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◇ ヨウと会うようになって、三週間が過ぎた。枕元にはもらったヨウの羽を置いておき、起きてすぐ視界に入るそれを見て、ヨウの羽だと分かる度に記憶を消されていないと安心する毎日を過ごしている。 最近は、夏休みがもうすぐ終わるのに課題が残っている俺を見て、「これからは夜に俺がお前の家に行くから、俺が行くまでは課題をやってろ」と言われ、ヨウと遊ぶために嫌いな課題にも一生懸命取り組んでいる。 今日は両親が二人で出かけるらしく、家には俺だけになるから、夜にヨウが遊びに来てくれるとき、帰らないで泊まってとお願いしてみよう。一緒にゲームをして、夜更かしをして、ヨウとたくさん一緒にいたい。そんなことを考えながら課題に取り組んでいると、コンコンと窓ガラスを叩く音がした。 「ヨウ!」 「課題は順調?」 「来て早々に課題の話はしないでよ。ちゃんとやってるよ」 「よしよし、いい子だ」 「馬鹿にするな」 「してないよ」 俺の髪をわしゃわしゃと触るヨウに向かって思いっきり頬を膨らますと、鼻を摘ままれた。その手から逃れようと首を振って抵抗すると、ヨウが優しい顔をして笑った。 「ヨウ……」 「何だ?」 「課題頑張ったからさ、ぎゅってして」 どうしてこんなお願いをしたのかと、言い終わってからたまらなく恥ずかしさが込み上げてきた。けれど、やっぱりやらなくていいとも言えず、両手を広げたまま固まっていると、目の前のヨウはため息をこぼした。 「甘えん坊だな。人間は高校生にもなってこんな甘え方をするのか?」 「呆れるな!」 「呆れてないよ。……ただ英が、可愛いなぁと思っただけ」 「嘘つき」 「嘘じゃあないって。ほら、これでいいか?」 穏やかに笑いながら、ヨウは俺を抱きしめてくれた。あやすように優しくポンポンと俺の背中に触れていて、腰に回された手は軽く置いてあるだけなのに、嫌な出来事すべてを忘れられるような癒しを感じる。けれど胸は握りつぶされたような痛みもあって、訳もわからず少しだけ涙で視界が揺れた。 「ヨウ、今日は甘やかしてくれる?」 「いつも甘やかしてるだろ?」 「ねぇ、俺のお願い聞いて」 「……いいけど」 「今日ね、親がいないんだ。だから泊まってって。テレビだっておしゃべりしながら見ても気にする人はいないし、いつもより伸び伸びしていられるし」 お願い、と強く着物を握りしめ見つめれば、ヨウは眉を垂らして笑った。

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