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第63話 冒険者と男娼(3)

 7ー3 勇者の『初回』  というわけで。  俺の部屋には、今、『初回』のため勇者様がいる。  アンリに言われて防具と武器を全てルトに預けて白いシャツに黒いズボンという格好で俺と向き合ってお茶をすすっているクルーゼを見て俺は、複雑な気持ちだった。  思えば魔法学園時代からこいつにはいろいろ迷惑をかけられてきた。  試験のときに試験会場を間違えたりは、日常茶飯事だったし、魔法の授業では、魔法の触媒にうっかりと猛毒の含まれた素材を混ぜてみたり。  パーティを組んでからもダンジョンで道に迷ったり、パーティの全財産の入った財布をなくしたり、ほんとクルーゼのおっちょこちょい加減には、振り回されてきたのだった。  「クルーゼ」  俺は、クルーゼに微笑みかけた。  「何を企んでいる?」  「企むって・・」  クルーゼは、お茶の入ったカップをテーブルに置くと俺の方を見てにやっと笑った。  「これからお前をあんあん、言わせることとか、かな」  はい?  俺は、かぁっと頬に血が集まるのを感じた。  なんで俺がこいつにあんあん、言わされなきゃいけないんだよ!  ってか、こいつ、俺のこと抱けるとか思ってるのか?  俺は、じぃっとクルーゼを見つめて聞いた。  「お前・・本気で俺のことを抱きたいのか?クルーゼ」  「ああ?」  クルーゼがにっと唇を歪めると俺の方に手を伸ばしてきた。奴は、俺のひらをつぅっと指先で撫でた。  「誰に言ってる?すぐにお前の方からけつを振って抱いてくれって言うに決まってるだろ!」  はぁっ?  俺は、背筋がぞわぞわするのを感じていた。  いや!  ないない。  例え世界に客がこいつだけになったとしても俺は、決してこいつにだけは抱いてくれなんて言わないし!  だが、俺の気持ちは、こいつには伝わっていないようだ。なんでか知らないが、こいつは、俺が喜んで自分に抱かれたがるとか思っているらしい。  んなわけねぇし!  俺は、怒りを隠しつつクルーゼにお茶をすすめる。クルーゼの返事を待たずにルトがカップへとお茶を注ぐ。  「どうぞ」  お茶のポットを持って壁際に下がるルトをクルーゼがじろりと睨んだ。  「お前、兄上以外の男とも寝たのか?ルシウス」  「もちろん」  俺は、カップに手をつけることなくクルーゼの方を見ていた。クルーゼは、満面の笑顔で俺に聞いた。  「そうか・・じゃあ、そろそろ寝るか?」    

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