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ジェラルドの失態[3]
「ジェラルド、次の日曜にジル姉様と絵画展に行ってきても宜しいでしょうか」
とある日の夕食後にレオネが思い出したように言ってきた。
ジェラルドの実姉ジルベルタはレオネを実の息子のように可愛がっている。
時折、こうしてレオネを街へと連れ出すのだが、ジェラルドが休みの時に誘うのは稀だった。
ジェラルドが家に居る時に出かけるのはレオネも心苦しいのだろうが、ジルベルタの誘いも断りにくいのだろう。
「ああ、構わないよ」
ジェラルドはサラリとそう言った。
レオネが不在ならば例の件を進めたいと思ったからだ。
「ありがとうございます。四時頃には帰ると思います」
レオネは穏やかな笑顔でそう言った。
――――日曜日
レオネは昼にジルベルタと共に出かけて行った。
そして、指定した一時に外商がやってきた。
やってきた外商はバラルディ家担当のいつもの男ではなく、金髪の若い婦人外商だった。
「バラルディ様、お初にお目にかかります。アンナと申します」
出迎えたドナートは少々驚いたようだが、ジェラルドは驚かなかった。女性にしてくれと頼んだのはジェラルドだったからだ。
外商らしい営業スマイルで挨拶した彼女は一般的に美人とされる部類だとジェラルドでも思った。
金髪をきっちりとまとめ上げ、真っ赤な口紅を挿している。年齢は二十代後半に見えるがきっともっと行っているだろう。
前回と同じように玄関ホール左のサロンに通した。
季節の話題等を適当に話してドナートがお茶を持ってくるのを待ち、ドナートが下がってから本題に入った。
「ネックレスと、イヤリング、ブレスレット……、そのあたりをまとめて作りたい」
「ご希望の形はございましたか?」
「このあたりの……」
ジェラルドは型録をめくり指し示す。
「だが、ブレスレットはもっと華奢なのがいい。手錠のようでは無いもので」
「かしこまりました。ではこの辺りのものはいかがでしょう?」
アンナは白い手袋をはめ、鞄からビロードの黒い布を出し応接テーブルの上に広げると、いくつか商品見本を並べた。
「石を同じものにすれば統一感を持たせられます。ご希望の石や色はございますか?」
ジェラルドは少し考えつつ言った。
「真珠、かなぁ……」
「レオネ様は真珠お似合いになりそうですね」
レオネとこの外商は会ったことがないはずだが、レオネはその美貌から社交界では有名人だ。やはり外商ともなれば知っているらしい。
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