声でそう言う美己男の頭を撫でて教室を出ると、隣のトイレに入って手を洗い、鏡を見た。鏡の中の顔はまだ上気していて赤い。
予鈴が鳴るのが聞こえて、寛太朗は冷たい水で顔を洗うと急いで廊下に出た。
「先輩?」
その声にギクリと足を止め顔を上げると、目の前に百花がいた。
「百花ちゃん・・。何で・・?」
寛太朗の顎からポタポタと水が垂れる。
「先輩、様子おかしかったから。どうしたんですか。顔、濡れてます」
そう言って百花が1歩踏み出した時、後ろのドアが開く音がした。
「寛ちゃん?まだいたの?」
つなぎに肩を入れながら出て来た美己男の顔も上気して目元が赤い。2人で何をしていたのかが一目瞭然だった。
百花の顔が怯えた表情になり踵を返して走り出す。
「あっ、待って」
鋭く叫んで追いかけようとする美己男の腕を掴んだ。
「みー、待て」
「でもっ、口留めしないとっ。言いふらされちゃうかもっ」
「大丈夫。言いふらしたりしないよ」
「でも・・」
「俺がちゃんとするから。大丈夫」
「あ・・、寛ちゃん、ごめんなさい」
「お前のせいじゃない。俺のせいだから心配すんな」
寛太朗は美己男の瞳を見つめた。
「怖いか?」
美己男が首を横に振る。
「ううん、平気。寛ちゃんと一緒だもん」
「ん。じゃ、俺、行くわ」
寛太朗は階段を駆け下りた。
クソッ
理性が飛んでつい学校で美己男を追いかけてしまったことを激しく後悔する。
校舎の外に出て見回すが百花の姿はもうなかった。
「なー、寛。どうしたの?百花ちゃんと喧嘩した?」
1週間が過ぎて百花と会っていないことに理貴 が気が付いた。
「あー、まぁー」
「何、なんで。とりあえず、謝っちゃえば?な?一緒に謝りに行ってやるからさぁ」
「お前が謝ってどうすんだよ」
然 がいつものように理貴を諭す声に
「いや・・、大丈夫。自分で行くよ」
と寛太朗は答えた。
ちゃんとしなきゃな
みーにもそう約束したし
寛太朗は放課後、百花のクラスに赴いた。
百花が寛太朗の姿を見て、憐憫なのか嫌悪なのか恐怖なのか、よくわからない表情を浮かべる。
「百花ちゃん、少し話せる?」
キャアキャアと小さく声を上げながらこちらを見ている女子たちにチラリと目をやり、
「じゃあ、屋上に行きませんか」
と百花は教室を出た。寛太朗も頷いて後を追う。
「結構寒いですね」
屋上に出ると肩を竦めながら百花が呟いた。
「百花ちゃん、ごめんね。もう百花ちゃんとはつきあえない。本当は最初から断らなきゃいけなかった。ごめん」
寛太朗はそう言った。
「いえ、先輩に最初からその気がなかったのわかってたのに、私が無理矢理付き合って欲しいって言ったから。付き合えば好きになってもらえる自信あったんですけど、上手くいかないし。なんかおかしいなぁ、って思ってて。でも、その理由があれって、さすがに思ってもみませんでした」
百花の声に嫌悪が滲む。
「私と最後までできなかったのもそれが理由ですか?女の人とはできないんですか」
「別に。今はそれ、関係ない」
「そうですか。なんか可哀想。あんな人としかできないなんて」
あんな人?
『あれ』呼ばわり、なのか?
寛太朗の胸に黒いものが沸き上がり口から飛び出す。
「百花ちゃんも可哀想」
え?と小さく言うと百花が寛太朗を見た。
「どういう意味ですか」
「工業科のしかも男に彼氏取られちゃうなんて、百花ちゃんも可哀想だねって」
寛太朗は冷たく言い放った。
百花が目を見開く。
「先輩、サイテー。私より男とヤるほうがいいとか変態じゃん。先輩の目、真っ黒い穴みたいでキモチわるっ」
そう言い捨てると百花は走り去って行った。
しばらくフェンスにもたれて上から1人で歩いて帰って行く百花の姿を目で追う。
最後でつい百花の言葉に過剰に反応してしまったが、あれだけ言えば言いふらす心配もないだろう。
「過剰防衛だったか」
結局、俺は何を守りたかったんだ?
美己男にメールをしようかどうしようか迷いながら携帯を手に取り、また自分が抑えられなくなりそうなのが怖くて結局やめた。
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