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執事ドナートの懸念[4]
レオネがチョコレートブラウニーを、ジェラルドがナシを食べ終えた頃、ドナートはレオネに言った。
「ご実家からお荷物が届いておりましたので、書斎へお運び致しました」
「ありがとうございます」
レオネはドナートにそう礼を言うと、「確認してきます」とジェラルドに断りを入れ、軽い足取りでダイニングを出て行った。
その様子を目で追っていたジェラルドはポツリと「元気だなぁ……」と呟いたのがドナートの耳にも入った。
小一時間した頃、ドナートはレオネにお茶を届けた。
自室として与えられた書斎で、レオネは特に疲れた様子もなく実にキビキビと仕事をしており、お茶を持ってきたドナートに爽やかな笑顔で礼を述べた。
レオネの書斎からダイニングへ戻り、隣の談話室で本を読んでいたジェラルドにもお茶を持っていくと、ジェラルドは寝落ちていた。
ソファに横になり、床は本が落ち、眼鏡もかけたままだ。
ドナートは本を拾いテーブルに置き、ジェラルドの顔から眼鏡をそっと抜き取り、本の上に置いた。
ジェラルドは熟睡しており全く起きる気配が無かった。
そして、ドナートは己の勘違いを明確に自覚した。
きっと、求めているのはレオネの方なのだ。
ジェラルドが「エレナは女で、レオネは男だ」と言っていたのはそう言う意味だったのでは無いだろうか。
レオネの浮世離れした美しさについ女性のようなか弱さを想像してしまったが、レオネは二十三歳の健康な男子なのだ。
愛する人と寝室を共にしていれば、毎日でも欲しくなってしまうのは当然だった。
問題はジェラルドの方だろう。
自分を心から慕う若い妻の求めに応えようと必死のはずだ。
妻を満足させられないとなると男としてのプライドにもかかわるのだろう。
(ああ、ジェラルド様……ドナートは考えが浅はかでございました……)
ドナートはジェラルドの寝顔に心の中で謝罪し、もうこの件に関しては口を出さないと誓った。
……とは言え、何とか主 を助けて差し上げたいと執事ドナートは思った。
陰ながら手助けするとなると、ドナートに出来る事は食事くらいだ。
ドナートはその日から精がつきそうな肉や魚、卵などを積極的にジェラルドに出した。
しかし、以前と違い、ジェラルドはレオネと朝晩とも食事を共にすることが増え、それらの食材はレオネも同様に口にする事になり……。
この手助けが手助けになっていない事にドナートが気付いたのは随分先になってからだった。
完
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