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ジェラルドの失態[7]
ジェラルドはもう少し深く聞いてみることにした。
「それで、どこ行ったんです?」
「せっかくだし近くのサロンでお茶したわ。栗が入ったマドレーヌがあって」
「食べたのはそれだけですか?」
「そうよ。まだ一時頃にだったし、レオネさんもお昼食べたばかりだって言ってたから」
レオネは夕食が食べられない理由に『菓子を沢山食べた』と言っていたが、やはり言い訳に言っていただけのようだ。
しかもお茶をしたのは一時頃。夕食までにはお腹が空くだろう。
「それで、その後は?」
「どこも行ってないわよ。三時前にはレオネさん、帰したでしょ?」
ジェラルドは眉をひそめた。
昨日レオネはそんなに早く帰っていない。
帰ったのは空が薄暗くなり始めた四時半頃だ。
「玄関前で下ろしたんですよね」
「……いえ、門の前で良いって言われて」
ジェラルドは眉間にシワを寄せて考え込んだ。
その空白の二時間弱に何があったのか。
(まさか門の前で誰かに攫われて何がされたのでは?)
最悪の事態が思い浮かぶ。
(……いや、それにしては身なりは乱れていなかったし、昨晩抱いた時に身体に異変は無かった)
深刻そうなジェラルドにジルベルタが不安そうに声をかけた。
「ねえ、どうしたの? レオネさんに何かあったの?」
「……いえ、その、何か思い悩んでいるようで。昨日何かあったんじゃないかと」
「そうなの? 私にはいつも通りだったように見えたけど……」
何かあったのはやはりジルベルタと別れた後のように思える。
ジェラルドは鼻から大きく息を吐いた。
レオネはきっと何かに悩み苦しんでいる。
それなのにそれに気付かず、昨日ジェラルドはレオネに向けた邪な買い物をし浮かれていた。
(なんて情けない夫だろうか……)
その考えが頭をよぎった時、ジェラルドの頭の中でそれは噛み合った。
「あ……」
「何? わかったの?」
ジルベルタがジェラルドの顔を覗き込んでくる。
「……帰って、レオネと話します」
ジェラルドは静かにそう言った。
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