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22 幸せな結末

結論から言うと、俺達は連覇を果たした。それはショーが始まって以来初めての事らしく、もう出場資格のない俺と響くんは、今までずっと俺達に投票してくれた人に向けて挨拶をさせてもらえる事になった。 しっかりと体を綺麗にして服を着た俺と、響くんが手を繋いでステージの真ん中へ立つと、盛大な拍手が送られた。 「改めて、今まで僕達を応援して下さった皆様、ありがとうございました」 響くんが深々とお辞儀をしたので、俺も隣でペコリと頭を下げた。 「三連覇出来たのは皆さんと、いつも隣で可愛い姿を見せてくれた詩のおかげです。僕自身、このショーに参加するのはおそらくこれが最初で最後になると思います。本当に楽しい刺激的な時間をありがとうございました」 響くんがそう告げると、何故かお客さん達は号泣しながら拍手していた。そして俺にマイクが手渡された。 「あ…えっと、本当に、ありがとうございました。…俺、み、みんなと…っ会えて、最後、すっごい…たのし、かっ……」 何故かお客さんの涙につられて俺もボロボロ泣きながら挨拶すると、俺の名前を呼ぶ声が色んな所から聞こえてきた。 世間的にこんなものが開催されているのは危ない事でしかないだろうが、俺にとってはたった三回しか出場していなくても、とても非日常的で、刺激的な、そんな貴重な体験が出来たショーだった。 最初から最後まで節度を持ち、可愛がってくれたお客さんに出会う事が出来て本当に良かったと心から思った。 グスグズと泣きながらみんなへ手を振ると、みんなも振り返してくれた。 最後に二人でペコリと挨拶をすると、カーテンがゆっくりと閉じられて、本当にショーは幕を閉じた。 ◇ ◆ 「うおおお、やっべ!やばいな!どうする?他のみんなも結果楽しみにしてるけどっ、パーティーでもする!?すげぇぇ!!」 迎えにきてくれた先輩が誰よりも一番興奮していて、キラキラした表情で俺達の所へきてくれた。 「そうですね、また今度飲みに行きましょ。とりあえず今日は詩にかなり負担かけちゃったので早く休ませてあげたくて。詩の家の住所伝えるんでそこまでお願い出来ませんか?」 「何処でも行く!詩ちゃん本当お疲れ様。出てない俺の方が緊張したわ!やっば!とりあえず疲れたよね、帰ろうか」 かなり落ち着きのない先輩の車へ乗り込み、俺の家へと向かった。 疲れで俺が何も話せずに響くんの肩にもたれかかっていると、響くんと先輩の会話が始まった。 「本当お疲れ、響。そんな可愛い子、よく見つけてきたな」 「頑張りました。次からは俺、絶対出ないんで」 「パートナー変えたら出れるぞ?出ればいいじゃん」 「俺、この子と付き合ったんで。恋人持ちは出なくていいんですよね。最初言ってたじゃないですか」 「そうだな。……ん?え?待って、付き合ったの?お前が?え?」 「今日告白してオッケーもらいました。でもこの事は誰にも言わないで下さいね。みんな会わせろって言うだろうから」 「おーおー…そりゃダブルでおめでとう。じゃあショー出てくれる人探すのは手伝えよ~」 「はいはい。あの、俺も疲れてるんで静かに運転してもらえません?」 「てめ、先輩に迎えに来させといてよく言えるな。ぶっ飛ばすぞ」 「……」 「生意気なガキが」 本当にその後は二人の会話は終了し、自宅の前まで送ってもらった。 「先輩、ありがとうございました。また明後日仕事で」 「わざわざ遠くまですみません。ありがとうございました」 「いえいえ。詩ちゃん、しっかり体休めてね。それと響から聞いたけど、こいつの事貰ってくれてありがとう。俺に対してだけこんなだけど、まぁ素直ないい子だから多分」 「あ…はい」 「じゃ、先輩お疲れ様でした。早く詩と二人になりたいのでこれで失礼します」 俺と先輩が極力会話しないようにするためか、響くんは俺と先輩の前に出てくると、相変わらずの口調でそう言った。 それに対して不満そうにしながらも先輩は帰って行き、俺は響くんの手を繋いで自宅のマンションへ入って行った。 「すごく綺麗な所だね」 「うん。駅から遠いから少し安いんだ」 エレベーターに乗って部屋へ向かい、初めて響くんを迎え入れた。 「お邪魔します」 丁寧に靴を整えて中へ入る響くんの育ちの良さに感心しながら、今日のためにめちゃくちゃ掃除した部屋へ案内した。 とりあえず手洗いとうがいだけ済ませてもらった後、ソファに腰掛けた。 「本当お疲れ様、詩」 「…うん、ありがと。あのさ、俺達って今恋人なの?」 「俺はそのつもりだけど。先輩にも付き合ったって言っちゃった」 ショーの時はテンパってたけど、本当はもう一度告白してほしい、なんて思ってじっと見つめていると、ぎゅっと抱き締められた。 「…俺、慣れてないからあんまり恋人らしい事とか分かんないけど、詩がしたい事とかがあれば一緒にしていきたい。だからしたい事とがあれば、教えて欲しいし、何でも言葉にしてほしい。俺もなるべく詩に俺の事知って欲しいからちゃんと話していく。改めて言います。……大事にするので、俺の恋人になって下さい」 「…はい。俺も、大事にします。これからは恋人として宜しくお願いします」 最初は元彼を忘れる為に、勢いで参加した裏世界のショーだったが、こんなに素敵な恋人が出来る結末になるとは思わなかった。 響くんの背中に手を回して、強く力を込めると、同じ様に返してくれた。 俺はショーに出た過去の自分に感謝しながら、響くんと触れるだけのキスをした。 end.

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