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第46話
そろそろ、いいかな……。
独り言のように呟くと、煌は玲衣に尋ねた。
「玲衣、後ろから入れるのと、前から入れるのどっちがいい?」
「前から……」
「初めては後ろからの方が楽だって言うよ」
「煌の顔を見ながらされたい」
「……分かった」
煌は玲衣を仰向けに寝かせると、体重をかけないよう玲衣の上になり、深く口づけてきた。
舌を絡ませ合う濃厚な口づけにぼんやりしていると、煌の手が伸びてきて、足を大きく開かされた。そのまま両足を押し上げられ、身体がくの字に折れ曲がる。
煌は玲衣の手を自分の背中に回させた。
早く煌と繋がりたいと思っていた玲衣だったが、いざ煌のものをあてがわれると、想像以上に大きくて怖くなった。
きゅっと萎縮した窄まりに煌はすぐに気づき、玲衣の頭を優しく撫でてきた。
「痛かったらすぐ止めるから」
そう言って慎重に腰を沈めてきた。
軽く口づけしながら玲衣の様子をうかがい、もどかしいくらいゆっくりと玲衣の身体を開いていく。
煌の十分過ぎる愛撫に熱くとろけていたにもかかわらず、その圧倒的な体積を持つ侵入者を玲衣の本能が拒絶する。
頭では煌を受け入れたいと思っているのに、身体が逃げてしまう。煌はすぐに動きを止めた。
「やだ、止めないで」
玲衣は煌にしがみついた。
「ダメだ、玲衣。痛がってる」
「大丈夫だから」
玲衣は自ら腰を煌に押しつけた。無理にしたのでビリッと裂けるような鋭い痛みが走る。
「いたっ」
「わ、分かった。分かったからちょっと待て」
煌は体勢を整えると、またゆっくりと押し進んできた。
内臓を押し上げられる圧迫感が半端なく、腰が逃げてしまう。しかし、煌は動くのを止めなかった。
その代わり、優しく玲衣に口づけなから何度も「玲衣、好きだ」と囁いた。
身体の奥に煌の熱が侵入してくるのを感じながら、玲衣の目から涙が伝った。
嬉しかった。
煌が今、ここにいる。
会いたくて、会いたくて、狂おしく求め続けた煌が今、ここに、玲衣の中にいる。
それは、この上もない悦びだった。
身体を重ねるということは、愛おしい人とのセックスというものは、こんなにも優しいものだったのか。
まるで柔らかな光に包まれているようだった。
それまで、玲衣は男同士のセックスを汚いものだと、それをしている自分は汚いのだと、ずっと思ってきた。
けれど今、煌とのセックスはまるで神聖な儀式か何かのように眩しいくらい清らかで、そして温かい愛情に満ち溢れていた。
泣いている玲衣を見て、煌は玲衣が痛がっていると思ったのか、涙を唇ですくながら、「玲衣、ごめんな辛いよな」と謝ってきた。
「煌、ちがっ、うっ、ひっく」
またもや涙が邪魔をする。
煌に今の気持ちを伝えたいのに、昂った感情が洪水のように押し寄せてきて、上手くしゃべれない。
するとさっきまで拒絶していた身体が、煌を求め始めた。
玲衣の最奥まで差し込まれた煌を、玲衣の内壁はぎゅっと包み込み、煌の伊吹を求めて収縮する。
「あっ玲衣、なんかヤバイっ」
煌は全身を固くしたかと思うと、玲衣の中に三回目の熱を吐き出した。
玲衣の耳元で煌が嘆く。
「動いてないのにイクなんて、俺、余裕なさすぎ……」
なんだか煌が少し可愛く思えて、玲衣は煌の頭をぎゅっと抱きしめた。
煌が唇を寄せてきたので舌を絡ませる。
甘いキスを味わっていると、トンと突き上げられた。
いつの間にか、煌は玲衣の中で固さを取り戻していた。
ゆっくりと引き抜くと、またゆるゆると差し入れてくる。
さっき玲衣の中で出した精液を内側に馴染ませるように、出し入れを繰り返す。
「痛くない?」
「大丈夫」
気持ちよくはなかったが、痛くはなかった。
それより、煌が動く度に自分のあそこからする卑猥な音が恥ずかしかった。
そもそも足を大きく広げたこの格好も、カエルがひっくり返ったようでマヌケだ。
余裕が出てくると、そんなことが今さらながら気になり始めた。仕方ないと言えば仕方ないが、それを見られるのが、一番見られたくないと思う煌なのだから複雑な気分だ。
こんな格好で口からは変な声も出てしまって、みっともなさすぎる。
そんなことを思っていると、煌が玲衣の耳元で囁いた。
「玲衣、綺麗だ。すごく綺麗だ」
煌は呪文のように何度もそう囁いた。
ぎゅっと玲衣の内壁が煌を締めつける。
「煌、もっと動いて、もっと激しくしていいよ」
玲衣は煌にまわした腕に力を込めた。
煌は次々と玲衣の新しい扉を開いてくれる。
そして、扉の向こうに広がる煌の見せてくれる世界は、泣きたくなるほど優しい。
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