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第3話
―どれくらい、二人でそうしていただろう。彼はゆっくりと、静かに、ぽつぽつと、彼のこれまでを話してくれた。正直、なんと返せばいいか分からなかった。俺が知っている言葉を総動員したところで、彼の傷を撫でることすら出来ないのではないかと思う。彼を抱きしめる腕の上に、ぽつりと垂れる雫たち。それは、彼が抱えきれなかった叫び声の形をしていた。
「…ねえ、新太朗さんは、知ってた?」
彼は俺の腕を優しくすり抜け、一歩一歩海の中へ足を進めた。そしてゆっくりとこちらへ振り返る。彼の目元は真っ赤に腫れ、絶えず涙が溢れていた。
「くらげって死ぬと海に溶けちゃうんだって。それで、誰にも見つからないまま消えていくんだ。俺もくらげだったらよかったのにね。そうしたら死体も見つからないし、みんなに迷惑かけることもない…。どうして光輝と一緒に死んであげられなかったんだろう…っ俺には光輝しかいなくて、光輝にも俺しかいなかったのに……っ‼」
彼の流す涙が、海に溶けて消えていく。それはまるで、死んでいくくらげのようだとぼんやり思った。そして俺の足も、ゆっくりと海の中へ進んでいく。そして、腕の中に震える少年を抱き寄せた。
「しん、たろ…さん……?」
「母さんが死んで、どうして俺が家に戻らなきゃならないんだと思った。俺は家族の誰とも血が繋がってないんだよ」
「……え……?」
「父さんは二回目の結婚で、俺は一回目に結婚した人の連れ子なんだ。俺を産んだ母さんは浮気して出て行ったけど、父さんは俺を引き取ってくれた。それには感謝してる。でもすぐ再婚して、三人子どもが出来て、俺には居場所なんてなかったな」
母親が死んだと聞かされて帰ったあの日、俺を見た虎とうさの顔を、忘れることが出来ない。どうして今更戻ってきたんだろう、そんな声が聞こえてくるようだった。俺だって戻りたくて戻ってきたんじゃないよ。でも、父さんへの恩を返したい。それだけの思いで戻ってきた俺が、あの子たちと上手くやっていくなんて、どだい無理な話だった。あの子たちは一生懸命歩み寄ってくれようとしていたし、俺も頑張っていたけれど、五年という歳月は、俺たちを本当の他人にするには十分だった。
「……俺はずっと心のどこかで、いつ死んでもいいと思って生きてたから。もし、朝が死にたいって言うなら、俺も一緒に死んであげる。心中しようよ、朝」
今までにないくらい強い力で、彼のことを抱きしめる。冗談で言っているんじゃない。本当に、今ここで死んでしまっても構わない。この少年を一人で死なせたら、俺は一生そのことに捕らわれると、分かっていたから。
「しん、たろさん……」
「なあに」
「お、れ、俺……っ」
「しーんちゃあああん! あーさちゃああん‼」
耳をつんざく大きな声が、浜辺に響き渡る。驚いて声の方へ顔を向けると、そこにはうさと、虎が立っていた。
「うさ⁉ 虎も!」
うさは俺たちを見つけるなり勢いよく駆け出し海に入ろうとしたため、大慌てで駆け寄り抱き留める。
「やめろやめろ!溺れるぞバカ!」
「……やだ」
「やだ⁉」
「しんじゃやだあぁああ」
顔を真っ赤にして、大粒の涙を流すうさ。その様子を見て、俺も朝くんも、思わず固まってしまった。
「やだああ! やだやだやだ‼」
「お、おい、おちつ、落ち着けうさ。大丈夫、死なない、死なないから」
「ママみたいにいなくなるんだ! うさのことなんてどうでもいいんだ‼」
「うさ……」
「……とりあえずみんな海から出て、帰ろうよ」
「虎」
大泣きするうさの肩を叩いて、虎はゆっくりと朝くんへ視線を投げかけた。
