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ジェラルドの失態[6]

「ジェラルド様、ドナートさんからお電話です」  秘書のウーゴからそう言われて胸がザワッとした。  執事ドナートからの電話と言うのは大抵、バラルディ家本邸での緊急事態であり、良い知らせではないからだ。  時刻は午後二時。  ジェラルドは商会の会長室で執務にあたっていた。 「どうした⁉」  ジェラルドは会長室専用の電話機から受話器を上げ、急ぎ聞いた。 「ジェラルド様、お仕事中に申し訳ございません。それほど緊急では無いのですが、ご帰宅後ですと少々話しにくく……」 「……レオネか?」  それしか無いと思いジェラルドは先に聞いた。 「はい。実は、今朝からお食事をほとんど召し上がっておりません。もしかしたら、昨夜の夕食も食欲が無かったのではと……」  昨日からのレオネを思い浮かべる限り、疲れているようには感じたが、風邪などは引いてないようだった。  昨日の昼食まではジェラルドと一緒に普段通りよく食べていた。となるとやはり精神的なものの可能性が高い。  レオネは何か心配事があるとすぐ食事を取らなくなる。   「昨日ジルベルタと出掛けて何かあったのかもしれん。ジルベルタに話を聞くよ」  ジェラルドがそう言うとドナートは「宜しくお願いします」と言い電話を切った。  すぐさまウーゴにジルベルタを呼んでくるように指示した。幸い、ジルベルタは今日商会に来ており、すぐにジェラルドのもとにやつてきた。 「昨日、何かあったんですか?」  ジルベルタが会長室にやってきてすぐにジェラルドは聞いた。 「そうなのよー。私がうっかりしてて」  ジルベルタは予想に反して軽く苦笑いしながら言った。 「絵画展、先週で終わってたのよ。貴方の休みの日に無理やりレオネさん連れ出したのに……。ごめんなさいね」  予想外にどうでもいい内容にジェラルドは「そうですか……」と答えた。 (レオネはそんなにその絵画展が楽しみだったのか?)  考えてみるが、それが原因ではないような気がする。

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