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第12話 初めての客(2)
2ー2 客
扉が開いてアンリと見知らぬ男が入ってきた。
俺は、その男を凝視した。
豊かな赤毛を後ろでまとめて背に垂らした背の高い男。
髪色も目の色も、美しい顔つきすらどことなくアンリに似ている。
普通に礼装をまとっているが服の上からでもわかる体格のよさに俺は、ごくっと喉を鳴らした。
「この方は、ラグダム辺境伯。私の従兄弟にあたる方だ」
アンリが俺に紹介したので俺は、膝を折って礼をとる。それを見てアンリは、満足そうに頷いた。
「では、私は失礼する。ラグダム辺境伯、これは、今宵が初めて故、何とぞお手柔らかに」
そう言うとアンリは、にんまりと笑って部屋から出ていく。
二人きりにされて俺とダグラム辺境伯は、戸惑いを隠せなかった。
気まずい雰囲気が流れる。
俺は、どうしたらいいのかわからずに立ち尽くしていた。それは、ダグラム辺境伯も同じようで。彼は、困惑した様子で頭を掻く。
「アンリの奴。俺の誕生日プレゼントとか言っていたが・・弱ったな」
心底迷惑そうなダグラム辺境伯の様子に俺は、なぜか悲しくなる。
初めてなのに。
どうしたらいいのかもわからない。
なのに、客は、俺のことが迷惑そうだし。
この客を満足させれなかったらたぶん、俺は、アンリからお仕置きされることだろう。
俺は、アンリからのお仕置きを考えて涙目になる。そんな俺の様子に気づいたダグラム辺境伯が俺に声をかけてきた。
「どうしたんだ?エルターク殿」
「なんで、俺の名前?」
俺が聞くとダグラム辺境伯は、ますます気まずげに目をそらす。
「いや、あなたは、有名な大魔法使いだし、社交に疎い俺でも名前ぐらいは、知っているさ。まあ、こんな美しい人だとは知らなかったが」
俺は、ダグラム辺境伯をじっと涙目で見上げた。
「もう、魔法使いではありません」
俺は、ダグラム辺境伯を見つめて瞳を潤ませる。
「今夜、あなたに抱いて貰えなければ俺は、アンリ様にお仕置きされてしまいます」
「それは・・」
ダグラム辺境伯がまじまじと俺を見た。あきらかに返答に困っている。俺は、溢れそうになっている涙をなんとか堪えようとしていた。
もし、彼に抱いて貰えなければアンリは俺にどんなお仕置きをするだろう。
きっと、想像もできないぐらい酷いことをされるに違いない。
俺のまなじりからポロリと涙が流れた。
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