13 / 14
13.
「かーさま、おそい!」
「まってた!」
風呂から上がり、共に部屋に戻ると、二人揃って小さな腕を目一杯上げてはぷんぷんと怒っていた。
先ほどの出来事で放心状態であったが、二人のその姿に癒され、可愛いと涙ぐみそうになるのを必死に堪え、夫に支えられながら二人の前で両膝を着くと「ごめんなさい」と謝罪した。
「まってたあーに、あたまなでて!」
小さな足をどんどんと地団駄を踏むように主張していた新に、「いいこいいこ」と撫でるが、「ちがう!」と今度は背伸びまでして怒った。
「おてて! おてて、とって!」
「おてて⋯⋯取る⋯⋯?」
「それ!」
人差し指で差したもの。それは常に嵌めている黒い手袋。
これは、葵人の意思で嵌めているわけではない。風呂上がった時、当たり前にフラット貞操具と共に新しいのを嵌められたのだ。
いつの日かお仕置きでもなんでもない時に嵌められたもので、そんな急なことにわけが分からず、ある日、訊けそうな時に何故、嵌めているのかと訊ねたことがあった。
すると、碧人は、
「僕以外に触らせたくないからだよ。それじゃあ理由にならない?」
人を惹きつけるような満面な笑みでそう答えた。
ともだちにシェアしよう!