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第45話

「さて、フェアル様が描いた魔法陣についてですが……」  キッチリとダレン様に叱られた後、笑いを堪えていたガラガントさんが咳払いをして話し始めた。 「閣下とフェアル様がお見えになるまで、問題の時にご使用になられたペンを見せて頂いていました」 「ペン……ですか?」  ガラガントさんのお店で購入した品物だから気になったのかと思いきや違うみたいだ。 「閣下もフェアル様も、当店でご購入頂いたペンを使用していたと聞いています。でも閣下が描いた魔法陣は問題なく作動し、フェアル様が描いた魔法陣は異常に魔力を吸い取ってしまった」  ベルベットが貼られたトレイに、サイズが違うペンが二つ並ぶ。  そのうち、小さい方のペン軸を指先で転がすと、ガラガントさんは指を止めペンをそのまま固定した。 「ここ、見えます?」  そう言われて目を凝らして見てみると、ペンに僅かな傷が付いていた。 「恐らくフェアル様が魔法陣を描いた時に、爪で傷が付いたんだと思います」 「あ……」  ガラガントさんの説明に、僕は思い出す。  確かに失敗したくなくて、ペンを持つ手に力が入ってしまっていた。その時、爪がペン軸に喰い込んだんだった。 「猫の獣人は瞳と爪に魔力が籠りやすいと言われてます。恐らく魔法陣の文字を書く時に力を籠めて、ペン軸に爪が喰い込んだんじゃないですか? そこから魔力がペンを経由してインクへと流れたんだと思います」  その通りだったから僕が頷くと、ガラガントさんは内ポケットから魔法陣を描いた用紙を取り出した。 「描いた魔法陣は、この着火の魔法陣だったでしょう? この魔法陣は、文字の部分が全て魔力吸収のためのものなんです。そこにフェアル様の魔力の籠もった文字が描かれた……」  僕の強力な魔力が籠もった魔法陣は、その力を発揮してレグラス様の魔力を吸い取ってしまった……という事らしい。 「だが、この時まだフェアルは魔力を封じられていたはずだが?」  怪訝な顔のレグラス様に、ダレン様が肩を竦めてみせた。 「いくらアーティファクトといえど、100%封じる事はできないよ。身体を必要最低限維持するだけの極微量の魔力は流れていたはずだ」  ……という事は、全ての元凶は僕ということだ。  僕は隣に座るレグラス様にそろりと目を向けると、身体を縮こませて謝った。 「ごめんなさい」 「いや、安易に描いてみるように勧めた私が悪い」  レグラス様は僕の頭をそっと撫で、首を振った。そして改めてダレン様、ガラガントさん、僕へと視線を流して言った。 「だがフェアルのこの魔法陣は様々な可能性を秘めている。私としては彼に魔法陣学を学ばせたいと考えているが、どう思う?」  そうレグラス様に問われ、ダレン様とガラガントさんは顔を見合わせた。 「私は良いと思いますよ。細かな魔力調整の練習になりますしね」  とダレン様が言うと、ガラガントさんも頷いた。 「フェアル様がこの国で独り立ちしたいと思うなら、魔法陣学を学んで損はないと思いますよ」  僕に目を向けて、そう言ってくれた。  そしてレグラス様、ダレン様、ガラガントさんの目が僕に集中する。  その視線を受けて、ぱっと笑顔を浮かべて頷いた。 「僕、魔法陣学、学んでみたいです!」

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