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「飛んでみたい……けど、この姿勢じゃなきゃあダメ?」
「一番安定するんだよ。他は落としてしまうかも」
「うっ、それは嫌だな」
「だろ?」
「あとさ、送るのはもう少し後がいいな。まだヨウと一緒にいたい」
「というか花火もまだだったな。とりあえず時間になったら一番見えるところまで連れて行ってやる」
「まじで?」
「……でもいいのか? お前、誰かと一緒に来たんだろ?」
「あ……」
ヨウに言われて、トイレに行くと言ってみんなと離れたことを思い出した。正直もう戻りたくはない。ヨウといるほうがいい。
「アイツらといても楽しくないんだ。女子はベタベタしてくるし、何かあれば奢ってもらおうって感じで。男子は男子で、あわよくばそういうことしたいって、下心が見え見えだし……」
「じゃあ今日はずっと俺といたらいい。でも連絡は入れておけよ。心配しているんじゃあないのか」
「そうだね。連絡しておく」
携帯を開けばたくさんの着信が入っていた。メッセージも大量に来ていて、時間を見てもう一時間も経っていたのかと驚いた。ヨウといる時間は楽しくてあっという間だ。慌てて謝罪の連絡を入れ、体調が悪いから今日は帰ると嘘をついた。
「ヨウ」
「何だ?」
「……毎日会いたい。夏休みは一ヶ月くらいあるんだ。俺の学校は平日は授業があるし、その後に部活があったりでたくさん時間があるわけじゃあないけれど、でも俺、またヨウと会いたい。お前といると楽しい。だから、明日も会いに来てもいい? 明後日も明明後日も、ずっと俺と会ってくれる?」
「別に構わないけど、お前はそれで大丈夫なのか? 学校の友人は?」
「アイツらには学校で会うし問題ないよ。来年は受験生になるし、そうしたら忙しくなるからさ、時間のある今のうちにたくさん楽しいことしたいよ」
俺にしか見えないかもしれないヨウとの出会いも時間もすべてが特別で、もっと彼についてたくさんのことを知りたいと思うし、俺のことも知ってほしい。
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