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第48話

「は? え、と……? え……、え?」  レグラス様の広い胸に抱き込まれて、僕は更に混乱してしまった。  慌ててレグラス様の胸に腕を突っ張って、身体を離そうとしたけど、その僕の動きを封じるように背中に回された彼の腕にやんわりと力が籠もる。 「落ち着いて……」  そっと耳元で囁くと、背中に回っていたレグラス様の片方の手が僕の髪を優しく梳いた。そして後頭部に掌を当てると、そのまま自分の胸に僕の顔を柔く押し当てる。  特段強い強い力で押さえられた訳でもないのに、僕はそれ以上抗う事が出来なかった。  トクトクとレグラス様の心臓の鼓動が響いてくる。  その穏やかな音に耳を傾けていると、強張っていた身体からするりと力が抜けた。  ーー抱擁なんて、母様にして貰って以来だ……。  そんな事を考えながら、こっそりと甘えるように瞼を閉じる。  僕ももう十七歳だ。成人まであと少しという自覚はある。  でも今はこの優しい触れ合いを、心ゆくまで堪能したかった。  レグラス様の胸元に、無意識にスリスリと額を擦り付ける。その僕の行動に気付いたのか、レグラス様はゆっくりと僕の髪を梳いてくれた。 「フェアル、顔を上げてごらん……」  優しく言われて、僕はゆっくりと顔を上げる。 「ーー私を見るんだ」  秘めやかな、囁くような声で命が下った。その声が心地よくて、とろりと溶ける思考のままゆっくりと瞼を開けると、直ぐ目の前にレグラス様の秀麗な顔があった。  ふわふわと心地いい気持ちのままレグラス様を見上げていると、彼は僕をひたっと見つめたまま、唾でも飲み込んだ様に喉が上下に動くのが見えた。 「……………」 「ーーレグラス、様……?」  ぼんやりした頭で呼びかけてみると、レグラス様は僕を見つめていた目をすっと細めた。 「フェアル、口を開けて」 「?」  言われるがまま、そろりと僅かに口を開くと、レグラス様の少し傾けた顔が更に近くなった。 「ーーぁ」  あれ? と言おうとした口は、レグラス様の唇に塞がれてしまって言葉を紡ぐ事はできなかった。 「ん、んぅ……」  挿し込まれたレグラス様の舌が、僕の口の中を探るように舐めてくる。やがて、どうしていいか分からなくて縮こまっていた舌に到達すると、舌同士を擦り合わせるように舐めてきた。 「っ、つ……ん……、ふぅ……ぅ」  ぬちっと(ぬめ)る音が、微かに聞こえる。その感触は背筋がゾクリとする程心地よくて、僕はその刺激を求めて自ら舌を差し出した。  すると、すぐさまレグラス様の舌が絡み付いてくる。  くちっ、くちゅっと互いの舌を擦り合わせ、絡め合い、口の端から唾液が流れ落ちるのにも構うことなく、貪るようにその刺激を堪能する。  僕が淫靡な刺激に夢中になっている間に、レグラス様の手が掬い上げるように僕の顎に絡んできた。長い指が僕の喉を擽るように撫でてくる。  その心地よさに、知らず「ゴロゴロ」っと喉が鳴った。

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