「石田さん、すいません。学校に警察が来たから話しました。これからうちに、警察と……石田さんのお母さんが来るから。一緒に帰りましょう」
虎からの問いかけに、固まって動かなくなる朝くん。俺もどうしていいかは分からなかったが、ゆっくりと彼の手を引き寄せた。
「…さっきの約束は、一生有効だから。とりあえず、帰ろう」
俺の言葉を受け取り、彼の瞳がキラリと光る。そして小さく頷き、俺の手を握り返した。
「うさ、虎、ごめんな。みんなで帰ろう」
―四人で手を繋いで家まで帰ると、自宅の前にはパトカーが一台止まっていて、俺たちを見つけるや否や、中から警察官が二人出てきた。
「石田朝さんですね?」
「……はい。逃げ出したりして、ごめんなさい」
「浜田さんが自殺であることは、検証の結果で明らかになっています。石田さんに聞きたいことは、なぜ彼が自殺するまで追い詰められたのか、自殺理由に関して彼から聞いた話を証言して欲しいんです。今、浜田さんの両親にも事情聴取をしており、こちらは恐らく逮捕されると思います」
「……あの、光里さん…光輝のお姉さんは…?」
「飛行機でかなり遠方に移動していましたが、事情を説明したところ、すぐ戻ってきてくれましたよ。こちらも今事情聴取中です。あなたに会いたいと、言っていました」
警察の話を聞き、朝くんの表情がうっすら和らぐ。きっと心配していたことの一つだったんだろう。
「あの、高盛さんでいらっしゃいますか」
「はい。すいません、僕が保護していたのにすぐご連絡できず」
「いえ、事情が特殊でしたので。ご協力感謝致します。その、不躾で申し訳ないのですがお部屋をお借りしてもよろしいでしょうか。お母様が、朝さんとお話しされたいそうで」
その言葉を受け、車から一人の女性が降りてくる。一目見て分かった。この人が朝くんの母親だと。それくらい、二人の顔はよく似ていた。
「……部屋はいいです。立ち話で結構なので」
「あの。すいません、高盛新太朗と申します。朝くんを保護していました。ご連絡が遅くなってしまい申し訳ありません」
「構いません。その子はスマホを持っていないですし、私の番号も知らないので、連絡のしようもなかったと思います」
ここまで来ると、親子と言えるのかも怪しい関係。実際朝くんは、母親が目の前に現れても一度も目を合わせようとはしていない。
「あの家は、引っ越す。血まみれでどうにもならなかったから。修繕費とかは、向こうの親と不動産がやり取りしてくれる」
「…それじゃあ……」
「私は行く当てがあるからいいけど、あんたはどうするの」
それは暗に、もう一緒には暮らせないと告げているのだろう。しかし朝くんは学生で未成年。親元から離れて暮らすのはどう考えても現実的ではなかった。
「……私はどうやってもあなたを愛してあげられない。産みたくなかったけど、お金もないし、誰にも言えなくて、堕ろせないところまで来たから産んだだけ。でも、もう、十分でしょ……っもう、自由にしてよ……っ!」
目に涙を溜め、目の前の息子を睨み付ける顔は、やはり母親のものではない。この人の時は、朝くんを出産したその日から止まったままなのだろう。母親も息子も無言のまま、どちらも口をつぐんでいる。俺はたまらず、口を開いた。
「じゃあ、卒業までうちで預かります」
「……は?」
二人とも、きょとんとした顔で、きょとんとした声を出しながら俺を見つめる。その顔を見ると本当に親子なんだなと虚しくなるが、俺は構わず母親に向かって話を続けた。
「卒業まで、うちで預かります。連絡先を教えてください。何かあれば連絡を取れる状態なら、構わないでしょう?」
警察官へ視線を投げると「親の許可が出ていることなら、口出しをすることではないので」と返された。母親は目を見開いていて、言葉に悩んでいるように見える。
