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第62話 冒険者と男娼(2)
7ー2 冒険者
俺が床の上にルトを寝かせて膝枕してやるとルトは、低く呻いた。もうしばらくは動けそうにない。ルトは、体格もいいし力もあるけど、冒険者ではない。突然、あんな覇気を浴びせられたら堪ったものではない。それでも俺を庇おうとしてくれたのだ。
「ありがとうな、ルト」
俺は、ルトのまだ幼さを残している寝顔を見下ろして呟いた。
きっと怖かったに違いない。
武だけに頼って生きている冒険者というのは、特別だ。彼らは、普通に生きている人たちとは、考え方も行動力も違う。そして、何より暴力に対する抵抗がない。冒険者にとっての命の重さは、一般人の考えるものよりずっと軽い。
まあ、俺ももと冒険者なんだけどな。俺は、魔法学園を卒業後、クルーゼと一緒に活動してたけど一年ほどでパーティを追放されたから、冒険者というほどのもんでもないのかも。
数十分ほどしてルトは、意識を取り戻した。ルトは、少しぼんやりしていたが突然がばっと起き上がると真っ赤な顔をして俺を凝視していた。
「ルト?」
「俺・・アンリ様の様子を見てくる!」
ルトは、そういうと部屋から駆け出していった。
ほんとにせわしない奴だな。
俺がやれやれと立ち上がったところにルトが戻ってきた。
「ルシウス、アンリ様が呼んでる」
俺は、はぁっとため息をついた。
ほんとに、やれやれだな。
アンリの執務室へと顔を出すと、アンリは俺にソファもすすめることなく言い放った。
「あの勇者がお前を抱きたいといってる」
はい?
俺は、ハトマメ状態で。
もと魔法学園の同級生であり、共に戦ったこともあるパーティの仲間だったクルーゼが俺を抱きたがっている?
「そんな、まさか」
俺は、怪しんでいたがそれでも王太子殿下のこともあるし。もしかしたらクルーゼの奴、兄上に対する当て付けで俺の客になろうとしているのかも。
「ともかく『初回』だけは、してやってくれないか?ルシウス」
アンリに頼まれて俺は、低く唸った。
本心じゃ、すごく嫌だけど、仕事だし仕方ないのか?
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