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「かーさま、おそい!」 「まってた!」 風呂から上がり、共に部屋に戻ると、二人揃って小さな腕を目一杯上げてはぷんぷんと怒っていた。 先ほどの出来事で放心状態であったが、二人のその姿に癒され、可愛いと涙ぐみそうになるのを必死に堪え、夫に支えられながら二人の前で両膝を着くと「ごめんなさい」と謝罪した。 「まってたあーに、あたまなでて!」 小さな足をどんどんと地団駄を踏むように主張していた新に、「いいこいいこ」と撫でるが、「ちがう!」と今度は背伸びまでして怒った。 「おてて! おてて、とって!」 「おてて⋯⋯取る⋯⋯?」 「それ!」 人差し指で差したもの。それは常に嵌めている黒い手袋。 これは、葵人の意思で嵌めているわけではない。風呂上がった時、当たり前にフラット貞操具と共に新しいのを嵌められたのだ。 いつの日かお仕置きでもなんでもない時に嵌められたもので、そんな急なことにわけが分からず、ある日、訊けそうな時に何故、嵌めているのかと訊ねたことがあった。 すると、碧人は、 「僕以外に触らせたくないからだよ。それじゃあ理由にならない?」 人を惹きつけるような満面な笑みでそう答えた。

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