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第17話 初めての客(7)

 2ー7 初恋  「そうか!」  カークは、がばっと起き上がるとベッドから降りて慌てて服を着るとベッドの上に取り残された俺の頬にちゅっとキスをした。  「ありがとう、ルシウス。お前のお陰でなんとかなるかもしれない!」  そう言うとカークは、部屋から駆け出していった。  それからしばらくして、アンリが俺を執務室へと呼び出した。  俺は、最近、客がついてなかったからてっきりお仕置きされるのかと怯えていた。しかし、アンリは、執務室を訪れた俺をソファに座らせると満面の笑みを浮かべた。  「ラグダム辺境伯の悩みを解決してやったそうだな、ルシウス」  はい?  俺は、なんのことかと思っていた。すると、アンリが俺に話し出した。  「ラグダム辺境伯、カークは、俺の特別な客、だ。従兄弟であり、魔法学園の学友であり、そして、俺の初恋の男だ」  俺は、ハトマメで驚いていた。  アンリの初恋の男?  マジですか?  「だからこそ、私は、最高の相手をカークに宛がいたかった。私の代わりにあいつを蕩けさせることができるような相方を与えてあいつを虜にしたかった」  「なら、あなたが直接彼を相手したらいいのでは?」  俺が言うとアンリの表情が曇った。  「それができていれば、な」  アンリが俺に語った。  「あいつに告白して嫌われたくなかったんだ。失いたくなかった。あいつは、昔から私を友人としか思っていない。だから、私の代わりが必要だった。そして、お前は、予想以上の働きをしてくれた」  なんでもあの後、カークは、すぐに冒険者ギルドに手を回して土魔法使いを大量に雇い入れたらしい。そして、領地に彼らを連れ帰ったのだという。  「彼の領地は、広大で豊かな土地だが、唯一にして最大の悩みが水害だった。それをお前が解決した」  アンリが顔の前で手を組み俺をじっと見つめた。  「まったく。川の流れを変えるだと?あり得ない!こんなことを思い付くなんて!」  アンリは、最初の客以来まったく客のついてない俺を叱るどころか褒美だといって俺に金貨を200枚与えてくれた。  ちなみに金貨一枚で前世の金額にして1万円ぐらいだろうか。        

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