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真昼の月 16

俺の周りの机一帯にはいつの間にか魔法生物に関する本が散乱していた。 その多くは狼人間について記述されたものである。 俺はしばらく、狼人間について書かれた文献を何度も舐める様に読み返していた。 読み返すたびに、どうか違って欲しいと願いながら・・・。 しかし、その願いとは裏腹に読み返せば読み返すほど真実が頭をもたげてくる。 まさか、リーマスが狼人間だったなんて・・・。 それにしても、どうして今までずっと気付くことが出来なかったのだろうか。 俺は、純粋な魔法族の出だから、多少なりとも狼人間について見聞きはしていた。 幼少の頃、よく両親に聞かせてもらう物語には度々狼人間が悪者として登場していた。 そのどれもが、狼人間とは残忍かつ冷淡でヒトであれば肉親だろうと容赦なく襲い貪るという話ばかりだった。 そんな訳だから、狼人間に関して良いイメージを持った事は一度も無い。 しかし、リーマスはとても賢く友達思いで、動植物に対してもとても優しかった。 そんなリーマスだから、どうしても狼人間と結び付ける事が出来ない。 物語の中の狼人間と、友達のリーマスは共通点など微塵も見つけることができなかった。 それだけに、彼が狼人間である事がにわかには信じがたく、受け入れがたいものだった。 しかし、それを裏付けるために狼人間の特性を知れば知るほど、どうしてもリーマスが狼人間だという事実が色濃く鮮明になっていくのだ。 呆然とするほかなかった。 「・・・シリウス。リーマスのもう一つの姿を知ったようだね。」 ジェームズが隣の椅子に座りながら、話しかけてきた。 「正直、知りたくなかったよ・・・。」 俺は頭をかかえて、そのまま机に突っ伏した。 どうしても受け入れられない。 信じたくない。 リーマスが狼人間だったなんて、そんな事あるはずが無い。 「・・・ジェームズ。俺は悪い夢でも見ているんだろうか。」 ぽつりと呟いた。 どうかそうだと言ってくれ、と心の中で何度も叫んだ。 しばらくの沈黙の後、ジェームズが言葉を紡ぎ始める。 「あぁ。俺も最初は信じられなかった。あんなに素直で優しいリーマスだもんな・・・。でも、事実なんだよ。シリウス。」 「ウソだっ!!!!!!!!!!!」 ガンっと机が鳴った。 俺は思わず両手の拳を机に打ちつけていた。 「そんな訳あるもんか!!!リーマスは・・・、リーマスは俺達の友達だっ!!!!!!!」 どこへ矛を向ければ良いのか解らない憤りを、言葉で無理矢理吐き出そうとした。 そうだ。リーマスは俺達の友達なんだ。悪戯仕掛け人のメンバーの一人だ。同じグリフィンドール寮生だ。同じホグワーツ校で勉強しているんだ。 「リーマスは、俺達の友達だよ。間違いないよ。」 「・・・なんでっ!!!!!じゃぁ、なんでリーマスは狼人間なんだよっ!!!!!!!!」 再び机に拳を打ち付けると、そのまま額も押し付けた。 今まで、リーマスはどれほど辛かったろうか・・・。 俺達に隠し通すのに必死で、嘘をついて医務室に通って・・・。 仲良く成り過ぎてはいけないと思って、わざと嫌われるよう仕向けて・・・。 「なぁ・・・、俺達がリーマスにしてやれる事って何も無いのか?」 額を机から離し、ジェームズに尋ねた。 すがる思いだった。 ジェームズは真剣な眼差しで俺の瞳を捕らえると、こう言った。 「もちろんあるよ。」

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