「……なんで、赤の他人でしょ」
「大人は、子どもを守ってやるのが仕事なんで。それをあなたが放棄するなら、俺がやりますよ」
唇を噛みしめて、言葉を飲み込んでいるのが分かる。二人はもう、離れた方がいいんだ。
「……俺、新太朗さんのところに行くよ」
「朝くん」
「……救急車、呼んでくれてありがとう。俺を、追い出さないでくれて、ありがとう。ありがとう、母さん」
母さん、という言葉を受け取り、母親は静かに俯く。そしてそのまま踵を返し、背中を向けた。
「……荷物、まとめておく。明日までに取りに来て」
そして一度も振り返ることなく歩き出し、姿が見えなくなったところで、警察官が口を開いた。
「このまま一度、署にご同行願えますか?」
「俺が一緒に行きます。虎、悪いけどうさと留守番頼む」
「分かった」
「新ちゃん、朝ちゃん、かえってくるよね?」
不安そうな瞳で、俺と朝くんの手を握る。こんなに小さな子どもに心配を掛けて、情けないったらないな。
「うん、約束するよ、うさ」
「……俺も。約束」
朝くんはゆっくり屈んでうさと視線を合わせ、優しく抱きしめる。それは、俺が見た限りでは、朝くんが初めてうさに寄り添った光景だった。背中に腕を回し、安心した表情を浮かべているうさを見て、なんだか泣きそうになってしまう。
「いってらっしゃい。新ちゃん、朝ちゃん」
「おう、行ってきます」
「行ってきます」
朝くんの手を引いて、パトカーへ乗込む。警察署へ走る間、俺たちはずっと手を握ったまま、会話することもなく、静かに外の景色を眺めていた。
それから俺たちは別室に案内され、俺は朝くんを発見してから今日に至るまでのことを細かく説明していく。保護者への連絡をためらっていたことについては、本人のスマホがなかったこと、連絡を拒否していたことから虐待の可能性を考えていたことなどを伝えた。出来ればすぐ警察に連絡して欲しかったですがねと小言を言われ、俺は比較的すぐ解放される。廊下のベンチに腰掛けて座っていると、朝くんが通された部屋へ一人の女性が入室していった。その横顔を見た時、ふと口から出ていた言葉。
「……光里さん……?」
女性はふとこちらへ振り向き、軽く会釈して扉へ吸い込まれていった。
「ちゃんと、話が出来るといいね。朝くん」
俺は朝くんを待つ間、仕事先や虎たちに連絡を入れる。仕事先には納期の相談、虎たちには、まだ帰れそうにないので早めに出前を頼むようにという連絡。その後三十分ほどぼうっとしていると、扉が開く音がした。朝くんだろうかと立ち上がると、現れたのは先ほどの女性だった。
「高盛新太朗さんですか」
「え、あ、は、はい!」
「浜田光里です。この度はご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「そ、そんな。俺は何も」
「……私が出て行けば、光輝がどんな目に遭うか想像出来なかったわけではありませんでした。でも、お腹に子どもがいると分かったら、もうあの場所にはいられなかったんです」
俯きながら、ぽつぽつと話し始める。俺も全てを知っているわけではない。それでもこの人が過去にどれだけ苦しい思いをしてきたのか、ほんの少し想像することは出来る。だからこそ、この人を責めることは出来なかった。
「誰にも悟られずに、いつもと同じように家を出て仕事に送迎される途中で夫と逃げました。車を乗り捨てて、飛行機に乗って」
「どこまで飛んだんです?」
「とりあえず札幌まで。そのあと海外へ行く予定でした」
「それでも、ここへ戻ってきてくれたんですね」
