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高校3年 爆竹を鳴らす夜

   今日、美己男の誕生日だ  寛太朗は朝起きて一番にそう思った。    夏休みの最後の日。  8月31日。  本来なら必死で勉強しなければならない時期なのに次々と押し寄せてくる出来事に気持ちがついていかない。  頭の中に様々な思いが押し寄せてきて混乱する。      今日、どうしても会いたい  夕方になって家を出た。  ディスカウントショップで花火とライター、ろうそくを買う。  美己男のアルバイトが終わる時間を見計らって店に迎えに行った。 「あれ?寛ちゃん?」  美己男が驚いた顔で寛太朗を見た。 「花火しに行こうぜ。」  買ってきた花火の袋を見せる。 「わぁ、いいね。待ってて、着替えてくる。」  そう言ってえくぼを見せた。 「コンビニ行って、表で待ってるな。」  寛太朗は隣のコンビニに入って二つ入りのショートケーキといちご牛乳を買って外に出た。  ムッと暑い空気が全身を包む。 「お待たせ。どこ行く?」  美己男が店から出て来た。 「横尾川。」  そう言って寛太朗はスタスタと歩き始めた。  川に着くと、向こう岸でも花火をしているのか騒いでいる声と火薬の匂いがする。 「おー、久しぶりだなー。」  寛太朗は声を上げた。  川の近くまでくると空気が少し冷たく水の音が耳に涼しい。 「俺も久しぶり。小5の時、寛ちゃんと来た時以来かも。」  美己男もはしゃいだ声を出した。  川岸のコンクリートの上に座ってガサガサとコンビニの袋を開けた。 「先にこれ食おうぜ。早く食べないと溶けそう。」 「なに?アイス?」  美己男が覗き込む。  寛太朗がポコッと蓋を開けて差し出したショートケーキに驚く。 「何で?ケーキ?」 「お前、今日、誕生日だろ?」 「え?うそ、マジで?」  美己男が寛太朗の手を掴んでケーキに鼻がつきそうなくらい近づき匂いを嗅いだ。 「まだ食うなよ。」  寛太朗は笑いながら美己男の額を押さえた。  18、とろうそくを片方のケーキに突き刺す。 「わぁ、すげ。」  美己男が嬉しそうに笑う。 「願い事とか、やる?」 「やる。」 「んじゃ、どうぞ。」  シュポッとライターの火をろうそくに近づけ、灯した。  美己男の目にユラユラと炎が映る。  しばらく目を閉じてから開けるとフッ、とろうそくの火を吹き消した。 「よし、食お。」 「いただきます。」  二人でケーキを手に持ってかぶりつく。 「うまい。」 「んー、まぁ、悪くないな。」  暑さで溶けかかったクリームがベタベタと手や口につくのも構わず食べる。 「どしたの、急に。」 「えー?別に。子供ん時、お前いっつも夏休みの最後の日で宿題やってなくて、誕生日した ことなかったの思い出したから。」  素直に会いたかったとはなかなか言えない。  あはは、と美己男が口を開けて笑う。 「職員さんにも寛ちゃんにも怒られて、泣いてたなー。」  ん、と美己男にイチゴ牛乳を渡す。  ベタベタする手を川で洗い流して、寛太朗は花火の袋を開けた。    打ち上げ花火から手持ち花火までありとあらゆる種類の花火が入っていた。 「すげー、いっぱい入ってる。ファイヤークラッカーズって何?」 「爆竹。よし、どんどんやろうぜ。」 「待って、寛ちゃん。怖いって!」  美己男の両手に何本も持たせて火を点ける。  シュウーッと音がして次々に火が吹き始めた。 「あっつい、寛ちゃんっ。」  ぎゃはは、と笑いながら逃げ惑う。  小さな打ち上げ花火からも意外と大きな火柱が上がり出す。 「うわ、結構でかい。」  そう言いながら見ている美己男の足元にねずみ花火を放り投げた。  