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第12話 待って、待ち望んで……
翔馬は、うなだれた。めでたし、めでたしが既定路線のお伽噺とは異なり、現実はシビアだ。最高のサプライズ! とキスの雨が降るに違いないなんて、甘い幻想を抱いたのが独り相撲に終わっただけ。
「とっておきのギャグがスベった? みたいな。どうも、お騒がせしました」
と、敬礼の真似事でおどけてみせた。衣服までは再転生の対象に含まれていなかったせいで、すっぽんぽん。タイムリミットまでどこかで時間をつぶそうにも、この恰好では表をうろつきしだい110番だ。
明良のスウェットスーツあたりを拝借しよう。そう思って寝室の電気を点けたとたん、きょとんとした。
ダブルベッドの右側、翔馬の定位置だったそちらを抱き枕が占領していた。寄り添って眠るのが夜ごとの習慣とみえて、枕カバー代わりに翔馬のTシャツをまとった、それが。
明良がベッドに歩み寄った。抱き枕をひと撫でして訥々と胸の裡 を明かす。
「独り寝が淋しくて不眠症を患った。四十近いおっさんがキモい話だが、睡眠導入剤に頼っていたのが、こいつと添い寝をはじめて改善した」
迂闊に触れると蜃気楼のごとく、かき消えてしまう。だから、と言いたげにおずおずと手を握られた。
「魂消たからってのは言い訳にならない。残酷だなんて罵って、すまなかった。どういうカラクリかはともかく、おまえにもういちど会えてうれしい、うれしいどころじゃない」
うんうんと、うなずくのが精一杯だった。翔馬は広げられた腕の中に、すっぽりとおさまった。
渾身の力で抱きしめられて、抱きしめ返すと、百万回分の「愛している」を超える熱量で想いを伝え合う。
では愛の炎が燃え盛る場面での、唇と舌の正しい使い道は? もちろん、こうだ。
唇が重なるなり、先を競って結び目を解きほぐす。人類とカップ。種族が分かれたあとも恋心が薄れることはなかった。足かけ二年にわたって禁断症状に苦しめられたぶんも、狂おしく舌を絡ませる。
軽い酸欠に陥り、折り重なってベッドに倒れ込む。ペニスが萌し、いじってほしげに細腰 がもぞつく。ジーンズの中心にしても、負けじとせり出す。
「シンデレラは午前零時の鐘が鳴るまで、おまえの持ち時間は半日……か。最善手はやりまくる。異論はあるか」
「つき合うに、やぶさかじゃないかもよ?」
くすくすと笑い、乳首をつままれて甘い吐息を洩らす。ああ、焦がれ求めた明良の香りに包まれている。
鼻をひくつかせるとペニスはしっとりと蜜をはらみ、ホウセンカの実さながら爆ぜた。
「おい、可愛がる暇もなかったぞ」
憮然と、そのくせ淫液をぬぐった指をしゃぶってみせるのは狡い。ねだりがましげに花芯が疼きだす。
「明良も早っ! だったりして」
股ぐらをつついてあげながら、うつ伏せた。十二時間を秒に換算すると、たったの四万三千二百秒。
一秒、一秒が難破船の真水より遙かに貴重だ。じっくりほぐしてから合体なんて、ちんたらしていられるか。
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