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メンバーが嫌だったのに参加したこと、香水くさかったあの子の腕を振り払わずにずっと我慢していたこと、それがすべてヨウへと繋がっているようで運命を感じた。直前まで面倒で断ろうと思っていたんだ。それでも祭りは好きだからって参加した。匂いがきつかったけれど我慢したから、俺に移ったその匂いでヨウが力を使えなくなってこの石が現れた。 「ヨウにまた会えて良かった。ねぇ、前に見せてくれた羽をもう一度見せてよ」 「いいけど……」 「目の赤色も昔より濃くなった? この傷は全然薄くなってないし、目元と口元のほくろもそのままだ。……歯は、前より鋭くなったね」 「あまりベタベタ触るなよ」 「どうして? 恥ずかしいの?」 「はっ、そんなわけないだろ」 「なぁ……、ヨウ。今日は、俺が帰るときに記憶を消したりはしないだろう? 俺、お前を忘れたくないよ」 「もう消さないよ。……お前に迷惑がかからない限りは」 ヨウは俺を抱きしめるのをやめると、一人であの石に登った。月明かりに照らされる彼の姿はとても美しく、目が離せなくなる。 「眩しくなると思うから、いいよって言うまで目を閉じていて」 「分かった」 言われた通りに目を閉じるも、強い光が集まっているのが分かる。閉じていても眩しいのは、それだけヨウの力が強くなったということなのだろうか。 「英、目を開けていいよ」 「……うわぁ」 目の前のヨウには、大きな羽が生えていた。 「かっこいい……。ヨウ、ここまで飛んできて」 石の上にいるヨウに向かって両手を広げた。高いところから飛び降りる子どもを受け止めるようなその姿勢を、ヨウは鼻で笑うと、畳んでいた羽を大きく広げた。月明かりで照らされたそれは言葉を失うほどにきれいで、ごくりと唾を飲み込んだ瞬間、ヨウは俺の頭上にいた。 「英も飛んでみたい?」 「えっ?」 「家まで送ってやるよ」 「うあっ」 俺が頷く前に、ヨウは俺を抱きかかえた。ドラマでしか見たことのないお姫様抱っこというものを、まさかここでヨウにされるなんて。

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