シュルシュルと回りながら美己男の足元を這いまわり、パンッと弾ける。  寛太朗は次々とねずみ花火に火を点けて足元に放り投げた。 「わっ、わっ、やめろっ。」  美己男が足を上げて逃げ惑うのを腹を抱えて笑って見る。 「ほんと、みー、おもしれぇ。」  最後に爆竹に火を点けて足元に投げた。  パンパンパンパンパン  と盛大に音がなり、火花が散る。 「わあああああ、寛ちゃんっ!」  美己男が大声で叫ぶ。 「何すんだよっ。」  爆竹の火花から飛んで逃げてきて寛太朗に抱き着いた。  ハァハァと息が上がって、汗ばんでいる美己男の体を寛太朗は受け止めた。  どちらからともなく笑い出す。  笑いながら顔を寄せて唇を合わせた。 「ねぇ、今日、ホテル行こうよ。」  美己男が寛太朗の瞳を覗き込んで言う。 「いいよ。今日はお前の誕生日だもんな。」 「じゃあ、ラブホに泊まりたい。朝までしよ。」 「わかった。」  二人で河原を掃除して、横尾川を後にした。 「もっといいホテル、予約しとけばよかったな。」  ありふれたラブホテルに二人で入る。  外観はいかにもな雰囲気だったが、中は意外とモダンでおしゃれな部屋だ。 「ううん、十分。」 「じゃあ、来年は予約な。」 「一緒に風呂入ろっ。映画みたいな泡風呂にして。」 「どうぞ、何でも。」  美己男がバスタブに湯を張り、備え付けのバスソープを入れた。  モクモクと泡が立つ。 「うわ、すげっ。」  寛太朗は部屋で服を全部脱ぎ捨て、片手にコンビニで買った安いシャンパンを持って全裸で浴室にいる美己男に後ろから抱きついた。 「寛ちゃん?」  驚いて振り向いた美己男の細い顎を掴んで深くキスをする。 「んっ。」  美己男が首に手を回してすぐに応える。  お互いの唾液を飲み込みながら、美己男も服を脱いで全裸になった。  ダバダバと浴槽から湯が溢れる。  慌てて蛇口を閉めモクモクと盛り上がった泡の中に二人で入ると泡が溢れてフワフワと飛びまわった。  寛太朗は浴槽の中で美己男を後ろから抱いてポン、とシャンパンの蓋を開けた。    あはは、と美己男が子供みたいに口を開けてはしゃいだ笑い声をあげる。 「はは、すご。ほんとにエロビデオみたい。」  美己男がシャンパンの瓶に口をつけてグビ、と飲んだ。  寛太朗も瓶に口をつけて飲む。 「何、エロビデオって。寛ちゃん、そんなの見てんの?」 「たまに。」 「ゲイビ?」 「いや、普通の。」 「え?そうなの?」 「え?みーはゲイビ見てんの?」 「いや、見てない。」 「絶対見てんじゃん。」  寛太朗が後ろから耳のピアスを口に含む。 「見てないって。」  美己男がムキになる。 「いいよ、別に、見ても。」  耳を舐められて美己男の腰がヒクリと揺れる。 「寛ちゃんてさ、女の子としてるよね。」 「ん、まぁ。」 「寛ちゃんてバイなの?」  寛太朗は耳を離して美己男の頭に顎を乗せた。 「んー、どうかな。男は美己男としかしたことない。でも、俺、女としても最後までイッた ことがない。」  ん?と美己男が首をひねって寛太朗を見た。 「どういう意味?」 「俺、女とセックスしても射精できないんだよ。出るのはみーとする時だけ。 か、自分でやる時。」 「それ、マジ?」 「うん。遅漏?ってやつかと思ったけど、お前とするとすぐ出るから違った。」  美己男が小鼻を膨らませた。 「じゃあ、今日いっぱいしよ。全部出して、俺に。」 「ん。朝まで、な。」  美己男を向かい合わせて膝に乗せる。  喉の奥まで届きそうな深いキスをした。 「寛ちゃんのほくろエロい。俺、このほくろ好き。」  美己男が手を伸ばして寛太朗の右眉に触れた。 「え?これ?エロいか?」  寛太朗は笑った。 「うん、エロい。