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また一緒に星を見ようよと、ヨウに抱きついたままでそう言えば、「怖いとか怖くないは置いといて、俺はいわゆる妖怪ってやつなんだけどそれでもいいの?」と、ため息をついた。
「何を根拠に俺を信用できるの? お前に何か危害を加えるかもよ? 俺の好物が人間だったら……?」
「ヨウは、俺が嫌がることするの?」
「さぁ、どうだろう?」
「じゃあどうして、初めて出会ったときに俺を殺さなかったの? それに、俺は毎年この夏祭りに来ていたんだ。記憶だって消さなければ俺はきっと、お前に会いにここに通ってたぜ? そうすれば何度だって殺す機会を作れたのにそうしなかった」
この場所だってそうだ。わざわざ俺をここに連れてきてくれたんだ。それから記憶の中のヨウは、とても悲しそうな目をしてバイバイと言っていた。そんなヨウが俺に危害を加えるなんて考えられない。どうしてここまで信用できるのかは、俺のヨウに対する気持ち以外に根拠はないけれど、でも、それが一番確かな理由であるように思う。
「英は馬鹿だなぁ」
「馬鹿ってなんだよ」
「……すごく会いたかった」
ぼそりと小さく呟かれたその言葉も、この距離ならはっきりと聞こえる。ヨウも俺と同じように背中へと腕を回し、抱きしめてくれた。身長差のせいですっぽりと収まってしまうのが何だか悔しいけれど。
「お前以外に俺が見える人間には出会ったことはないし、だからお前に声をかけられたときは嬉しかったんだ」
「ヨウ?」
「ここには昔はわりと多くの妖怪が住んでいたけれど、変わりゆく時代のせいで俺たちにとっては生きずらくなってきて、みんな引っ越して行ったよ。元々自立できる歳になれば一人で生活していくことが決まりだったから、俺も出ていくつもりだったんだけど、この石を見る度に英を思い出して離れられなかった」
「……っ」
「賭けをしていたんだ。消してもなお、英が俺を思い出してくれたら、またこの石を見つけにここに来てくれるようなことがあったら、俺はここで生きていくって。期限は今年までだった。だから今回こんなことがなければ俺はここを離れていたよ」
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