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ジェラルドの失態[11]
――――その日の夜
レオネのいつも通り食事を取る姿を見て、ジェラルドとドナートは共にホッと胸を撫で下ろした。
レオネが落ち着いたようなので、ジェラルドは就寝前にレオネに言った。
「頼んだアクセサリーは来月頭に届くんだ。例の婦人外商が来る予定だ。一緒に見てくれよ」
ジェラルドがそう言うとレオネは「うーん」と唸った。
そしてピシャリと言った。
「私、それを着けるつもりはありませんよ」
「はっ⁉」
「だって……」
そう言ってジェラルドが寝室に持ってきた型録 を手に取る。
「この天使たちの絵は綺麗だと思いますし、現実でも女性には似合うと思いますが、私が付けたら絶対滑稽ですよ」
パラパラと捲りながらそう言った。
「いやいやいや、絶対似合う! どれもレオネに似合うだろうが、特に似合いそうなものを選んだんだ!」
「いえ、絶対マヌケな感じになります。ジェラルドにそんな姿を見せるなんて絶対嫌です」
ジェラルドは焦った。
多少恥ずかしがるとは思っていたが、お願いすれば着けてくれるだろうと踏んでいた。
が、ここまできっぱり『絶対嫌』と言われる事は想定していなかった。
「た、頼むよ。凄く高かったし……」
「いくらしたんですか?」
「いや、金額の問題では……」
「今ジェラルドが金額の問題を出したんじゃないですか」
「いや、そうだか……」
「キャンセルできないんですか?」
「そんな! フルオーダーメイドだ。無理だよ」
「でもまだ二週間あるし、何割かは戻って来るんじゃないですか?」
「ぜ、絶対嫌だ! せっかく発注したのに!」
「だって、私が着ける可能性は低いですよ」
「ぜ、ゼロじゃないなら……!」
「まあ、世の中可能性がゼロって事は無いですけど……。明日世界が終わる可能性もゼロじゃないし」
「君が着けてくれる可能性はそんなに低いって言うのか⁉」
レオネに淡々と言い返されてジェラルドは焦った。
今までこんなに言い返された事は無い。
「なんで……、そんなに嫌なのか?」
ジェラルドが聞くとレオネはフフと笑った。
「だって、我が儘言っても良いって言われたから」
「そ、そんな……」
よりによって今この方向でその我が儘を発動されるとは予想していなかった。
ジェラルドの考える我が儘とは『あれ買って』等のおねだりだったのだが。
困り果てるジェラルドを見てレオネはクスクスと笑っている。
ジェラルドは悔しくもその子悪魔的なレオネにも新たな魅力を感じていた。
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