寛ちゃん、時々わざとそれ、見せる時あるでしょ。 みんなぽーっとなってさ、それ見るんだよね。」 「なんだ、バレてたのか。」 「うん。俺も見てたもん。」  美己男も笑う。 「もう勃ってる。」 「うん、ビンビン。」  泡の下でお互いを握り合い、手を重ね擦り合わせる。 「あ、寛ちゃん・・。」 「みー、待って。これ以上擦ったら出る。」 「うん、一回出す?」 「ダメ、無駄打ちしたくない。今日は全部、みーの中で出す。」  顔を見合わせて笑う。 「うん。先、出てて。準備してから行く。」  美己男に言われて寛太朗は浴槽を出た。  裸のまま、ベッドに横になる。  ひんやりしたシーツが火照った体に気持ちが良い。  美己男がシャンパンの瓶を片手に浴室から出て来てベッドに上がろうとしてよろけた。 「おっと。」  寛太朗は美己男を抱きとめた。 「平気?逆上せた?」  白い肌がピンク色に染まっている。 「んー、ちょっと。」  美己男は膝の上に乗ってグビグビとシャンパンを飲んだ。 「俺にも飲ませて。」  美己男が口に含んで寛太朗に唇を押し付けると舌と一緒にシャンパンが喉に流れ込む。  ジュルリと音を立てて舌を吸った。  顔を離すとまた美己男がグビと瓶を傾けて飲む。  口の端からタラタラと溢れて顎を濡らした。 「もう飲むなって。そんなに飲んだら朝までもたないぞ。」  喉元に垂れて来たしずくを舌先ですくい取りシャンパンと一緒に乳首を口に含む。  ビクリと美己男の体が震えた。  甘噛みしながら舌先で撫でる。 「あ、んん、寛ちゃん、今日、ゴム無しでして。」  寛太朗の頭を抱えながら美己男がねだった。 「え?いいの?生でして?」  顔を上げた寛太朗に美己男が顔を寄せる。  柔らかい髪が顔にかかってくすぐったい。  ムギュ、と唇が押し付けられた。 「今日、俺の好きにしていいんだよね?」 「いいけど。」 「今日の俺の誕生日の願いごと、叶えて。今日は寛ちゃんの恋人にして。」  美己男の目が潤む。 「わかった。俺も、みーとゴム無しでしたい。中出しも?いい?」 「うん、全部、中で出して。寛ちゃんの全部が欲しい。」 「他には?」 「最初は寛ちゃんが上でして。」 「ん。わかった。」  美己男の腰を抱いてゆっくり態勢を変え、美己男をベッドに寝かせる。  寛太朗は中指を口に含んでからゆっくりと下をなで指を入れた。 「あっ、ん。」  美己男の腰が持ち上がる。 「みー、かわいい。」  美己男の目に涙が浮かぶ。 「寛ちゃん、大好き。ずっと好き。」  いつもの虐めるようなキスではなくて、チュ、チュと何度も唇を合わせるだけのキスを する。 「ごめん、我慢できない、入れていい?」  寛太朗が囁く。 「ん・・、頂戴。早く、欲しい。」  美己男の目を見ながらゆっくりと入れた。  美己男の目が見開かれる。  熱い襞に包まれる。 「あ、寛ちゃん、すご、固いっ。」 「みー、あー、ヤバ。あっつ。ナマ、やばいっ。」  ズズズと奥に入っていく感触に鳥肌がたち、快感が腰から全身を這い上がる。  その度に美己男の体がビクビクと震える。  あっ、あっ、と声が漏れる。  奥まで入ると、ゆっくりと腰を動かした。  襞の全部が寛太朗を捉えようとするかのようにまとわりつく。  膝の後ろを持ち上げて寛太朗のモノを全て美己男の中に収めて接合部をピタリと合わせる。    そのままグリグリと奥を探るようにかき回した。  何もかもが隙間なく合わさり蕩け合う。 「寛ちゃん?」 「ん?」 「大好き。」  蕩けた顔が寛太朗を見つめる。 「ん。俺も、みーのこと好きだよ。」 「もっかい言って。」 「みーのこと、すげー好き。」 「もっかい。」 「みー、大好き。」    美己男がうー、と泣き出す。 