「……あの子が、自殺を選ぶとは思わなかった。でもそうですよね。本当なら自殺を選ぶくらいのことを私はずっと受けていたんだなと思ったら、本当に、なんてことをしてしまったんだろうって。あの子も連れて逃げるべきだった……っ」
俯き、両手で顔を覆う。その隙間から流れ出る涙。この人はきっと、自分が弟を死に追いやったと思っているんだろう。
「光輝くんを置いて行った理由は、朝くんですか?」
「……そう、ですね。あの子が朝くんに執着してるのは分かっていたから、事情を話してもついてくるとは思わなかったし、誰かに話して計画が漏れることは避けたかったので」
「朝くんと、どんな話をしたんですか?」
「……逃げられて、良かったって。死ぬ前、光輝は、私を恨んでいない、責めていないって。でも、それでも…っ」
「……それでも、あなたはお母さんになるんでしょう?」
俺の問いかけに、彼女ははっと顔を上げる。俺は光輝くんの顔を知らないけれど、彼女のような美しい人だったんだろうか。
「お母さんになることを選んだなら、泣いてばかりいてはダメですよ。お腹の子はきっと、笑ったお母さんと一緒にいたいだろうから」
「……私に、幸せになる権利があるんでしょうか」
「それは分からないです。でも、あなたが幸せになることを拒むなら、子どもを幸せにしてあげてください。朝くんも、あなたが幸せじゃないと、ずっと心配だろうから」
「……産まれたら、連絡してもいいでしょうか」
「もちろん、俺でよかったら!」
光里さんと連絡先を交換し、会釈をして別れる。廊下の向こうには、優しそうな顔の男性が立っていて、光里さんの肩を抱き寄せて歩いて行く。あの人がいるなら、きっと光里さんは大丈夫だろうと、心から安堵した。
「…新太朗さん」
「朝くん!お疲れ様、長かったね」
「…あの、これ」
彼の手に握られていたのは、一台のスマートフォンだった。
「これは?」
「……光輝の、遺品……」
警察が渡してくれたのか、光里さんが渡してくれたのかは分からない。でも彼は、小さな一枚の板になって、愛しい人の元に戻ってきたのだと感じた。
「中身、見るの?」
「わかんない。パスワード掛かってるし」
「朝くんなら解除出来そうだけどね!」
「…もし解除出来たら、新太朗さん、一緒に見てくれる?」
「ええ、俺でいいの?」
「…新太朗さんが、いいんだよ」
小さく裾を掴んだ彼の指先は震えている。目の前で亡くした、たった一人の好きな人。好きな人の欠片を感じられる唯一の物。俺がそれを手にした時、向き合えるかと聞かれたら自信がない。その自信に少しでもなれるなら。
「じゃあその時が来たら、一緒に見よう」
「…ありがとう、新太朗さん」
「じゃあ帰ろうか。朝くん何食べたい?」
「お腹全然空いてないよ…」
「だーめ、こういう時こそなんか食べる!そうだ、虎にお願いして寿司出前してもらおーっと」
「そんな高い物頼んでいいの…⁉」
「こういう日に食べないでいつ食べるんだよ!朝くんは何が好き?」
「…た、たまご?」
「あはは!嘘だね、マグロだね!」
「た、食べたことないんだよっ」
「マジで⁉ よし、たらふく食べような!」
朝くんの手を握り、タクシーを呼んで家までの道を走っていく。その時、今更ながら気になったことがあった。
「光輝くんの両親は、どうなるんだろうね」
「逮捕されるって言ってたよ。光輝と光里さんだけじゃなくて、色々、よくないことしてたみたいだから。ここに引っ越して来たのも、東京よりバレにくくてやりやすいとかだったみたい。俺も、詳しいことは教えてもらえなかった」
「そっか…」
「…でも、光里さんが怖い思いをすることはないって。それだけ分かれば、十分だから」
窓の外を見つめる彼の目は赤く腫れていて、でも、どこかスッキリしているようにも見える。それから目を数回こすったあと、朝くんは舟をこぎ出し、俺の肩へ追突した。
