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第61話 冒険者と男娼
7ー1 招かれざる客
「クルーゼ?」
クルーゼは、驚いて口がきけなくなっている俺の腕を掴むと俺を部屋から連れ去ろうとした。が、俺は、はっとしてすぐにクルーゼの手を振り払った。
「何をする?」
「お前をここから連れ出してやるんじゃないか!」
クルーゼは、ぷぃっとそっぽを向く。
「ふん!俺のもと学友でパーティの一員だった者が男娼に身を堕としているのを知らん顔していたら世間体が悪いからな」
いや。
俺がここで男娼になってからもう数年が経っているし。今さら、なんでそんなことを?
俺が不信感を丸出しにしているのを見てクルーゼが怒ったように俺に訊ねた。
「ルシウス、お前、兄上と寝たんだそうだな?」
「うん」
俺は、正直に頷いた。
クルーゼの兄であるスミルナ王太子殿下は、一応俺の馴染みの内の1人だ。
俺が認めるとクルーゼの不機嫌さに拍車がかかる。
「おまっ・・なんで兄上なんかと・・男なら誰でもいいのか?」
「落ち着いてください、勇者様!」
その時、ルトが呼んできたらしくアンリが現れてクルーゼの肩に手をかけた。
「ああ?」
アンリより拳一つ分は、背が高いクルーゼに睨まれてもアンリは、引かなかった。アンリは、口許に貴族の微笑みを浮かべてクルーゼに告げた。
「お話ならあちらでお聞きいたしますから。どうか、おいでください」
「俺は、こいつと話してんだよ!」
クルーゼは、アンリの手を払うと俺に掴みかかろうとした。それをルトが庇うように前に出る。
「お止めください、勇者様。ここは、そういう武を競う場ではございません」
アンリがクルーゼの手首を掴んで静かに告げる。
「もし、このまま忠告を無視されるのであればいくら勇者様とはいえ出入り禁止にさせていただくことになりますが・・」
クルーゼは、ちっと舌打ちし俺を睨むとアンリと一緒に部屋を出ていった。
クルーゼの足音が去っていくのをきいてルトがその場に座り込む。どうやら勇者の覇気に当てられたようだ。俺は、ルトにそっと回復魔法をかけてやる。
アンリとの奴隷契約で俺は、魔法を使うことができない。しかし、この世界ではまったく魔法が使えなくては生きてはいけない。だから、必要最低限の生活魔法や、ちょっとした低級魔法なら使用できる。
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