「嬉しい、寛ちゃん初めて言ってくれた。」 「言わなくても分かってたろ?」 「でも寛ちゃん、ノンケだし、俺と同じ意味での好きじゃないって思ってっ。」 「何だよ、じゃあ何で今まで、俺とセックスしてたの。」 「だって、俺は寛ちゃん大好きだもん。いつだってして欲しかった。」  寛太朗は一番奥まで入れるとゆっくりと動いた。 「最後まで俺をイかせてくれんの、みーだけだよ。ほら、ここ。わかる? 俺の先っぽ、みーの一番奥にいるの。」 「あ、はぁっ、わかるっ、寛ちゃ、先、俺の中ぁ。あ、どうしよ。溺れるっ。」  トン、トンと奥を何回か叩くと美己男が腰を反らせブルブルと体を震せ始めた。  一番奥がさらに少し先まで寛太朗を飲み込もうとする。  のけ反らせた喉元から赤みが広がってきてヒクヒクと腹筋が波打つ。 「みー、飛ぶなよ。息しろ。中イキ、きた?」 「ん。待って、今。イッてる・・。」  美己男の中がグニグニと蠕動して寛太朗をギュウギュウと締める。  美己男の赤く染まった喉がゴクリと動く。  寛太朗は顎から汗を滴らせながらしばらくその美しい姿に見惚れた。 「ごめん、みー。イかせて。」  寛太朗は我慢できずに動き始めた。 「寛ちゃん、いい、出して、一番奥で。全部中でっ。」  寛太朗は激しく奥を突いた。何度か突くとすぐに爆発寸前まで高まる。 「みー、イクッ。」 「んっ。」  美己男の中で何もかもが決壊する。 「あー、やばいっ、ナマ、きもちっ。止まんねっ。」  ドクドクと血管まで破裂しそうに脈打つ。 「寛ちゃんっ。」  美己男も顔に飛ぶほどの勢いで白濁した液を放出した。 「んー、んんっ、大好きぃっ、寛ちゃんっ。」  ハァハァと肺一杯に空気を吸いながら寛太朗は美己男の胸に突っ伏した。  しばらく動けないほどの甘いだるさ。  汗で濡れた鼻を美己男の耳に擦りつけた。  ハァッ、ハアッ、と美己男も胸を激しく上下させている。 「すごい破壊力だな。」 「んー、めちゃくちゃ感じる。」  寛太朗が腰を引こうとするのを美己男が足を絡めて引き寄せる。 「待って、抜かないで。中にいて。」 「ん、じゃあ、このまま、横になって。」  繋がったまま、抱き合って横になる。  しばらく息を弾ませながら額を擦り合わせた。 「ね、俺と初めてする前に女の人とした?」 「うん。」 「その時、イかなかったの?」  美己男が聞いた。 「ああ、うん。途中でダメんなった。」 「気持ち良くなかった?」 「うん。いつの間にか萎えてて。んで、気持ち悪くてシャワーで洗ったら出た。」 「マジで。あはは、洗って出るってウケる。」  美己男が笑う振動が伝わってきてこそばゆい。 「その後は?みんな途中でダメだったの?」 「んー?いや、その次は最後まで持つようになったけど、今度は最後出なくなっちゃって。」  ふーん、と美己男がおもしろそうに寛太朗を見ている。 「ネットで色々調べたら、射精障害っていうのがあって、遅漏かなぁ、って思い始めて。」 「でも、俺としたら出た?」 「うん、みーが殴られて家来た時あったろ?あの時、初めて出た。」 「何か嬉しい。」  美己男が笑う。  その振動が寛太朗を刺激して中でピクリと反応する。 「あの子は?百花ちゃん。結構うまくいってたじゃん。」 「うまくはいってなかったよ、全然。」 「エッチしなかったの?」 「したけど、やっぱり最後までいけなかった。」 「どのくらい付き合ってたっけ。」 「半年ちょっと。半年記念してやれって理貴に言われて、高いジュース買って家に行ったわ、そういえば。」 「ええ?高いジュース?」  寛太朗は思い出して笑った。 「そうそう。あの頃さ、俺、高級スーパーで働いてただろ?で、パートの奥さんに相談したんだよ。