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第59話

 たっぷり時間をかけて朝食を味わった後、食後のお茶を飲みながらサグから今日の予定を聞いた。 「もうすぐトーマ氏がお見えになります。制服のサイズ調整が終わったそうなので、フェアルには一度試着をして貰います。その後はダレン様の診察と学院で使用する魔力量の確認、そして……」  一旦言葉を切ると、サグは心配そうに顔を曇らせた。 「そのままダレン様の立ち会いのもと、フェアルの魔力測定が行われます」 「魔力測定ですか?」  僕はきょとんとして、サグの言葉を繰り返した。  アステル王国では特に魔力の測定なんかしない。有るか無しかの二択なのだけど、ラジェス帝国ではどうやら違うようだ。  不思議そうにしている僕に、ソルが教えてくれた。 「帝国では五歳から七歳までの間に、創世神の神殿で魔力測定を行うんだ」  その言葉に、僕はサグが表情を曇らせた理由を知った。  僕の国アステル王国では獣神を祀っている。でもラジェス帝国では、人族の神・創世神を祀っているんだ。  この創世神は、経典で人族を唯一の至高の存在としていて、獣族と大層相性が悪い。その宗教的な観点から、アステル王国とラジェス帝国は、友好国なのに微妙な関係となったんだ。  でも、別にその創世神が国教という訳ではないらしい。  帝国では宗教の自由が認められていて、他の宗教を信仰している人も多いと聞く。  ただ、創世神は建国の時には既に、宗教として存在を確立していたそうだ。  そして魔力測定する魔珠と呼ばれる水晶みたいな石は、創世神の総本山でしか採取できないという事で、魔力測定はどの宗教を信仰していても、創世神の神殿で行うと決まっているという。  ダレン様の立ち会いのもと魔力測定をするということは、その創世神の神官がその場にいるということだ。  もしかしたら僕が獣人という事で、理不尽な言い掛かりをつけられる可能性もある。多分サグはそれを心配して顔を曇らせたんだと思う。  でも危害を加えられるのではないなら、僕は別に気にしない。  嫌味や難癖なんて、今まで数え切れないくらい言われてきたし、多少嫌な気持ちになったとしても、聞き流す事くらいできる。  そう思って、サグとソルににこっと笑ってみせた。 「僕は大丈夫です。ダレン様が立ち会って下さるなら安心だし」  そう言うと、二人は顔を見合わせて、安心したように息を吐き出した。 「フェアル、俺たちも側に居るからさ」 「そうです。それに、仮にも皇族の血が流れるナイト公爵家の、当主でもあるレグラス様が直々に保証人となっているんです。フェアルに難癖をつけるとしたら、それは皇帝に唾棄するに等しい愚かな行為ですからね」  励ます様に言われて、僕は嬉しくなって「ありがとう」と小さく呟いた。

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