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ジェラルドの失態[9]
「ジル姉様と家を出てすぐに、百貨店の車とすれ違ったんです……」
ジェラルドの書斎に移動し、まずはレオネからことの経緯を聞き出すべく、二人掛けのソファにレオネを座らせ、ジェラルドも隣に座った。
「車にご婦人が乗っていらしたので、ジル姉様に『ご婦人で外商を務める方もいるのですね』と話したら、『何人かいるけど、あの方は物を売る以外にも色々してくださるから、殿方には一番の人気よ』とおっしゃって……」
(クソッ、ジルベルタめ……余計なことを……)
ジェラルドは頭を抱えつつ、心の中で悪態をついた。
「それで……絵画展がやってなくて、お茶だけして帰って……天気が良かったので門の前で下ろして頂いて庭を歩いていたら、その外商の方が玄関から出ていらして……」
レオネが唇を噛み締める。
ジェラルドは「はぁ」と溜息を付いた。
妻である自分の留守中に、自分と同じ金髪でやたらと色気を振りまいている女が家から出てきたのだ。
(そりゃ、浮気だと思うよな……)
「何か理由があったんだろうと思おうとしました。いつもの外商さんが来られないとか。でも私が出掛けた時にわざわざなぜ? とか、今日外商さんが来るって言わなかったのはなぜ? とか、色々考えてしまって……。ジェラルドに聞けば良いんだとも思いましたけど、確信に迫るのが……怖くなって……」
涙を堪えながらレオネが語る。
そんなレオネにジェラルドは優しく問いかけた。
「それで、二時間もどこにいたんだ?」
「北側の庭のベンチに……」
そこは邸宅内ではあるが、バラ園とは反対の木しかない薄暗いエリアだ。天気が良かったとは言え、冬の屋外での二時間は寒かったことだろう。そんなところで独りで心細く悩んでいたなんて、なんて可哀想な事をしてしまったのだろうとジェラルドは思った。
今更ながらジェラルドはレオネを温めるように肩を抱き寄せた。
そして、聞くか迷いながらもジェラルドはレオネに質問した。
「そんな状態で君は……昨日、何を思って私に抱かれてたんだ?」
レオネはジェラルドに肩を抱かれながら、涙でいっぱいの目で見つめ、そして逸らした。
「……い、いつもより……激しかったから、あの女性に、最後まではさせて貰えなかったんだろうな……て……」
ジェラルドはレオネの頬を撫でながら苦笑いして言った。
「女で晴らせなかった欲求を君にぶつけてきたのか。君の夫は酷い奴だな」
さらにレオネの耳元に唇を寄せ囁く。
「その上、溢れるほど中に出されて……。それでも君は怒らないんだな」
それを聞いて、レオネは真っ赤になり、自身の頬に手を当ててジェラルドから顔を逸らした。
「ごめんなさいっ! 何も無かったって、もうわかりましたからっ」
「おいおい、私はまだ何の弁解もしてないんだぞ。そんなにすぐ許してどうする?」
ジェラルドは笑いながらレオネの背中を撫でて、再び抱き寄せながら言った。
「夜中にバスルームで一人泣いてたのだろう? 本当にすまなかった」
レオネはジェラルドに抱き締められたままフルフルと頭を振った。
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