「……おやすみ。頑張ったね、朝」
それからタクシーは自宅に到着し、テーブルには寿司が並んでいた。朝くんは「本物のお寿司だ…!」と驚きの表情をあげていて、思わず笑ってしまう。みんな、今日あったことはあえて話さなかった。ただ、これから朝くんがうちで生活することになった、それをみんなで喜んだ。
「朝ちゃんのおへやはどうするの?うさといっしょにする?」
「それじゃ狭いだろ~。とりあえず客間を使ってもらおう。あとは父さんの部屋を朝くんの部屋にしていいか聞いておくよ」
「父さん次いつ帰って来るの?」
「しばらく東京だって言ってたわ。むしろ帰って来る頻度的に父さんが客間でいいだろ」
「そ、そんな、俺他所の子だし…」
申し訳なさそうに視線を泳がしているが、こればかりは俺も譲れない。
「朝くん、俺は一年朝くんを預かるってお母さんと話してるの。だから他所の子じゃなくてうちの子なの。分かった?」
「えと、あ、はい…」
「よろしい。父さんと話がまとまるまでは、ゴメンだけど客間で過ごしてね。今日は風呂入ってちゃっちゃと寝よう。さすがに俺も疲れたわ」
「しんたろさん、あの」
「ん?」
「きょ、今日の、寝る場所」
「ああ!朝くんがいいなら昨日と同じで俺の部屋で寝な。布団そのままだから」
俺の言葉を受け取り、朝くんは安心した表情を浮かべる。逃げる必要がなくなったとはいえ、今の朝くんを一人で寝かせることは出来なかった。
「いいなあ、うさもいっしょにねたい」
「じゃあ明日はうさと寝るか?」
「えっえ、あ、え、お、俺でいいの?」
「うん‼」
「え、あ、じゃ、じゃ…じゃあ…」
「わーい!おとまり会みたいだね。おふろもいっしょにはいろーうよ!」
「へ、あ、え、うぇ……」
明らかに困った様子の朝くんを見て、思わず笑ってしまう。まだまだ大家族の環境に慣れてもらうには時間がかかるだろう。
「うーさ、朝くんはね、シャイなの!そんな急に押したら嫌われるぞ」
「風呂は僕と入るよ、ほら」
「え~」
ぶすくれるうさを抱きかかえ、虎はさっさと風呂場へ移動する。朝くんが帰ってきてくれたことが、よっぽど嬉しいんだろう。
「ご、ごめんなさい。俺上手く返せなくて……」
「そりゃ一人っ子だとそうなるって。でもうさは、朝くんのこと大好きだろうから、ちょっとずつ仲良くしてやってよ」
「…うん。俺も、うさくん好きだよ」
「そういえば、明日荷物取りに行くんだよな?俺も一緒に行く?」
「……ううん、俺ひとりで行く。最後に、あの人とちゃんと話したいから」
「そっか。分かった」
ぽんと彼の頭に手を乗せる。その瞳は赤く腫れていたけれど、もう涙は流れていない。その後ごちそうさまをして、後片付けを済ませる。虎はうさをそのまま部屋へ連れて寝かしつけてくれたため、俺たちも順番に風呂に入って部屋へ戻った。
「明日、お母さんと時間待ち合わせてるの?」
「あ、連絡先分かんないから」
「いっけね。俺が交換してたんだった。何時に行くって送ればいい?」
「……歩いて行くから、十時くらいかな。帰りは、俺の自転車に乗って帰って来るよ」
「送らなくていいの?」
「うん。ちょっと頭整理しながら歩くよ」
「オッケー、じゃあ今日は早く寝よ」
アラームをセットして、それぞれ布団にもぐる。朝くんが横になったことを確認して、部屋の電気を消灯した。
「おやすみ、朝くん」
「おやすみなさい、新太朗さん」
そうして聞こえてくる、小さな寝息。俺は神様を信じているわけではないけれど、でもどうか、神様。今日だけでもいいから、彼が良い夢を見られますように……。
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