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第5話

 番宣の為の拓人との雑誌の撮影には時々奏が顔を出した。 「なんだよ、メンズ雑誌の撮影の見学なんて滅多にこないくせに。有人さん狙いだろ。」 「今日はたまたま私も雑誌の撮影があったのよ。空き時間があったらちょっとくらいねえ。」 そう言いながら奏は暖かい紅茶を有人に差し出した。 「ああ、有人さん、今日も美しい。神。そのネックレスになりたい。確かにお兄ちゃんが言うように、お父さんに似ているのになんでそんなに色気が漂うんですか?なんでそんなに見ていて飽きないんですか?10個下は恋愛対象に入りますか?」 グイグイこられてどうしていいか戸惑う有人をみて、拓人がいい加減にしろと諫める。 「本当にお前は惚れっぽいな。黒木はどうした。川村はどうした。」 「だって芸能界は顔が良い人がどんどん出てくるのよ。すぐ惚れても私が悪いんじゃないわ。」 どさくさ紛れに有人の隣の席に陣取った奏は話を続ける。 「ねえ、ねえ、私来月誕生日なの。有人さんにお祝いして欲しいな。その日デートしてくれませんか?」 「デート、しない、祝わない、以上。」 勝手に拓人が言うと、当然奏も黙ってはいない。 「なんでお兄ちゃんが決めるのよ!ねえ、いいよね!有人さん⁉」 有人は、美少女の顔がいきなり近くにきたのでむせてしまった。有人は特に断る理由もなかったので、いいよと言うと、何故か拓人も一緒に行くことになり奏は怒っていた。有人は奏がパパラッチに会うとまずいからかな、妹想いだなと少し暖かい気持ちになった。  奏がスタジオから出て行って、少し、有人は考えていた。もし、自分が奏と付き合ってみたらどうなるのだろう。奏と付き合っているときに、実は有人も自分の息子なのだとわかったら、あの男はどんな顔をするのだろうか。それくらいのいたずらみたいな小さな復讐なら、バチは当たらないんじゃあないだろうか。 奏の休憩時間が先に終わり、奏は自分が撮影をしているスタジオに戻っていった。 「誕生日か。奏ちゃん欲しいものとか言ってた?何が好きかな。」 「何でもいいですよ。しょっちゅう可愛いだの、はまった、だの言ってるんですから。奏の欲しいものなんて追ってたらきりがないです。」 何故だか拓人の機嫌が治らない。 「そう言うなよ。可愛い妹だろ。」 「奏のこと可愛いと思っているんですか?」 その言葉は彼にしては冷たかった。有人は、やはり兄としては歳が離れている人間が妹を可愛いというのは気持ちが悪いのだろうと感じた。 「可愛いよ。妹がいたらこんなかんじかなと思う。だから何かしてやりたいと思って。」 有人は可愛いという単語が不自然にならないよう曖昧に言葉を濁した。タイミングよくスタッフが休憩の終了を2人に伝えたので、2人は揃って指示された立ち位置についた。有人は、ポーズをとりながら、これ以上は拓人からの妨害にあうかもしれないから後で現場のスタッフに流行りのものを聞いてみようと思っていた。

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