そしたら、すんごい高いオレンジジュースお勧めされて、それ買って持って行った。」  美己男が吹き出す。 「何それ。ウケるんだけど。」 「すげー高かったんだぞ。一本1000円ぐらいするオーガニックのオレンジジュース でさ。」 「嘘でしょ、1000円っ!?」  美己男が驚くと中もギュッと締まる。 「あ、バカ、急に締めんなよ。」  寛太朗は慌てて腰を引き寄せた。 「あ、ごめん。びっくりして。そんな高いジュースあんの!?」  美己男が足を絡ませ直す。  ゆるゆると包まれていて気持ちがいい。  美己男の腰に手を回して滑らかな尻を撫でる。 「俺もびっくりしてさ。でも人気があるって言われて。持って行ったらすげー喜んでた。」 「寛ちゃん飲んだの?」 「うん、その時、ケーキと一緒に出してくれて飲んだ。」 「おいしかった?」 「それがすんごい酸っぱくて苦くて。帰る途中で道端で全部ゲロッた。」 「え?何て?」  美己男が目を見開いて聞き返す。 「気持ち悪くなって帰りに全部吐いた。」 「嘘でしょ!?寛ちゃんサイテー。もったいねっ。」  美己男が爆笑する。 「もったいないとかそういう問題か?」 「だって1000円のジュースだよ。バイト一時間分だよ。」  寛太朗も思わず笑った。 「そうだけど。イチゴ牛乳のほうがうまいよ、俺には。」  美己男がムニュと唇を押し付けてくる。 「寛ちゃん、やっす。」  寛太朗は美己男の唇を追いかけた。 「うるせー。」  ゆっくりと美己男が繋がったまま、起き上がり寛太朗に跨る。 「俺も、絶対イチゴ牛乳がいいな。」  美己男の綺麗な顔が見下ろす。  美己男が寛太朗の胸に唇を寄せ、チュと音を立てる。  音が鳴ると赤い髪が寛太朗の胸の上で揺れた。  美己男の髪を撫でる。  チュ、チュと胸に音を立ててキスをする度、腰に甘い痺れが走る。 「理貴さんの前で俺といつもしたいって言ってくれたの、ほんと?」  美己男が上目づかいで乳首にチュと音を立ててキスをする。 「ほんとだよ。学校で我慢できなくてみーを追いかけた。百花といたのに。」  美己男の舌がヌルリと乳首を這う。 「んっ、お前見たら頭ぶっとんじゃって、ヤりたくてたまらなくなった。」 「うん。あの日、寛ちゃん、急にチューしてきて。体、火の玉みたいに熱くて強くて、アソコすげぇ固くて。つらそうに眉寄せてんの、めちゃくちゃエロかった。俺も超興奮した。」  舌先が肌の上を滑り口の中のピアスがコロコロと転がる。  完全に美己男の中でまた勃起する。 「気持ちい?」 「んっ、いいよ。」  反対の乳首をつままれて寛太朗の体が悶える。  両方の乳首をコリコリと指と舌先でひっかかれて腰がビクリと跳ねた。  美己男が体を起こして深く沈む。  チロリ、と舌が出てピアスが覗いては唇の中に入っていく様がそそる。 「あ・・、寛ちゃん、またおっきくなった。」 「んー、みー。こすりたい、ナカ。今日、気持ち良すぎる。」  美己男が腰を揺する。  寛太朗は美己男の腰を掴んで起き上がった。  美己男が後ろに手を突く。 「あっ、ん、俺も、寛ちゃん、今日固くてっ俺ん中、いっぱいっ。」  寛太朗の両手に体重を預けてさらに深く繋がる。 「あー、寛ちゃん、奥、触って、もっと。」  腰を掴んでこれ以上ないくらいに引き寄せた。  もう接合部はぐちゃぐちゃだ。  深く差し込む度にクチュクチュと音を立てる。 「みー、エロすぎ。」  首元に吸い付く。 「んー、もっと、強くっ、吸ってっ。寛ちゃんの跡、つけてっ。」  美己男が寛太朗の頭を抱えた。  思い切り美己男の白い肌を吸う。  赤い斑点がにじむように浮き上がってくる。 「俺のっ、みー。」  寛太朗は波に飲み込まれるように、美己男の中にのめり込んでまた白い液を吐き出した。  朝まで二人はドロドロに一つに溶け合うまで抱き合った。    美己男は体を引きずるようにして歩いている。 「大丈夫か?みー。ほんとに朝までするか、普通。」 「寛ちゃん、絶倫なんだもん。」 「バカっ、外で言うな。」 「否定しないんだ。」  二人で笑う。  寛太朗も体がだるくてたまらない。 「平気。帰って爆睡する。」 「今日、始業式。」 「俺、休んでも平気だもん。」 「ええ?マジかっ。」  分かれ道に来て立ち止った。 「じゃあね、寛ちゃん。」 「ん、また明日、学校でな。」  寛太朗は頷いた。 「寛ちゃん。」  美己男が抱き着いてきた。 「おい、外ではダメだって。」 「誰もいないよ、平気。」  ムニュ、と唇を押し付けてくる。 「最高の誕生日だった。迎えにきてくれたことも、ケーキも、花火も、エッチも、キスマも、好きって言ってくれたことも全部、嬉しかった。ありがとう、寛ちゃん。ずっと大好き。」  もう一度、今度は深いキスを交わす。 「じゃあねー。」  と美己男は手を振って帰って行った。    その日、美己男と知愛子はいなくなった。 「藍田君、ちょっとお話できますか。」  始業式が終わり、下校しようとしている時に工業科の教諭の張間が声をかけてきた。  その真剣な顔に寛太朗は嫌な予感がした。 「はい。」  張間の後について作業室に入る。 「尾縣君が昨日付けで退学をしたのですが、理由を知っていたら教えてもらえませんか?」  そう聞かれた。 「は?何て言いました?」  よく意味が理解できなくて聞き返す。  張間は驚いた様子で寛太朗を見た。 「藍田君、もしかして知らなかった?尾縣君が退学したんです。」 「退学・・?」      退学って? 「それは・・、学校を辞めたってこと?ですか?」  我ながら間抜けな質問だ。 「そうですね、そういうことです。藍田君には知らせてなかったんですね。」  張間がじっと寛太朗を見る。 「あー、知りませんでした。昨日会いましたけど、何も言ってなかった。 いつも通りで・・。」      いや、いつも通りだったか?    そういえば、最後にいつもよりしつこくまとわりついてきて    来年の誕生日の話にのってこなくて、あれ?と思った気がする      あれは昨日?    いや正確には今朝まで腕の中にいて・・    寛太朗は額に手を当てた。 「いえ、何か、変だったかも。あいつ、でも何も言わなかった。」 「そうですか、藍田君にも言えないほどの事情ですね、きっと。」  張間が沈んだ声で言う。 「言えないほど?それって。」 「いえ、今はまだ何もわかりません。しばらく様子をみましょう。私も、少し事情を聞いて みますから。」  張間の言葉に気もそぞろに頷いた。  寛太朗はすぐにその足で美己男と知愛子が住む文化住宅へと向かった。 「美己男??知愛子さん?」  ドンドンと部屋のドアを叩く。  ノブを回してみるが開かない。  郵便受けにチラシやら封筒が突き刺さっている。  いくつかの封筒が床に落ちており、〇〇ファイナンスや〇〇金融、という文字が見えた。      借金・・。闇金?    寛太朗は郵便受けから封筒を抜き出して次々と見た。  知愛子の名前の中に美己男の名前もある。      あいつが借金?    いや、美己男の名前を使ったのか 「何だよ、クソ親がっ。」  ガツッとドアを蹴飛ばし、しゃがみこんだ      やばくなったら逃げて来いって言ったのに    あんな母親、早く捨てろって言ったのに    結局、置いていかれたのは俺か・・    寛太朗は拳でグイと目を擦った。

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